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 「勘違いしないでくれ、アルドが私を見ていないなどとは思っていない。ただな……私を見る視線に熱があまり感じられないのだ。他の雌がどうかは知らんが、私は熱が欲しい。ギラギラした欲で私を貪り、性の捌け口にしてほしいのだ。私は愛しい雄に”本気で”使われたい」


 「ああ、うん……それがウェルの望みか」


 「うむ。雌としては、愛しい雄に求められたい。性欲をぶつけられたいし、貪られたいのだ。滾るモノを全て己の雌に叩きつけてほしいのだ。私はいつでも受け止める用意があるし、ぶつけられたい。アルドが神の降臨する際の肉体を持ち、性欲というものが薄いのは知っているのだがな」


 「まあな。とはいえ、性欲をきちんと発揮すれば可能な事ではある。何にしても今日の夜だな」


 「今日の夜……か。その、期待している///」



 そう言って、ウェルは嬉しそうな顔をしている。ま、ウェルがそれを望むのなら構わないが、変わっているような、それでいて根源的なもののような……。ま、俺は女性じゃないんで、永遠に分からないんだろうけどね。


 そんな事を考えていると、子供達が起きたので意識を切り替える。2匹も起きてきたので神水を入れて出し、ゆっくりと過ごす。戻ってきた子供達と雑談をしつつ部屋を片付け、紅茶を飲み終わったら宿を出た。


 食堂に行き中銅貨6枚を支払ったら、席に着いて朝食を待つ。適当に噂を聞いていると、少し気になった話があった。



 「どうやら今回もドラゴンの方はダンジョンに行っただけらしいな? 相変わらず勇者とかいうアホがドラゴンの方にちょっかいを出しているみたいだが、どうして国の上の方々は止めないんだ?」


 「さあな。上の方々がお考えの事なんて庶民に分かる訳ないだろ? だいたいあの訳の分からん連中が魔法を使えなきゃ、お偉いさん達だって気にも留めなかっただろうしな。なんだか魔法の上手い連中ばっかりみたいだし」


 「1人魔法を使えないおっさんが居るんじゃなかったか?」


 「代わりにメチャクチャ料理が上手いらしいけどな。何でも<カレエ>とかいう物凄く美味い料理を作ったらしい。他にも美味い料理はいっぱいあるらしくって、聖都の連中は羨ましい限りだぜ」


 「確か店を与えられたんだっけ? 何で何処の馬の骨とも知れねえ奴にそんな事、って思ってたけど、そういう理由があったんだなぁ。オレも食ってみたいぜ」


 「オレだって食ってみてえっての」



 転移者とおぼしき9人のうち、1人は何も無い代わりに料理人だったのか。ある意味で勝ち組だなぁ。日本での料理をこの星で再現できれば、まず安泰だろう。ここ聖国は香辛料が豊富な国だ。色んな意味で恵まれてる。


 という事は、料理の発展の為に連れて来た? ……残りの8人の説明がつかないな。魔法が得意って言ってたが、日本と同じなら魔法なんてない。という事は、転移か複製の際に知識を与えた可能性がある。もしかして、魔力もか?。


 しっかし8人ねえ……火、水、風、土、光、浄化、錬金、錬成、念術。他にも戦闘術という可能性もある。8個以上あるのでどれかは分からないが、まだ噂話の段階だし、本当の事が分かってないんで決め付けないでおこう。


 朝食を終えた俺達は町を出て、聖都を目指し西へと走って行く。この日はバナンブ町まで辿り着いたので、中銅貨8枚で宿をとり、中銅貨6枚を支払って夕食を食べる。特に気になる情報は無かったので、食事を終えたらさっさと宿に戻った。


 子供達はトランプ、2匹はリバーシで遊んでいるので、俺はゆっくりとウェルと雑談をしている。あの魔法と勇者の話だ。



 「ああ。簡単に言うと有名な物語があってな、その所為で英雄と勇者が混同されてしまっている訳だ。その物語では英雄のような活躍をした者を勇者と言っているんだが、最初は一人だったから勇者で間違ってなかったんだよ」


 「その後に増えたのに勇者を名乗っている訳か。仲間と共に強大な敵を打ち倒したというなら英雄であろうにな。一人で事を成すというか、一人の者に対して与えられる称号が勇者であろうに」


 「そうなんだよ。そいつらが複数人数なのに勇者と名乗ってる時点で怪しい訳だ。しかも<カレー>を作ったってなると、ますます怪しいんだよな。インド発祥の料理だったと思うけど、日本では国民食と言われるくらいだし、再現しようとしても変じゃない。挙句に元料理人っぽいし」


 「魔法の使える連中と、魔法の使えない料理人か。【世界】とやらが何をしたかったのかは分からんが、そいつらをどうこうする必要はあるまい。ドラゴンだからと突っ掛かってくるならば、叩き潰すまでよ」


 「そうなんだが、ドラゴンがダンジョンになぁ……。挙句に自称勇者が喧嘩を売っても笑って済ませてるっぽいし、何とも言えないドラゴンだ。何だか鬱陶しいのに絡まれて気の毒なぐらいではある」


 「まあ、そうだな。おそらくダンジョンで腹いっぱい食っておるのだろう。無限に出てくる所であれば、幾ら食い荒らしても怒られんからな。そういう意味では、やっている事は正しいのだが……」


 「正しい事をしたらウザ絡みされるっていうな……。人型で入っているのか、それともドラゴンの姿のまま入っているのかは知らないが、ドラゴンだというだけで敵視する奴等は何なんだろうか。一応の確認くらいしろよ」


 「それは我等も言いたいところだ。祖先がアレだし、他のもアレだが……まともな者もおるのだぞ。とはいえ、アレな奴等が多過ぎて仕方ないのであろう……」



 流石にその事には何とも言えないな。ドラゴンって本当にアレな連中が多いし、俺達が長老を脅した事で変わってれば良いんだが、変わらないだろうなー。


 人間だって、今まで出来た事を急に止めろと言われたって止めない。苛めや見下しに差別なんて正にそうだからな。注意されたら今まで以上にコッソリと陰湿にやるだけだ。人間の性根なんて大半は腐っている。


 おっと阿呆どもの事なんて考えてないで、子供達を寝かせよう。俺はトランプやリバーシを片付けて、子供達と2匹を寝かせて【昏睡】を使う。今日は抱き付いて来ないなと思って見ると、艶っぽい流し目で俺を誘っていた。


 こういう風に誘えるなら俺を煽れたんじゃないかと思うも、口に出す必要は無いな。そう思い、技を一切使わずに貪る事にした。


 ……ウェルは雌として大満足できたのだろう。俺は気を失っているウェルに「お疲れ様」と言い、【浄化】の権能で綺麗にして服を着せる。部屋と全員を再度綺麗にしたら、俺も服を着てベッドに横になる。


 今日も一日お疲れ様でした。



 <呪いの星73日目>



 おはようございます。今日で聖都に到着しますが、今から勇者に絡まれるんじゃないかと心配しています。まあ、喧嘩を売ってきたら適当に叩きのめすか。殺さなければ【世界】も文句は言うまい。


 朝の日課を終えて紅茶を淹れていると、ウェルが起きてトイレに行った。紅茶をコップに入れて飲んでいると戻ってきたが、俺の横に座ってキスしてくる。そこまで濃厚なものじゃない。落ち着いたかな?。



 「う、む。落ち着いたと言うよりは、ようやく雌として真の本懐を遂げたと言うべきであろうか。自身の好いた愛しい雄から滾る性欲を向けられ、欲のままにカラダを貪られ、己の雌だという証をたっぷりと注がれた。浄化されたとはいえ、あの熱は今も私の中に残っている。だからこそ、本当の意味で私はアルドの雌となったのだろうと思う。今はそれが、凄く嬉しい」


 「そうか……ウェルが嬉しいなら良かった」


 「うむ。………愛しき貴方様の雌として、永遠に御傍にはべり付き従います。いつでも何処でも、このウェルディランカをお使い下さい。私のぬし様。チュッ///」



 口上を述べてキスしてきたウェルの目には、とても強い意思が感じられた。


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