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バカを追い返して綺麗にし部屋に戻ったものの、面倒な奴等が早速絡んできて鬱陶しい限りだ。向こうから突撃してくると避けるのが難しい。ドラゴンを殺した話を聞いたのか知らんが、この後も絡んできそうだな。
「それは間違い無いと思う、ああいうのは絶対にしつこいよ。諦めるって事は無いと思うけど、どうするの?」
「いつも通りだな。こっちに手を出してきたら容赦なく殲滅する。手を出して来ないならスルーだ。いちいち関わる気もない。だがなー……」
「関わってこないっていう可能性は、物凄く低いですよねー。間違いなく関わってきますよ、ああいう人が当たり前なら。相変わらずですけど、ドラゴンが倒せるって事の意味を分かってませんよね?」
「まあ、そうであろうな。相変わらずであるが、人間の姿だから勘違いしておるような気がする。もしくは相手がドラゴンではないから、舌先三寸で騙せるとでも思うておるのであろうよ。私もそうだが、<竜眼>である程度は見えるからな」
「嘘を吐いてたりすると、それも分かるんだよね? それは凄いと思うんだけど、それ以上なのがアルドなのにね? 【白痴】を使われたら、本当の事しか喋れないよ」
「そう、我らドラゴンより遥かに怖ろしい。アルドが本気になれば、そもそも嘘を吐けなくなる。嘘かどうかを見極める以前の話であり、見極める必要すらないのだ」
まあ、その為の【白痴】だしな。そんな話を聞きつつ俺が何をしているのかと言うと、白い蟹の甲羅を【圧縮】した物を土台にして、太刀のような部分を【分離】して被覆。短剣を作っている。
全員分の白い短剣を作り、少し試してみたが、やはり今までの白い素材を超える物だった。流石にシャレにならないな、コレ。十手を回収してフヨウに溶かして食べてもらい、使わない子供達は取り止めて自分の十手だけ作る。
残りの装備に関しても、刃の部分の素材を【分離】して、白い蟹の素材に変えていく。太刀みたいな腕部分が怖ろしい切れ味を誇ってるんで、コレを使わない手はない。俺の矛も超魔鉄製から白い蟹製に変えておこう。
ウェルのメイスとカイトシールドは巨大な鋏の方で被覆しなおしておいた。そちらも甲羅とはちょっと違う素材っぽく、強度がとんでもない。やはり色んな意味で、あの呪いの蟹は別格だったらしいな。嫌な予感の通りだったか。
「そう思うと、よく私は耐えられたな。何かを間違えていれば、切り裂かれてあっさりと死んでいただろう。盾が無かったら、身体強化で耐えられなかったら……そう考えるとギリギリだったのがよく分かる」
「それでも生き残った者が勝者で、死んだ者が敗者だ。何があろうとそこだけは変わらないさ。それにしても、本当にこの素材はとんでもないな。今までの武器とは一線を画す物が出来たが、いろんな意味で表に出せないぞ」
「それは……目を着けられる恐れがあるが、と思ったが今さらか。何処に行っても目を着けられておる気はするし、今さらなら良い物を持っておいた方がいい。どのみち白い素材であれば、相手の鎧や兜ごと両断できる」
「聖教とかいうアホどもが絡んできそうだからなぁ。ああいう奴等って私設騎士団みたいなものを持ってる可能性もある。寄付を含めて金だけはありそうだし、守るという名目で暴力を持つ可能性は高い」
「碌なものではないな……おっと、子供達が舟を漕ぎ始めたぞ?」
ウェルの言うとおりウトウトしている子供達を布団に寝かせ、2匹を寝かせて【昏睡】を使って深く眠らせる。しな垂れかかってくるウェルをお姫様抱っこで持ち上げ、ベッドに寝かせて【極幸】と【至天】で幸せに沈める。
久しぶりに技を使ったけど、たまには良いだろう。部屋と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。
………どうやら抱えているのは私設騎士団じゃなくて暗殺者だったようだな。宿に侵入してきた奴等を野放しにし、俺は寝ているフリを続行する。外に見張りを置いていないのが気に掛かるが、三流の奴等だろうか?。
4人が鍵を開けようとしている瞬間を狙って【衝気】を使い気絶させると、【念動】を使って浮かせ、音をさせずに部屋の中へ入れる。手枷と足枷をし、【止音】と【白痴】と【人形】を使って聞き出していく。
予想通りに暗殺者だったが、こいつら国に所属している暗殺者だった。聖教の創始者は王族、つまり国とはズブズブの関係なんだと。どうりで聖教の連中が一般人を見下す筈だ。自分達は権力者に近いと思って調子に乗っているんだろう。
4人全員に聞いたら首を落として殺害。次に隠密の4つの技を使って聖教の建物に行き、中から喧嘩を売ってきた奴を探す。既に聞き出しているので……居た。割と豪華な建物に居るようだが、お前の命はここで終わりだ。
寝ているバカに【白痴】と【人形】を使って起こし、逃げ帰った後で何をしていたかを聞く。すると聖教のトップに報告をしたらしいが、その後の事は知らないそうだ。まあ、だからと言って首を落とす事に変わりはないが。
その後、トップの部屋に行き話を聞いて殺し、今回の事に関わった全ての者の首を落とす。更に聖教のトップが関わりを持つ、国家の裏を纏めている侯爵の屋敷に行く。その侯爵の寝所に行って話を聞き殺害、アイテムバッグに回収する。
暗殺はそれぞれの暗殺者に指示を出す形で、侯爵以外は全容を知らなかった。なので殺すのはこれで終わりだ。かといって国家の裏戦力を使ったのは間違い無い。この国にも責任をとってもらわないとな。
俺は王城に侵入し玉座の間を見つけると、玉座に続くカーペットに首を並べていき、玉座に大量の死体を置く。全て置いたら離れ、【念動】で動かしながら死体を【破砕】し、玉座を死肉塗れにしたら準備完了。
玉座の間を出て、首以外の死体を【発酵】を使って腐敗させ、玉座を腐肉で汚染してやった。これで反撃は完了、さっさと王城を出て帰ろう。俺は王城を出た段階で自分を【浄化】し、宿の部屋に戻る前にも入念に【浄化】する。
部屋に戻ったら、さっさとベッドに横になり目を瞑った。これでやっと寝られる。それじゃあ、おやすみなさい。
<呪いの星76日目>
おはようございます。反撃は出来る限り早く行う必要があります、なので昨夜のうちに行いましたが疲れました。というか寝たので疲れは残ってないが、若干眠たい。これは仕方がないので諦めるしかないが、多少は昨日の事で掃除出来たろう。
そもそも殺そうと手を出してきた方が悪いのだ。手を出して来なければ玉座が腐肉塗れになどなっていない。朝の日課を終わらせ、紅茶を淹れた後はボーッとしている。今日はちょっと眠たいから、ちょうど良い感じだなぁ。
良い気分でいたものの、何故か今日は皆が早く起きてしまい、あっと言う間に賑やかになった。結局こうなるんだよなー、と思いながら皆の相手をしているとウェルが気付いたようだ。
「アルド、少し元気が無いようだがどうかしたのか? 昨夜はそうではなかった筈だが……」
「また夜に何か来たんじゃないの? 盗賊とか暗殺者とか?」
「蓮の予想通りだ。昨夜、暗殺者が襲ってきた。とはいえ返り討ちにして聞き出したら、予想通りに聖教の連中でな。そいつらどうも国の裏の戦力と繋がりがあった。なんでそっちも潰したうえ、国が関わってるからな、玉座を腐った死体で汚してやった」
「またやったのか? 死体を腐らせるという事を。しかも玉座とは……、この国の面子は丸潰れだな。王のみが座れる玉座が腐った死体で汚れており、更には綺麗にさえ出来んだろう。という事は曲がりなりにも歴史上一度は、この国の玉座は汚されたという事になる」
「でも聖教というのと国は関わりがあったんですよね? 暗殺者を嗾けてくるぐらいなんですから。聖教を作った王族は素晴らしかったんでしょうが、今の聖教を腐らせているのは国でもあるんでしょうし、腐っているのを表す意味では丁度良いのでは?」
玉座って言ったところで所詮は椅子だしな。変えれば済むし、然したるダメージにはならないだろう。それでも汚されたのは事実だが。




