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ピンク色の蛸を6匹、全て【乾燥】させたら蓮に渡す。別に自分が食べたくて獲ってきた訳じゃないし、蛸ってたこ焼きか刺身ぐらいしか食べ方を思いつかない。なので無理して置いておく必要もないんだよな。
俺は続いて黄色い烏賊を【乾燥】させ、少し【分離】しては噛んでみる。こちらも味が濃いのか思っているより美味しい。少し【分離】してイデアに渡すと、噛んで味わっているようだ。
「黄色い烏賊ってアレだけど、味が濃くて思っているよりは美味しい烏賊だ。とはいえ、烏賊の料理って何があるかって考えるとなぁ……刺身で食うか、いか飯ぐらいしか思いつかない。とはいえ、あれってもち米でするんじゃなかったっけ?」
「いか飯?」
俺はイデアにいか飯を説明する。するとかなり食いついたが、もち米がないと言うとガッカリしていた。もち米をこの国では見ないんだよなー、ヤシマの国では尾張の正月の料理に出てたけど、イデアには食べさせた事ないから分かりにくいだろう。
とはいえ、米の1種である事は分かったみたいだが、食べた事が無い物を想像するのは難しい。結局、烏賊も全て【乾燥】させ、イデアに渡しておいた。お腹が空いた時にでも食べるだろう。
後は秋刀魚と鯵しかないので、これは食事の時だ。アイテムバッグの中の整理も終わったし、他にはする事も無い。皆も1日休みなのは良いが、そろそろやる事もなく飽き始めてきたようだ。
仕方なく全員でトランプで遊び時間を潰したら、食堂に行って中銅貨6枚を支払い夕食を注文する。周囲では戦争の話ぐらいで、後は町中の小さな事を話しているぐらいだった。碌な噂が無いな。
宿の部屋に戻ってからは、ダリアをブラッシングして綺麗にし、フヨウや子供達を綺麗に梳いて寝かせていく。布団に寝かせた子供達と2匹に【昏睡】を使うと、我慢できずに即座に抱き付いてきた。既に裸だ。
「あのヒキガエルとやらに怒った時、私の事を俺の女と言っていたろう? そう、私はアルドの雌なのだ! 今日は愛しい雄の為に、私が精一杯の御奉仕をするからな! アルドはゆっくり寝ていてくれればいい!!」
そう言って興奮で鼻息が荒いウェルは、満足するまで御奉仕とやらをし続けた。どっちかというと、自分のやりたい事をやってただけのような……? まあ、いちいち口に出したりはしないけど。
ウェルを寝かせて部屋と体を綺麗にしたら、俺もさっさと寝よう。それじゃ、おやすみなさい。
<呪いの星69日目>
おはようございます。今日は帝都から西へと進んで行く日です。途中で王国や獣国に戻る事になったが、結果としては良かったのかもしれない。ある意味で、自分の居るべき場所にアリシアは戻れたとも言える。もしかしたら復讐なのかもしれないが。
朝の日課を終わらせて紅茶を淹れていると、ウェルが起きて濃厚なキスをしてきた。紅茶を淹れている最中だったので、【房中術】で撃沈して寝かせ、紅茶を入れてゆっくり飲む。今日も朝から盛っているのか知らないが、困ったチョロゴンだ。
トイレに行って戻ってきた後も、俺の横に座って昨日と同じ事をしている。なので落ち着くように言う。
「う、うむ……無理矢理に冷めさせられても困るので自重しよう。しかし、仕方がないのだぞ? あのような大勢いる場で、私を己の雌扱いしたのだ。愛しい雄に己の雌扱いされれば、雌が天に昇る心地になるは当たり前であろう」
「言いたい事は分かるが、それで盛るのは駄目だぞ? ちゃんと自制しないとな。子供達も居るんだし、周囲の目もある。暴走していて良い訳じゃない」
「うむ、それは分かっている。分かっているのだがな……」
そう言っていたら、蓮が起きてウェルの脇腹をくすぐってから走って出て行った。当然くすぐられたウェルはビックリしたが、蓮の悪戯は大成功。頭が色ボケしていて蓮が起きた気配に気付かなかったんだろう。これこそ脇が甘い、だな。
流石に毒気が抜けたのか、ウェルがそれ以上盛る事は無かった。そういう意味でも蓮のやった事は大成功だと言える。ありがとうな、蓮。
その後はイデアが起きたり2匹が起きたりして賑やかになり、部屋を片付けて忘れ物がないか確認したら、食堂へと移動する。中銅貨6枚を支払い朝食を注文したら、昨日俺が威圧を撒き散らした話がされていた。
他に話題はないものかと思うも、碌な話題がなかったので食事に集中する。朝食後はさっさと店を出て、帝都の人から情報収集。大銅貨1枚ずつを3人に渡し、西の地理を手に入れたら帝都を出発。一路西へと進む。
パレンソ町、カルドス村、エッスグ村、ソデイン町、コムソ村、アデジ村、クォッス町、デルビエ町、そして国境だ。その向こうは聖国となるが、ドラゴンが暴れているという話は聞けなかったな。今は暴れてないのかね?。
とりあえず皆で走って行く。この日はそれなりに頑張ったのと、足が遅いのが居ないのでソデイン町まで来れた。宿を中銅貨7枚でとり、中銅貨6枚で夕食をとったら宿に戻る。
移動で疲れたのか子供達もすぐに寝たので、ウェルもさっさと寝かせておいた。全て綺麗にしたら、おやすみなさい。
<呪いの星70日目>
おはようございます。聖国に着くまでは移動の繰り返しなので、特に何かがある訳ではありません。朝の日課を終えて紅茶を淹れて飲んでいると、イデアが起きてきたので、一緒に静かな時間を過ごす。
その後はダリアが起きたり蓮が起きたので、静かな時間は終了した。思っている以上に早く終わったな。皆が起きて一段落したら、部屋を片付けて食堂へ。中銅貨6枚で朝食をとったら出発。
今日も西へと走って行き、国境前のデルビエ町までやってきた。明日は国境を越えて聖国入りだ。とりあえず西に走っていれば町か村があるだろうから、そこで地理を聞けばいいだろう。
宿を中銅貨11枚でとったら、食堂に行って中銅貨6枚を支払い、夕食を注文して席に座る。ゆっくりと待っていると、聖国の噂が聞こえてきた。
「また聖国の聖都シールの付近をドラゴンが飛んでたらしい。聖国の勇者とかいう奴は懲りない奴だよ。いったい何度目だって言うんだ、ドラゴンを倒すとか言ってるのは? ここらも通り道になるんで迷惑してんだよな」
「あの勇者とか言ってんの、またドラゴンに手を出したのかよ。元々はドラゴンが聖国の魔物を食ってたのが原因だっけ? んな事は普通なんだから放っときゃいいのに、何で突っ掛かるんだ?」
「知らねえよ。そんな事は勇者とかホザいてるバカ4人組に言ってくれ。確か聖都近くに倒れてたのは9人だった筈だけど、ドラゴンに喧嘩売ってるのが4人って事は、残りの5人は普通なのかね?」
「さあ? とはいえ話題にならないなら、そうなんじゃねえの? それにしてもドラゴンに喧嘩売るなんて余計な事しやがって」
勇者ねえ……何だか怪しい連中だなー。英雄じゃなくて勇者、そのうえ多人数なのに勇者ねえ。普通、勇者ってのは勇気のある兵士だったりを指す言葉だった筈。ヤシマの国があるから何とも言えないが、ヤバ気な臭いがするぞ?。
もちろん俺が知っている日本である可能性は低い。元の世界の日本ではないだろうが、こちらの世界の宇宙にも、日本に似た国なんて色々あるだろう。そこから来ている可能性が高いので、俺が日本人だとバレないようにしないと。
バレると絶対にバカどもが絡んでくる。そう思って警戒しておこう、それぐらいで丁度いい。取り越し苦労なら笑えるが、本当に転移してきた連中なら始末におえない。
絶対に厨二病全開の連中だろうからなぁ。




