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 「あの……私を見ているようですが、何かありましたか?」


 「いや、名前を知らないんで料理人と言わせてもらうが、料理人が一番魔力が多いんだよ。他の若者の倍以上ある。それが妙だな? と思ってな」


 「ふむ。……ああ、確かに。魔力を感じれば多いのは分かるが、変だな? 他の魔法陣を知っている者であるならばまだしも、何故料理人でしかない者が一番魔力が多いのだ?」


 「えっ? おじさんが一番魔力が多いの? 本当だとしたら、確かに変だね? 他の皆は魔法が使えるのに魔力が少なくて、おじさんは魔力が多いけど魔法は知らない。……魔法を知らないから多いのかな?」


 「フヨウが終わったみたい。こっちに戻ってくるよ? ドラゴンを食べきったみたいだね」


 「まあ、食べきると言うより、溶かして吸収して、要らない栄養を外に撒いてるだけだしね。アルドさんが燃やして処理するよりは、栄養的には良いんだけど……大変だったのかな?」


 「流石に大変だったみたいだ。お疲れ様、フヨウ。いつも通りの場所でゆっくりしててくれ」


 「………」



 気付いたらドラゴンが跡形もなく溶かされていて、死体も無く血すら残っていないからだろう、料理人のおっさんと若者達が恐怖している。とはいえ、なあ……突っ掛かってきたアホなドラゴンが死んだだけでしかない。



 「本当にな。あの愚かな雄が関わってこなければ死んでおらんのだ。つまり自業自得でしかない。誰の所為でもなく、死んだ愚か者の所為だ。自身が強者だなどと錯覚しておったのであろうが、そういう間抜けは殺されても仕方ない」


 「殺しに来た以上は殺される覚悟があると見做される。死にたくなければ他人を殺そうとしなければいい。強姦をした事があるかどうかは知らんが、少なくとも気に入らなければあっさり手を出す奴であった事は事実だ。ブレスを吐く事もな」


 「<ドラゴンとて獣と同じ事しかせぬならば殺せ>。竜の神様もそう仰ってますしね。人の話も聞かずに戦えと言ったり、断ったら更に突っ掛かってきたり、相手の事を無視して自分のものになれと言ったり。殺されたあのドラゴンも他のドラゴンと変わりません」


 「そうだよね。そもそも神様が殺していいって言うほどなんだから、殺されても仕方ないよ。ねえ、ダリア?」


 「ニャー」


 「この子、ダリアって言うの? すごく可愛いけど、猫なのに尻尾が2本ある。……猫じゃない?」


 「そういう種類なだけなんじゃない? 絶対に尻尾が1本って決まってる訳じゃないでしょ。私達の元いた所では1本でも、別の星には尻尾が2本の猫だっているわよ。たぶん」


 「ネコマタは尻尾が2本あるとか聞くっすけど、別にネコマタって訳じゃないでしょうしね。しかし、奇妙なぐらい美猫っすねえ」


 「そうだね。瑞穂でも珍しいぐらいの猫だと思うよ。真っ白っていうか……毛先が透明? ……確か寒い所の熊って毛が透明なんだっけ? 白く見えてるだけで」


 「「「へー……」」」


 「ニャー……」


 「おっと、嫌がってるみたいだから、あまり触り過ぎない方がいいよ。それよりも浄化魔法の事と水の事を聞かないと。とはいえ片付けてる最中だけど」


 「あの鞄、何かいっぱい入ってないっすか? あれ、絶対に変ですよ。さっきも妙に大きい刀とか入ってましたけど、あの長さの物があの鞄には入らないでしょ。普通は」


 「よし、壊して終わりっと。それじゃあ始めるか。……何を? って顔をしてるが魔力の感覚と循環だよ。皆は好きにしててくれ、ダリアとフヨウも獲物を狩るなら好きにしていいよ」



 俺がそう言ったものの、誰も魔物を狩ったりはしない。まあ、ウサギとカエルしかいないもんな。やる気にはならないか。俺は若者3人と料理人に魔力を感じる事から始めさせ、次に循環を教える。闘気を教えないのはワザとだ。


 こいつらお人好しっぽいので、問われたら簡単に喋るだろう。腹芸できないタイプに見える。だから闘気も教えなきゃ、身体強化も教えない。浄化魔法さえ使えれば文句はあるまい。練習させれば直ぐにでも使えるだろう。下手なりには使えてる訳だし。


 そのまま練習させ、循環が出来るようになったら実際に使わせる。まずは【小浄】と【清潔】から。浄化魔法を使える女の子は両方の魔法陣を知っていた。しかし、【小浄】の方は何が起きているか分からなかったようだ。


 【小浄】は浄化力が最低の魔法だ。挙句、この星には邪気が殆ど無い。つまり効果を確認できないし、そもそも邪気というものを理解していないから尚更分からなかったんだろう。それなら無意味な魔法と思っても仕方ないな。


 しっかし、3つしか魔法陣を知らないっていうのも変だな? 少なくとも【聖潔】が浮いてる。まるで病気になるとこま……料理の為か? もしかして他の8人は料理の為に居る……? いやいや、流石に突飛に過ぎるだろ。


 とはいえ料理で病人を出さない為だとすれば、【聖潔】を知っている理由は理解できる。他の2人はどんな魔法なんだ? そう思って聞いたら【火弾】と【加熱】に【水弾】と【冷却】だった。



 「お前さん達が持つ魔法は、俺達が料理に使っている魔法を含んでるな? 【聖潔】の魔法が病人を出さない為なら、文句なく料理人の為の8人な気がするぞ?」


 「おじさんが中心って事ですか? さっすがおじさん! これからも頑張ってね!!」


 「いや、まあ……年長者だから頑張るけども、大変だなぁ……五月蝿い人達が居るし」


 「ああ、貴族の人達っすね。屋敷に来て料理しろとか五月蝿いっすもんねえ、王子様とお姫様が牽制してくれてるっすけど、それも自分達が食べたいからですしねー」


 「王侯貴族なんて、そんなものだと言ったろう? あいつらは自分達の利益しか考えていない。良いか悪いかは別にして、そういう立場でもある。人助けをする際にも損得を絡める事を要求される立場、それが王侯貴族だ。まあ、大半は自分の事しか考えてないがな」


 「それでも店を持たせてもらった事には感謝してます。それが自分達の利益しか考えてなくても。世の中なんてそういうものですしね」


 「奴等の場合は度を超えている事が多い。利益が無ければ続かない、ではなく、己が儲かればそれでいいだからな。だからこそ上手くいっているものにまで口を挟んできて、その結果駄目にしてしまう事も多い。もっと利益を出せ、もっと利益を出せ……とな」


 「そこ間違ってるよ。こうするの、こう!」


 「……? ごめん、よく分からない。どういう事?」


 「うーん……アルドさん、名前呼んでいいですか? 何というか、説明し辛いです」


 「まあ、いいだろう。手出ししてくる阿呆がいれば、ブッ殺せばいいだけだ。今までと何も変わらないし、それが一番手っ取り早い。それと、こうするんだ。分かったか? 感覚的な事は伝え辛いからな、しょうがない」


 「ああ、成る程。こういう事ね。魔法は使えてたけど、こんなに大変なものだとは知らなかった。凄く難しいんだけど、こういう基本って誰も教えてくれなかったわよね?」


 「王宮に居る連中なら習ってるかもしれないけど、多分そんな事は無いと思う。あいつらから聞かないし、正直ちょっと見下してくるから会う気にもならねーし」


 「あの人達って本当に態度悪いよね。何か当たり前のように見下してきたりとかするし……。特におじさんに対する態度が納得できない! 皆のご飯作ってるのに、料理しかできないとか!」


 「まあまあ、事実だからしょうがないよ。怒らない、怒らない。怒ったところで表情が悪くなるだけだよ」



 すぐに顔を戻したな。表情が悪いのが嫌なのか、それとも女だからなのか。どちらかと言うと、女として表情を戻した感じだなぁ。


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