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 「ウヴァーーッ!! クソッ!! 妙な事をする人間種めが!! 許さんぞ! キサマだけは殺してやる! 必ず殺し、ウギャーーーッ!!」



 俺は斬り落としたドラゴンの傷口を【浄炎】で焼いていく。理由は簡単に死なせない為だ。流石はドラゴンというべきか、そこまで大量の血が噴出していた訳では無い。前に倒したドラゴンもそうだが、最初は血が出るものの割とすぐに治まるんだよ。


 回復力が高いのか、それともそういう生き物なのかは分からないが、嬲る場合には都合がいいとも言える。そんな事を考えながら焼いた後の傷口を大太刀で抉っていく、出来得る限り痛みが出るように。



 「ギャーーーッ!! ガアッ! ギィーーーーッ!! グソッ!! ヤメローーーッ!!!!」


 「おいおい、この程度でギャーギャー言うなよ。お前は多くの何の罪も無い人間種を殺したんだろ? その人達の痛みはこんなもんじゃない筈だぞ。ちゃんと受けろ、報いをな。おい、そこのクソガキ。何を止まってる、復讐のチャンスだぞ? 傷口なら切れるから早くやれ」


 「いや、しかし……これは違うだろう」


 「何を言ってるんだ、お前は? 殺された人達の仇をとるんだろ、なら早くやれ。出来得る限り苦しめてやるといい、何故なら多くの村人は苦しめられた筈だからな。死の間際まで苦しんだだろう、それを返してやれ」


 「……それは分かる、分かるけど……」


 「やらないのか? ならお前の復讐とはその程度だという事だ。偉そうにホザいていたが、所詮はトカゲが苦しんでいるのを見て尻込みする程度。だったら偉そうにホザくな。お前の復讐心とは、その程度なんだからな。そこの女の子2人はどうだ? 焼いた傷口ならお前達でも攻撃は通るぞ?」


 「「「………」」」


 「なんだ、結局そんなもんか。自分達の村の村人を殺した奴にも関わらず、ギャーギャー喚いて苦しんでいる程度で尻込みするとはな。さっきも言ったが詰まらん復讐心ならいちいち持つな、偉そうに語るな、復讐するならちゃんとやれ」


 「「「………」」」


 「グゥ!! 許さんぞ、キサマ! 必ずやキサマだけは殺してやる!! 群れの仲間に伝えればお前のような人間種はドラゴン全ての敵となる!! 怯えて逃げ惑うがいい!!!」


 「むしろそれはチャンスでもあるんだが、まあいいか。最後に教えてやる。<ドラゴンといえども獣と同じ事しかせぬならば殺せ>。竜の神からの神命であり、俺はその神命を受けている。つまりお前を逃がしたりなどしないし、獣の如きドラゴンは皆殺しだ」


 「は?」


 「じゃあな」



 俺はそれだけを教えてやり、ドラゴンの首を落とした。落ちた首の断面からおびただしい程の血が出るが、それもすぐに緩やかになる。相変わらずドラゴンの肉体というのはよく分からんな。


 俺はドラゴンの死体を【浄炎】で焼きながら、飛び散った血をフヨウに掃除してもらう。血は血でしかないので妙な進化とかはしないと思うのだが、一応念には念を入れておく。薄い呪いが蔓延している以上、妙な事が起こる可能性はゼロじゃない。



 「また愚かな同族が死んだか。私が昔、同族を殺してハグレとなったのは間違いではなかったのであろうな。コレらと一緒にされたくはないし、あまりにもあまりに過ぎる。カーナント王国でも村にブレスを吐いていた愚か者が居るそうだが、真に獣と変わらん奴等だ」


 「それにしても、あっさりとドラゴンが殺せた筈なのに随分と嬲りましたね? ……壊滅した村の生き残りが居たからですか?」


 「そこのクソガキが仇だ復讐だと五月蝿かったんでな、復讐させてやろうと思ったんだよ。そしたら尻込みする程度の復讐心しか持ってなかったという事だ。その程度の癖に俺を殺すだとかホザいていたんだからな、鼻で笑うしかない」


 「確かにな。結局、己の手で何かを殺すとなれば尻込みするのでは話にならん。それが例え、翼も尻尾も四肢も切り落とされ禄に何も出来ぬ者でもな。復讐相手なら殺し、止めを刺さねばならぬであろう。出来ぬならば最初から復讐を考えるべきではない」


 「「「………」」」


 「まあ、仕方ないのでは? 怨みと憎しみの相手はドラゴンです。強大で強力な相手だと思っていたら、目の前で八つ裂きにされている訳ですからね。どうしていいか分からなくなったのでは?」


 「どう思うかは本人の自由とはいえ、それと復讐相手は違うだろう。あのドラゴンを自分達の手で殺して、初めて復讐は完遂するんだ。結局尻込みして復讐は為されないまま終わったぞ? 他人が殺すのを見ていただけでしかない」


 「そうだの。我等は何もそなたらを嬲ろうと思って言っておる訳ではないぞ? 勘違いするなよ。そなたらの復讐心はその程度でしかなかった、その事は自覚せよという事だ。そなたらが復讐を果たすチャンスは先ほどしかなかった、奴はもう死んだのだからな」


 「後で何を思おうが何を考えようが、お前達が復讐をする正当なチャンスはもう無くなったという事だ。だから先ほど復讐を果たせと言ったんだよ、あれが最後のチャンスだったんだからな」


 「今は実感が無かろうが、後で後悔するだろう。あの時、自分の手で止めを刺しておくべきだった……とな。だがそうなっても文句を言うのは筋違いだ。アルドは復讐を果たせと言い、お前達にチャンスを与えたのだからな」



 死体を焼くのも終わったので、灰と骨を【分解】で塵より細かくして消し去る。これでドラゴンの死体が悪用される事もないだろう。周囲の狩人が俺のやっている事を見て怯えている気がするが、俺としてはどうでもいい。


 終わったので皆と共に帝都へと行き、それなりに門番に質問を受けたものの、何とか入る事が出来た。何でドラゴンを殺した程度で警戒されなきゃならないんだか……。


 狩人ギルドの裏口に回り、解体所でアーマーベアを出す。解体所の職員は仰天して色々調べているが、俺達の着けている革鎧の材料だと言うと熱心に調べ始めた。途中で革鎧を脱いでくれと言われたので、脱いで手渡すとじっくりと観察している。


 それはいいのだが、観察の仕方が防具職人みたいだな。どんな皮が採れるか調べてるのかね? ……ある程度経ったら返してくれたので聞くと、どうやらアーマーベアが持ち込まれた事は無いらしい。


 なので、ダンジョンの30層以降に出る事を話すと笑い始めた。どうも冗談だと思ったらしい。なら何処で獲ってくるんだよ、この新鮮な死体。そう言うと、笑うのを止めてじっくりとアーマーベアの死体を調べる。


 俺が言った通り新鮮な死体だと理解したんだろう。本当に30層以降に行ったと分かり、驚いた後で走って何処かへ行ってしまった。それはいいが査定をしてほしいんだが……。もしかして時間が掛かる感じ?。


 そろそろ夕方なので仕方なく子供達には干し肉を渡し、ダリアとフヨウにも渡す。アリシアとウェルも望んだので、俺以外のチーム全員が干し肉を食べているという状況に。


 そんな中、解体所の職員がオッサンを連れて戻ってきた。どうやら狩人ギルドのトップ、つまりギルドマスターらしい。わざわざギルドマスターが出てくる事かね? そんな事を考えていたら、もう一度革鎧を見せてくれと頼まれたので渡す。



 「………手触りやら何やらで凄いのは分かるが、この革鎧がコイツから作られた物なのか。しっかし、こんなバケモノ熊は見た事がないぞ。本当にダンジョンの30層に行ったのか?」


 「買い叩くつもりで言ってるなら、売らないだけだからどっちでもいい。そっちが決めていいから好きに選べ」


 「おい、マジか!? ギルマス、余計な事言うんじゃねえよ! この皮ぁ、トンデモねえんだぞ!! ここで手に入らねえってなったら、他の所に取られっちまうだろうが!!!」


 「分かった、分かった。だがな、本当に30層以降まで行ったのかどうかは調べねばならん。コイツらが詐欺るとは思えねえが、それでも調べる必要はあんだよ」


 「ならギルドマスターと女性二人、明日までに用意してくれ。その3人を明日30層まで連れて行ってやる」


 「オレぁいいが、女性2人ってどういう事だ?」


 「背負って連れて行くからだよ。普通の連中と違って俺達は足が速いんだ、あんたらの足に合わせてたら日が暮れる。だから背負って行くんだが、残りのメンバーは女性なんでな」


 「ああ、そういう事か。………分かった。当てがねえ訳じゃねえ。こいつは預かっとくが、事実なら纏めて精算する。そこまで言うからには自信があるんだろ?」


 「自信というよりも、唯の事実を言っているだけなんだが……まあ、いいか」



 全ては明日という事になり、俺たちは狩人ギルドを後にした。明日も狩りをしようと思ってたから別にいいんだけど、ちょっと面倒だな。


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