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 「あー、オレの名はガンドローム。知り合いはガンドと呼ぶから、そう呼んでくれ。実はな、お前さんがダンジョンの30層に行ってデカい熊を獲ってきたって聞いてな……ああ、ギルマスは悪くねえ。オレが少々強引に聞き出しただけだ」


 「ボクの名はリットゥリンテス。リッタとかリッテと呼ぶ人が多いかな。ボクもあの大きい熊が欲しくてさ、それでお願いしたいんだよ」


 「わたしの名前はディルナアーティエ。好きに呼んでちょうだい。わたしは何か凄い爪を持っている熊が居るって聞いたのよ、その爪が欲しい「待て待て」のだけれど……」


 「お前等が誰か知らんが一斉に話すな、分かり難い。まず第一にあのギルマスが口を滑らせたのか? 確かにお前さんらは貴族に見えんが、いちいち鬱陶しいから喋るなと言ったのに早速喋るとは……」


 「あー、待て待て。オレだけじゃねえけど、強引に聞き出した部分はあるんだ。だからここのギルマスが悪い訳じゃねえのさ。オレは格闘部門の優勝者なんでな、一応狩人から出た優勝者なんだよ。だから優勝特典として強引に聞き出したのさ」


 「ボクは剣の部門の準優勝、同じくここのギルマスから聞き出したんだよ。ちょうどガンドロームもディルナアーティエも同じ用でギルドを訪れてたからね。話題になっている熊を見に行ったら凄かったからさ、アレの素材が欲しくなるのは当然だよ」


 「わたしは革鎧とか着けないからどうでもいいんだけど、爪が剣のように鋭くて鉄でさえ切り裂くのが居るんですってね? その爪が欲しいのよ。最悪の際の切り札にもなるし、上手く加工すれば使えるかもしれないから」



 とりあえず、まだ加工してなかったソードグリズリーの爪をアイテムバッグから出して見せてやる。すると俺から引っ手繰るように奪い、一つ一つじっくりと確認し始めた。



 「これが……爪、なのね。……凄いわ、ここまで魔力の通りが良いなんてビックリ。これを幾らで売ってくれるのかしら? 大銀貨2枚? ……じゃあ、これ。良い取り引きだったわ、じゃ」



 そう言って黒髪の女は去って行った。特にどうこうとは言わないが、多分あれが<黒の魔女>と呼ばれている女なんだろう。ソードグリズリーの爪欲しさに押しかけてくるってどういう神経してんだ。



 「それで、お前さんらはアーマーベアの皮に用があるんだろ。ギルドに行って買えば良いんじゃないのか? ギルドには売ったんだから、そこから買えば普通に手に入るよな? 何故わざわざ俺に言って来るんだ?」


 「お前さんが売った分はもう使い道が決まってるらしい、だからオレ達は来たわけだ。かなりの皮だって聞いたし、オレも優秀な革防具ってなったら喉から手が出るほど欲しい。格闘スタイルのオレにゃあ金属鎧なんぞ邪魔なんでな」


 「ボクは君が着けてるようなブーツやグローブに手甲だね。もちろん革鎧も優秀なのに越した事はないんだけどさ。でも武器を持つ為の手とか腕とかを妨げずに守るには、良い革製の防具がいるんだよ」


 「ふーん。まあ、それなら小金貨1枚だ。ギルドに売ったのは1頭で小金貨1枚だったんでな。それが払えるなら渡してやるんだが、何処でだ? お前さん達に渡してやるが、アーマーベアはかなり重いぞ?」



 俺がそう話すと、最終的には結局ギルドに行く事になった。ギルドで解体してもらってから、皮だけ受け取るらしい。まあ好きにしてくれとしか思わないが、俺達は連れ立って歩いていく。


 ギルドの裏の解体所に行き、アーマーベアを取り出してから2人に売っていると、また妙な奴等が声を掛けてきた。



 「ちょっといいかい? そのスゲー熊を殺してきたって事は、あんたが30層まで行く凄腕の狩人だな。オレにも熊の皮を売ってほしいんだが幾らになる?」


 「すみません。私にも売っていただきたいのですが……ああ、失礼。私はローディカンマと申します。<白の剣>と申せばご存知でしょう」


 「横からすまんな。私達もそうだしアルドもそうだが、他の狩人などには全く興味がないので知らんぞ? 私達はランクを上げる気もなかったし、鬱陶しいのが押しかけてきて迷惑しておるくらいだ」


 「まあ、人知れずドラゴンが狩人をやってるくらい、誰が狩人登録してるかは不明ですからね。有名ではない実力者も世の中には居るので、何とも言い辛いです」


 「2人とも同じ物を欲しがってるみたいだが、生憎と残りのアーマーベアは1頭だけだ。どっちが受け取るのかは知らんが、そっちで決めてくれ。後、文句は一切受け付けないから、そのつもりでな」


 「兄さんも容赦ねえなあ。まあ、残り1頭しかねえ以上は仕方ないだろうし、こういうのは早い者勝ちだ。遅い奴等が悪いんで文句は言えねえ。嫌なら売らなきゃいいだけだしな」


 「「………」」



 俺はギルドに3頭売り、素材をどうするかはギルドに放り投げた。あの2人が欲しいのは皮だけみたいだし、ギルドとしては肉も骨も欲しいみたいだ。肉はともかく、骨は何に使うのか知らないが。


 俺は受付に行って板を渡し、金を貰ったらさっさと宿へと戻る。その際に後ろからつけてくる奴が居るので声をかけた。



 「さっきから後ろをつけきているが、お前さん何の用だ? まだ若いにも関わらず強盗とは関心しないな」


 「!?」



 後ろからつけてきていた少年はビックリして竦み上がってしまったようだ。ほんの少しの悪意が洩れていたんで子供達も気付いていたが、その悪意はすぐに霧散した。見た目からしても相当にみすぼらしいので、貧民なんだろうか?。



 「喋らなけりゃ分からないんだが、このまま喋らないなら兵士に突き出すぞ?」


 「あ、す、すみません!! 僕はオルと言います! スラムに住んでて、武術大会に出られないかと……でも駄目で、故郷はもう無いですし……」



 少年が何を言っているのか分からなかったので、宿の部屋に連れて行って詳しく聞く。すると、この少年はクソガキどもと同じ村の出身だった。故郷がドラゴンに破壊され、他の子供達と帝都のスラムに流れてきたらしい。



 「僕は必死に働いていたんですけど、一緒に来た3人の人達は居なくなってしまったんです。たぶん殺されたんだと……何だか危ない組織の人達と一緒に居ましたし。僕は怖かったので、なるべく関わらないようにしてたんで無事だったんだと思います」



 スラムで虐殺したのは俺だけど、オルはその時に見なかったぞ? どこに居たんだ?。



 「オルは必死に働いていたと言っておったが、何処で働いていたのだ? そなた狩人になってないという事は、まだ15ではあるまい。いったい何処で働いていた?」


 「………あ、あの……それは、そのー……」


 「ああ、分かった。娼館だな。この年齢の子でスラムで仕事となると、危険な仕事か犯罪か、それとも体を売るしかないからな。気にしなくてもいいぞ、そういうのは色々と見てきた。男相手か女相手かで変わるが、どっちも大変であることに変わりはない」


 「主に女性の相手を……まあ、色々と。それに男性が相手の事もあって……」


 「女性の相手ならば、特に何の問題も無いのでは?」


 「病気持ちだったり、異様に臭い女の相手をさせられたりするらしいから、女性相手だからというのは無いぞ? ああいう場所に来る客にはクソみたいな客も居る。アリシアは病気持ってたり、汚くて臭い奴の相手をしなきゃならないとして、それに耐えられるのか?」


 「本当にごめんなさい、軽率な発言でした」



 だろうね。オル少年の事を深堀する気は無いんだが、病気持ってる可能性はあるし、綺麗に【浄化】しておくか。室内と俺達も含めて。


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