1835
「……キサマ、私と勝負しろ!! 勝った「断る」方が……」
「先ほど彼女が言っただろう、既に口上を述べていると。お前の出る幕など何処にも無い。お前は後から湧いて出てきて喚き散らしているだけだ。そもそも他人の昼食に乱入して喚くという無礼な事をしておいて、何を言ってるんだ?」
「お前の意見など聞いていない! 私が戦えと言っている!!」
「相変わらず強姦犯罪者の空飛ぶトカゲは、人の話を聞かないな。コイツも強姦犯罪者なんだろうが、鬱陶しい限りだ」
「何だと、キサマ!!」
「強姦犯罪者ってどういう事? 何であの人勝手にそんな事を決め付けてるの?」
「さあ? でも向こうの女性も何も言ってないんだよね。何かあったのかな?」
「何だ、そなたら知らなかったのか? 同族の雄は強姦犯罪者だらけだぞ。こいつら雌を犯して種付けを当たり前のようにやるからな。そもそも私はハグレ、群れから出された者だ。その理由は過去に数度、雄に犯された事があってな。その雄をブチ殺したので群れを追い出されたのだよ」
「それだけじゃない。同じ群れの別の女性は、群れの大半の雄から一ヶ月にも渡って犯されていた。その怨み憎しみで狂い、呪いを吸収して呪われてしまったという事もあったんだぞ。とあるドラゴンいわく、弱い雌は犯されても仕方がないらしい。信じられるか? それがドラゴンだ」
「「「「………」」」」
「何を言っている!? 他の者はともかく、私はそのような事などしていない!!」
「仮にそうだったとして、それを誰が証明するんだ? お前が過去に強姦を行った事がないと誰が証明できる? 少なくとも「弱い雌など犯されて当たり前」と決めているのは、お前らドラゴンじゃないか」
「ぬ、ぐぐぐぐぐ……」
「ねえ。それよりもお昼ごはん食べてるんだから、どこか行ってよ。邪魔で食べ辛い」
「本当にね。向こうのおじさんぐらいだよ、まともな人。後は他人の昼食の邪魔をしている自覚すら無いんだから、頭がどうかしてるよ。最低限のマナーも無いなんてさ」
「「「………」」」
「ほら、みんな。流石にあの子供達の言う通りだ。他人の昼食の邪魔をしてるのは間違い無いんだから離れるよ。自分がやられて嫌な事は他人にするべきじゃない」
「まあ、それもそうっすね。ディーさん行きましょう。一目惚れか何か知らないっすけど、向こうの女性は心に決めた人が居るみたいです。流石に分が悪いっすよ」
「五月蝿い! これはドラゴンの話であって、お前らなどには何も関わりはない事だ。私の邪魔をするな!!」
「ディーさん……」
「お前さんら何か勘違いしていたのかもしれんが、ドラゴンの雄なんてこんなもんだぞ? ある場所では小さい村にブレスを吐いて住民を虐殺、ある場所ではブレスを吐いて逃げ惑う人間種を見て遊んでいる。そして先ほども言った通り、同族の雌を当たり前のように犯す。それがドラゴンという生き物だ」
「「「「虐殺………」」」」
「ドラゴンに故郷を滅ぼされた少年達に怨まれて襲われた事もあるぞ。それも同族の醜い雄の所為だったな。お前達も覚えておくがいい、ドラゴンの雄とは碌なものではない。嫌われて当たり前の存在だ」
「五月蝿いぞ! 弱いのが悪いのだ! だからこそ強くあらねばならんのだろう!! 弱者が虐げられるのは、いつの世も真理であろうが!!」
「ならば、お前は自分が弱者として虐げられても構わんというんだな? まさか、自分は絶対に強者の側に居られるとでも思っているのか? やはりそこまで阿呆なのか、だから俺は空飛ぶトカゲと呼ぶんだがな?」
「キサマもう我慢ならん、ここで死ボォエアッ!!!」
殴りかかるか、ブレスを吐こうとしたか。どちらかは分からなかったので、前蹴りで飛ばすように蹴ってやった。食事は終わったが、こいつらの所為で全く楽しめなかったな。その八つ当たりもさせてもらうか。
蹴り飛ばされたドラゴンは起き上がり、こちらに突っ込んで右腕で殴りかかってきた。ほう、ドラゴンにならないのか。まあドラゴンにならない以上は、俺も武器は出さないでおいてやる。
右腕を振ってきたが、フックのような感じの殴り方だ。ウェルもそうだったが、ドラゴンは地力が高いからか碌に練習しない。基礎能力が高い所為で、それをブンブン振り回すだけだ。ウェルもコイツを見て微妙な表情をしている。
当然俺は右腕のフックモドキを流して態勢を崩させ、うつ伏せに倒すと足を持ち、ジャイアントスイングで振り回した後で放り投げる。落ちたドラゴンは呻いているが、何故かおっさんは喜んでるな。
「おおー! ジャイアントスイングだ。アジフライといい、彼は<瑞穂>に関わりある人かもしれないね?」
「えっ!? 同郷の人? ……いや、<瑞穂人>にあんな髪色の人いないでしょ。眼の色もあり得ないし」
「でもアジフライ作ってたり、ジャイアントスイングっていうプロレス技? を知ってたりするけど?」
「単にそれっぽい技がこの世界にあるんじゃないの? 知らないけど。それよりもディオンステルさんが一方的にボコられてるんだけど……。あの人メチャクチャ強くない?」
「まあ、相手がドラゴンだと分かってて、平然と怒らせるような事を言ってたからね。私達と違ってドラゴンに勝てる人なんじゃないかな?」
「何か勘違いしておるのかもしれんが、アルドは今まで同族の雄を何頭も殺してきておるからな? そも、私も初めてアルドに会った時は突っ掛かり、殴られて気絶させられたのだ。まあ、一方的に殴りかかった私が悪いのだが」
「という事は、あの人ドラゴンに勝てるんっすか?」
「すか? ……まあ、アルドなら余裕で勝つぞ。あの同族の雄がドラゴンの姿にならんのなら、このまま気絶させられて終わりではないか?」
「ドラゴンの姿にならないなら? じゃあ、なったらどうなるの?」
「首を落とされて殺されるだけだ。奴が殴り合いしかしようとしていないから、アルドは手加減して素手で戦ってやっている訳だ。ドラゴンの姿になりブレスでも吐こうものなら、即座に首を落とされるぞ」
「この前”白い”大太刀を作ったから、ドラゴンで試し斬りかなぁ? あのドラゴンが変身するかどうかは知らないけど」
「だね。とはいえ呪われたドラゴンになるか分からないから、呪いのドラゴンに効くかどうかは分からないけど。呪われないなら普通に斬れるでしょ。今までだってドラゴンを斬ってきてるんだし」
「そうだな。翼、尻尾、両腕、両足。全て切り落として放って置かれたのも数頭おる。長老もそうであったが、アルドに喧嘩を売ったところで勝てんのだ。無意味に過ぎる。それに暴れたりなど、おかしな事をせねば何もされんというのに」
「そうそう。それに、いっつも「バカが悪い」って言ってるし。ドラゴンだって暴れたり、ブレスを吐いたりしなければ首を落とされたりしないのに」
「あっ、終わったみたい。ドラゴンが股間を押さえて悶絶してる」
「気絶させるのではなく、アレを潰す勢いで蹴り上げたな? まあ、同族の雄のモノなど切り落として、去勢してしまえば良い。所詮は強姦しかせん連中だ」
「「「「………」」」」
「おつかれさまー」
「おつかれさまです」
「ニャー」 「………」
「ありがとうな。それにしても、ドラゴンは相変わらずザコだな。地力が高い所為だろうが、碌に戦い方も知らん。それどころかパンチの打ち方1つ理解していない。力のある奴が手足をブンブン振り回してるだけだ。子供かっての」
「かつての私もそうだったから、何とも言えんな。それよりもすまぬ、アルドの名前を出してしまった。意図的に私達の名前を呼んでおらんのだろう? 子供達もそうなので気付いたが失敗だった」
「まあ、構わないさ。俺の名前ぐらいだから。それよりも、結局最後まで昼食を邪魔されたな。こいつらもドラゴンと同じでマナーすら理解してないのかね? そこの料理人は別みたいだが」
何か急にオドオドし始めたが、何かあったのか?。




