1841
今日はダンジョン攻略2度目だが、どうするか……連続で行くのは大変だし、でも一気に行って終わらせておいた方が楽と言えば楽。どっちにしよう? 皆に聞いた方がいいか。休むなら休もう。
「そうだな……私はどっちでもいい。今日攻略して明日休んでもいいし、今日休んで明日攻略しても変わらぬだろう。なので、どっちでも構わん。子供達はどうなのだ?」
「「どっちでもいい」」
「皆もか……ま、朝食を食べてから決めるか。昨日と同じ蟹が出ても、今の盾なら十二分に守れるからな。アレが3匹出たら流石にマズいが」
「ああ、アレが3匹は流石にマズい。どう対処していいか分からん。鈍重なので逃げまわるくらいしか対処方法が無いぞ。2匹から同時や時間差で攻撃されたら、流石に死ぬであろうからな。呪いの魔物はどいつもこいつも強すぎる」
そんな話をしつつ部屋を片付けていき、終わったら食堂へと行く……のだが、宿の前に4人の騎士が居た。何だこいつら? そう思いつつ俺達が横を通ろうと思うと話し掛けてきた。
「お前達がダンジョンの中で異人に魔法を教えた奴等だな。ついてこい」
「断る。訳の分からん連中についていく阿呆なぞ、居る訳がないだろうが。寝言は寝てから言え」
頭がおかしいのかこいつら。そう思い横を歩いて通ろうとすると抜剣してきた。つまりこいつらは死ぬ覚悟が出来ているという事だな? 俺は剣を抜いた4人の騎士にピンポイントで【幻死】を喰らわせる。途端に硬直する騎士。
そのままガタガタ震えつつ失禁し始めたので更に強め、意識を失って倒れたので更に強めて無理矢理起こす。それを何度か繰り返し、こいつらにトラウマを刻み込んでやった。顔面と下半身から漏れる物を全て漏らして気絶した4人の騎士を捨て置き、俺達は食堂に行く。
中銅貨6枚を支払い朝食を頼み、席に座って待っていると、走ってくる連中の気配が複数あった。といっても6人ほどだが。
そいつらは俺達が泊まっている宿の前に着くと、気絶している騎士4人を起こしているようだった。【空間把握】で確認すると同じ騎士のようだ。何なんだあいつら? 何処の誰か知らんが面倒臭い連中だ。今日の夜に更に殺しておいた方がいいか?。
狩人である以上は兵士や騎士が守るという事は無いが、代わりに俺達は自由でもある。喧嘩を売られた以上、買うのは当たり前だしな。狩人は国の庇護が無いので弱いが、同時に自由民としての強さも持つ。その辺りは傭兵と変わらない。
そんな事を考えつつ食事をしていると、他の騎士も来てウロウロとし始めた。何となく俺達を探している気がするんだが……いちいち面倒な奴等だ。皆にも話して聞かせると、ウンザリしたような顔をした。俺も同じ気持ちだよ。
朝食後、食堂を出てダンジョンへ向かおうとするも、その途中で騎士に囲まれた。こいつら……纏めて殺してやろうか。同じ制服を着ているので、同じ組織に所属する騎士だという事はすぐに分かった。
「貴様ら、我が騎士団に楯突き逃げおおせる事が出来ると思っているのか! 貴様らをここで捕縛する、覚悟せよ!!」
「宿の前で何も言わずついてこいと言い、それを拒否したら剣を抜く蛮族が何だって? お前らも仲間なら、騎士じゃなくて蛮族だろうが。蛮族が騎士を名乗るなよな」
「何だと、貴様!!!」
俺は再び【幻死】を使い、騎士にだけピンポイントで威圧する。周りに居るのは20人ほどだが、あっと言う間に動けなくなった。4人ほど既に倒れたのでさっきの奴等だったんだろう。俺は面倒になったので一気に強度を上げ、3割ほどにすると気絶した。
そのまま放っておきダンジョンに行こうとすると、聖都前の門番もこちらに槍を向けてきたので【幻死】で全員気絶させてやった。そもそも俺に勝つ事自体が不可能なんだが、頭の悪い連中だな。皆も呆れているし、面倒臭がっている。俺も馬鹿の相手なんて面倒臭いんだよ?。
そう思いながらダンジョンに行こうとすると、後ろから料理人達がやって来た。おいおい、今度は何だよ。例えお前達でも力づくなら殺すぞ?。
「ハァ、ハァ、ハァ。すみません、私達があの方々に話したばっかりに……。実はですね、私達を庇護してくれている王太子様とお姫様が、皆さんに一度御会いしたいと仰っていまして……」
「俺達には何の用もないな。ついでに、こんな蛮族どもを嗾けてくるゴミに会う気などない。こいつら宿の前でいきなり「ついてこい」と言い、断ると即座に剣を抜いてきたぞ? 俺からすれば、この国の王族なんぞ蛮族の親玉でしかない。そんな連中の所になど行く訳がないだろ」
俺は料理人にそう言い、背を向けて聖都を出る。ダンジョン街へと歩いて行き、中に入ると迷宮紋からダンジョンへ。昨日と同じく攻略を開始する。20層を超えて山の地形に着くと昼食にするのだが、昨日【浄化】して倒した蟹の身を入れ、炊き込みご飯を蓮に作ってもらう。
イデアには味噌汁を、俺は呪いコボルトの肉で野菜炒めを作る。蟹の身の炊き込みご飯は美味しいだろうから、おかずはシンプルな物にしたい。なので卵を加える以外は、塩と胡椒のみとした。正しくは胡椒モドキだが。
………よし、完成だ。それじゃあ、盛り付けて食べようか。いただきます。
「ニャー!!!」 「………」
「美味しーー!! これすっごく美味しい! 蟹がね、ふわって香るのに、食べたらガツンなんだよ! すごい! 美味しい!」
「久しぶりに語彙力が低下してるな。とはいえ、それが分かるほどに美味いなー。あの蟹はこんなに美味かったのか。……でも強さがなぁ」
「ですね。あれがもう1匹出てきたら、本当に耐えられません。凄く美味しいですけど、強さを考えると2匹までにしてほしいです」
「うむ、そうだな。しかし、美味い。アルド達と共に居ると美味い物ばかりが食べられるが、いつもの食事が効いているのか忘れる事は無いな。まあ、毎回作るのも大変であろうから、頻度が少ないのは分かるのだが……」
「まあな。それでも聖国の料理は香辛料を使って、なるべく呪いの不味さが出ないようにしているだけマシだ。まあ、食べる前に俺が【浄化】しているから、呪いが体に入る事は無いんだけどな」
「その割には呪いの不味さは何故か残っていると、不思議なものだな、呪いというのは……。それはともかく、朝の派手なのはどうする気だ? 一応、落としどころは考えておるのだろう?」
「まあ、奴等の謝罪が大前提だがな。そもそも騎士かどうかも名乗らず、誰からの使いかも言わず、唯ついてこいだぞ? 意味が分からんし、これで使いの役割が果たせたと思っているなら頭がおかしい」
「それはな。しかし相手が更に強硬な手段に出てきたらどうする?」
「その時は皆殺しだ。俺達が頭を下げる必要など何処にもない。戦争だというなら、戦争の何たるかを教えてやるだけだ。目の前で仲間が無意味に死んでいく様を見せてやる」
「いつもの事だね」
「ああ、いつもの事だ」
ウェルは呆れるような納得するような顔をしている。俺からすれば、そこまでしないから舐められるんだと言えば終わる話でしかない。前にも言ったが、ドラゴンに頭を垂れろと言う王族は居ない。それはドラゴンが怖いからだ。
人間の姿や形をしているから舐めているのだろうが、ドラゴン以上の者が居ると教えてやればいい。その結果、聖都が壊滅しても俺は知らないし興味も無い。どのみち腐った玉座の国だし………うん? もしかして玉座を浄化させる為に俺達を呼んでいた?。
………まあ、どうでもいいな。




