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 「しかし、あのクソガキと女の子2人以外に村の生き残りが居たんだな。あのクソガキが村の人達は死んだとか言ってたんで、他の村人は全滅してるんだと思ってた。なら、他の人達に復讐の機会を与えても良かったかもな」


 「ああ、それはそうだの。オル、そなたの故郷を滅ぼした同胞はアルドが殺したぞ。……すまぬ、分からんか。私の名はウェルディランカ、ドラゴンだ」


 「え……ドラゴンの方ですか………そうですか。すみません、そう言われても復讐とかは考えられません。僕は戦う方法とかも知りませんし、戦い方も分かりません。このままだと娼館で働くだけになるので、15になったらすぐに狩人になろうと」


 「狩人になる……ですか? 先ほど武術大会がどうとか言っていませんでした? あれは何なんです?」


 「武術大会で良い成績を残せば騎士になれると聞いたんです、だから将来は騎士になれれば安泰かなぁ……と」


 「騎士になっても安泰じゃないけどな。そもそも騎士って貴族の子供が多いし、そいつらが上を牛耳ってる。そんな貴族の子供が八つ当たりだったりを平然としてきて、実家を背負った権力争いしてるのが騎士だ。格好良いものじゃないぞ? そう見せているだけだ」


 「………」


 「まあ、そうですけど……情け容赦なく現実を言いましたね。騎士と狩人を比べてどっちがマシかと言われたら、間違いなく狩人ですね。騎士は馬鹿の所為でクビ、つまり解雇があり得るので頑張っても……」


 「貴族の子供に都合よく使われるだけって事? 前の星でも騎士って似たり寄ったりだったよ。騎士を止めてジャンと一緒に傭兵やってたし」


 「ああ、ミレイアとシャローな。ミレイアは子爵家の令嬢で騎士、シャローは侯爵家の令嬢で近衛騎士だった。どっちもジャンに惚れて傭兵になり自由に生きていたぞ」


 「近衛騎士から傭兵ですか? 意中の男性目当てとはいえ無茶な事をしますね。実家の両親が激怒したでしょうに……だって、侯爵家なんでしょう?」


 「三女で疎まれていたからなー、本人も実家と縁を切りたがってたし。それは横に置いておくとしてだ、騎士になっても碌な事がないが、それでも騎士になりたいのか? それとも収入の為だけか?」


 「えっと、その……安定して収入が貰えるならと思って、それで騎士になろうと……」


 「悪いが平民から騎士になるのは極めて難しいぞ。一部の運の良い奴しか無理だろうし、大半は兵士で終わるだろう。更に兵士は使い捨ての部分があるからなぁ……俺としてはオススメしない」


 「安定した収入が欲しいなら、普通に狩人をやれば良かろう。そなた戦い方すら知らぬのであろうに、どうやって狩人として生きていくのだ? 騎士になる前に狩人として生きていくのであろうが、そんなに甘いものではないぞ」


 「そこまでならもしかして、娼館から逃げてきたのか? ……やっぱりそうかよ。それで俺達をつけてきた時に悪意を持ってたのか。もしかして金が無い?」


 「……はい。食事は貰えるんですが、それだけで……後は何も。狩人になるのに後2年もあるんです。でも、もう耐えられなくて……」


 「はぁ……成る程な。仕方ない、受け入れよう。ジャンの事もあったし、2度目だからそこまで葛藤とかはないな。オルも鍛え上げてやるが、まずは神薬を飲ませるのが先か」



 俺は神薬を飲ませた後、オルを連れて娼館へと行った。オルは戻されると思ったのだろうが、そうじゃないと説得するのに時間が掛かったが。


 娼館ではオルを連れ戻して働かせようとしたが、俺がオルを連れて行く事を言うと、中から3人ほど用心棒らしき男が出てきた。調子に乗っていたのでボコボコにしてから【幻死】を喰らわせトラウマを植えつけておく。


 流石にその惨状で諦めたのか、素直にオルの身柄をこちらに渡してきた。まあ、その娼館のオーナーとやらも漏らしていたからな、格好も何もつかんだろう。いちいち手を出してくるからそういう目に遭うんだが、仲間に手を出してきたら殺すか。


 俺はオルを連れて戻るが、心底安堵しているらしい。その姿から、相当酷使されてきたのが分かる。多分だが限界だったんだろうな。


 娼館からすれば都合よく使える田舎のガキだった訳だし、暴力を使って取り戻そうとするぐらい使い勝手が良かったか、それとも人気があったのか。わざわざオーナーが出てきたくらいだ。稼げる奴だった事は間違い無い。


 宿に戻り、俺は皆を連れて食堂に行く。中銅貨8枚を支払い食事をしつつ、娼館に行ってオルを引き取ってきたと話すとアリシアは喜んでいた。



 「どう考えても、故郷をなくした子供が娼館で無理矢理使われるって納得できませんしね。もちろん仕方ない部分はあるのでしょうが、それでも納得はできかねます。同じ様な人は多いのかもしれませんけど……」


 「ああいう仕事も需要が無ければ成立しないからなー。やっぱりそういうのが成立する町か都しかないだろうし、子供でも働けるとなると……難しいと言わざるを得ないだろう」


 「だろうな。子供の仕事を仮に作ったとしても、そうすると仕事目当てに大量の子供が流入する。帝都が耐えられんぞ。国の中心といえども、子供の出来る仕事を常に作り出す訳にはいくまい」


 「そもそも馬鹿なドラゴンの所為と言ったところで、盗賊に襲われて……という形で似たような事はあるしな。決してドラゴンが関わらないと起こらないレアケースじゃない」



 愚痴はここまでにして、後は普通に食事を終えて宿へと戻る。オルが娼館に居たのは1年ぐらいで、その間はまともな食事をとっていなかったようだ。そりゃ限界にも達するか、13歳の割には体が小さいと思ったよ。


 身長は150なく、147か8ぐらいだ。かなり痩せているし、何がしかの病気持ちでもあった。既に綺麗に【浄化】したからいいが、本人には言えないな。強く【浄化】しておいたから、トラウマがあってもマシにはなった筈だ。


 今のところはここまでしか出来ない。忘れさせる事はできるが、アレ系の技には失敗のリスクがある。流石にそこまでは出来ないし、失敗した際のリスクが本当にシャレにならない。


 本人は蓮とイデアとリバーシをしているし、ボッコボコにされているが楽しそうだ。遊びすら知らなかったんだろう。寒村の出身みたいだが、村の生活も厳しいものだろうからなぁ。


 子供達がウトウトし始めたので慌てて布団を敷き、オル用の布団も敷く。子供達を寝かせてから2匹を左右に寝かせ、オルにも布団に寝るように言っておく。


 多少眠そうな顔をしていたオルが布団に入った段階で【昏睡】を使い、子供達と2匹を眠らせると2人が襲ってきた。【精気】のみでじっくり相手をして撃沈したら、2人もベッドに寝かせる。


 部屋と体を綺麗に【浄化】したら寝ようと思ったのだが、オルがうなされているので軽く【極幸】を使うと落ち着いたようだ。まあ、これで大丈夫だろう。それじゃあ、おやすみなさい。



 <呪いの星49日目>



 おはようございます。宿はまだ十分に泊まれるので、今の内にオルに身体強化を教えようと思います。せめて自分の足で走れるようになってくれないと困るしな。移動の速度が遅いとイライラするし。


 朝の日課を終わらせて紅茶を淹れ飲んでいると、イデアが起きてトイレに行った。起きたのがイデアなら静かだなと思っていると、次に起きたのは蓮だった。子供達が意外に早い。


 その次は2匹かそれとも女性2人かと思っていたら、オルが起きた。どうやらトイレらしいので場所を言うと、部屋を出て行く。入れ違いでイデアと蓮が戻ってきたが、早速紅茶を入れている。


 今日の朝はゆっくり出来るのか否か、オルはどうなんだろうな?。


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