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 <呪いの星75日目>



 おはようございます。今日はダンジョン攻略の日です。昨日の料理人たちはアレで大丈夫だろう。後は教えた事を練習し続ければいいだけだし、そう教えておいたからな。俺達は朝早くからダンジョンだし、鬱陶しいのが関わってくる事はあるまい。


 朝の日課を終え、紅茶を淹れてダラダラ過ごしていると、今日はフヨウが一番早かった。挨拶しつつ、神水を入れてやると一気に吸いあげて終了。首に登ってきて、いつもの定位置へ。力を抜いたらしく重みが増す。


 そのままフヨウと過ごしているとイデアが起きて部屋を出た。その音でダリアが起きたのか、近付いてきたので神水を出す。ゆっくりと飲んでいるが、どうも眠たいみたいだ。あっちにフラフラ、こっちにフラフラと頭が揺れている。


 水皿に頭が落ちそうになったので受け止め、仕方なく寝かせてやる。イデアが帰ってくるも、何故か床で寝ているダリアを見て首を傾げ、納得したのか紅茶を入れ始めた。まあ、何があったかは分かるだろうなぁ。


 その後、蓮とウェルも起きて賑やかになるも、ダリアは眠ったままだった。部屋を片付けた後、ダリアを抱えて食堂へ。中銅貨6枚を支払って朝食を待っていると、騒がしさでダリアが起きたらしい。周囲を見て首をかしげている。


 朝起きた後、2度寝した事を話してやると納得したようだ。朝食が運ばれてきたので食べていると、何故か周りから注目を浴びている俺達。……いったい何だ? よく分からんが、さっさと食べて出るか。


 食事を終えた俺達は店を出、ダンジョン街へと移動する。迷宮紋からダンジョンに進入。1層目で水を汲み、神水に変えるべく人の居ない方へと行くも、ついてくる奴が多数いる。仕方なく諦めて次の層へ。


 後ろからついてくる奴等がいるので已む無く身体強化で走り、一気に先へと進んで行く。10層に到達すると洞窟であり、そこまではついて来なかった。都合が良かったのでこのまま進むが、洞窟の地形が長いと厳しいな。


 そう思いつつも、呪いの薄い所を目指して進んで行く。ゴールが分かっているだけに他の狩人連中に比べれば楽だ。途中でちょっとウロウロしたが突破、20層に到着した。


 今後は山だが、それなりに大きな川が流れている地形らしい。せっかくなので水を汲んでいき、神水を満タンにしておく。魔物は蛇系が多いようで、イエローボアが見える。その他は毒々しい色の魔物が多い。そういう層なのだろう。


 川の近くで昼食にし、久しぶりにヘビーブルのステーキにした。皆も喜びながら、それぞれの準備をしてくれる。まだ早いので焼かないが、周りの蛇を処理しておく。イエローボアは収納するが、他のは要らない。


 ステーキを焼くタイミングが来たので焼き始め、出来上がったら皿に盛る。相変わらずだが、食材の中から火を通せる為、【加熱】の魔法は便利だ。抵抗されると効果は出ないので、生きている者には使えない魔法だが。


 久しぶりのヘビーブルは美味しかったのか、全員が満足気な表情をしている。俺は後片付けをし、終わったら焼き場などを壊して出発する。皆は少し緊張感が抜けているが、少しだけなので大丈夫だろう。


 再び走っていき30層。まさかの氷原だった。慌ててアイテムバッグから熊のきぐるみを取り出して着る。最初、いきなりの寒さにウェルは軽いパニックを起こしていたが、俺達が冷静に熊のきぐるみを着ているので落ち着いたらしい。



 「それはな。いきなりこんな寒い地形になるなど思ってもみなかった。そもそもこんな一面氷だらけの場所など私も知らん。広い星の何処かにはあるのかもしれんが、私も辺鄙な場所へはいちいち行かぬからな……」


 「きぐるみを作っておいて正解だったね。思ってた通り寒い地形があったけど、相変わらずの寒さだよ。さっさと通り過ぎよう」



 蓮の一言に全員頷き、さっさとこの地形を攻略する事にした。既に30層だ、後4層で終わりだから一気に進む。そう思って走って行き、35層に到達すると、そこは常夏の光景だった。


 白い砂浜に青い海。その海の手前には、全身が真っ黒で呪いを噴出している蟹が2匹。マズい、2匹いるなんて聞いてないぞ。



 「ウェル、盾を使って防げ! 俺が1匹をなるべく早く【浄化】する!! それまで耐えててくれ。それと子供達と2匹は魔法で牽制だ!!」


 「「「了解!!」」」


 「ニャ!!」 「………」



 急に難易度を上げないでくれよ全く。そんな愚痴を零してしまうくらいに厄介なんだよ。出来る限り早く【浄化】するんだが、焦るな。焦ったって余計な時間が掛かるだけだ。



 「くっ!! 何て重い攻撃だ。盾を作ってもらっておらねば、さっきの一撃で負けているぞ! 私が身体強化をして押されるとは!!」


 「【風砲】!!」 「【土砲】!!」


 「ニャー!!」 「………」



 向こうも向こうで一生懸命戦ってくれてる。今の内にコイツを倒して……よーし、逝った。次は向こうだ!!。



 「おっ!! アルド、ようやくか! 助かった!! こいつ、怖ろしい程の力の強さをしておるのだ。まさか身体強化をしている私が押されるとは思わなんだぞ。魔力で強化していなければ、盾を切り裂かれていたかもしれん」


 「何ていうか、凄い速さの攻撃だったよねー。あの鋏を振り回したり、もう片方で切ろうとしてきたり……この魔物は危険だよ」


 「そうだね。思っている以上に危険な魔物だよ。ただ食べたら美味しそうでもあるけど……」



 ようやく【浄化】し終わったので熊の着ぐるみを脱ぐ。やれやれ、常夏の気温でコレは厳しい。敵を倒し終わるまでは脱ぐ事もできなかったしな。皆も暑かったようで素早く脱いでいる。


 真っ白になった蟹をそのまま収納するのは無理なので、足の1本1本を外して冷凍してから仕舞う。鋏や太刀のようになっている腕なども凍らせて収納し、最後の胴体は中身を捨てる。流石にコレだけ大きな蟹の内臓は要らない。


 勿体ない気もするが甲羅だけゲットし、それも形を変えて四角にしてから収納した。これで全てが入ったので脱出紋から外に出ると、既に夕方となっており、俺達は足早に聖都へと戻る。周りから多少の注目はされたが、朝ほどではなかった。


 聖都へと戻った俺達は食堂へと直行。中銅貨6枚を支払って夕食を注文し、少し休む。まさかの2匹同時は焦ったなー。高さ3メートルの蟹が2匹だし、鋏と太刀みたいな腕が重かったのか鈍重だったのが救いだ。あれで素早かったら厳しかった。


 運ばれてきた食事を食べ、宿に戻ってようやく本当の意味で一息吐く。後ろから尾行していた連中は居るが、いったい何の用だ? 襲ってくるなら皆殺しにするんだが……。そんな事を考えていると、店の主人がドアをノックした。


 何だと思って聞くと、「聖教の方が客を出せと言ってまして……」との事だ。どうやら獣国のクソ貴族と同じ事がしたいらしい。仕方ないので行くか。



 「まったく、やっと来たか!! このワシを待たせるとは何事だ!! 礼儀も知らん奴め!!」


 「いきなり押しかけて客を出せと言うほど礼儀知らずじゃないんだがな? それで、礼儀も知らないマヌケが何の用だ?」


 「キサマ……! まあいい、さっさと表の馬車に乗れ! キサマは我が聖教で扱き使ってやる、感謝するのだな!!」


 「寝言は寝てから言え、礼儀知らずのマヌケ。俺は狩人なうえ、この国の者ではない。ましてや聖教などというものなど信用してもいないし、礼儀知らずの言う事などいちいち聞かん。そんなマヌケに見えるか?」


 「ほう、ならば我が聖教に喧嘩を売るという事か? その覚悟があると見做すぞ」


 「ほうほう、一つ教えてやる。獣国のクソ貴族の使いも、同じセリフを俺に言ったぞ? つまりお前等はクソ貴族の使いと同じ程度だという事だ。良かったな、クソの使いっぱしりに認定してやる」


 「おのれ……!!」



 頭の血管が切れそうなくらい真っ赤になってるなー。なので俺は冷や水を浴びせてやる。仲間達は入れず、それ以外の者達へ魔力と闘気と念力の威圧を撒き散らす。途端に萎縮し、ガタガタ震えながら失禁するゴミども。



 「もう一つ教えておいてやる。そのクソ貴族の使いはな? その日の夜に行方不明になったんだよ。いったい何処に行ったんだろうなあ?」



 その瞬間、聖教の者だとかホザいていた奴等は一斉に逃げていった。汚い奴等が汚していったが、流石に俺の所為ではない。とはいえ、このままもアレなので【浄化】しておいた。ここの宿の主人はすまなそうにしていたからな。


 獣国の宿とは違うんで、流石に綺麗にしておかなきゃいけない。俺まで礼儀知らずの仲間みたいに見られてしまう。


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