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遅い昼食が終わった後、皆に干し肉作りを含めてまだまだこのダンジョンを攻略できない事を伝える。ついでに金を稼いでおくのとランクを多少上げておく為に持ち帰る事も言っておく。持って帰るのはアーマーベアだ。
「アレなら防具に使える最高ランクの皮だし、ランクは上がると思う。そろそろ多少はランクを上げる行動をしておかないと、不審がられても面倒なんでな。それと子供達に十手を渡しておく」
「コレってアルドが使ってた、剣とか受け止める奴だよね? ……身体強化をすれば使えるかな? 普通だと力負けしちゃうよ」
「そうだけど、流すくらいなら出来ると思う。無理に止めなくてもいいんじゃないかな? どのみち左手に持って防御する為の物だし。白いって事はソードグリズリーの爪だと思うから、強化すれば十分に守れるよ」
「まあな。そもそも右手に短剣を持つ場合を想定して渡してるんだ。槍だけだと戦いにくい場合もあるし、剣なんかを持たせてもリーチは短くなる。だったら最初から小回りの効く武器で戦った方が良い」
「ボク達まだ背が低いですからね、年齢が年齢なんで仕方ないんですけど……。槍はまだ使えますが、剣となるとそれ以上に重くなりますからバランスが悪くなりますし」
「普通は五歳の子供に武器を持たせて戦わせたりなどせぬからな、こればっかりはどうしようもあるまい。正直に言えば、槍ですらよく振り回せると思っておるぐらいだ。まあ練習が主で、実戦で使う事は殆どないが……」
「そろそろ腹もこなれたし、狩りを始めようか。ソードグリズリーの爪が十分集まったら何か武器を作るから、作ってほしい物を考えておいてくれ」
そう言って後片付けをしたら焼き場を壊す。十分に休めたのでここからは狩りの時間だ。【気配察知】を使いつつ魔物を見つけたら強襲し、狩っては干し肉にしたり解体して冷凍したりしていく。俺が大忙しだが仕方ない。
ソードグリズリーに関しては爪さえ手に入ればいいので、皆が容赦なくブチ殺していく。ウェルが頭頂から股間まで真っ二つにしたり、アリシアが全力で身体強化と武器強化をしてカチ割ったり、子供達が魔法でフルボッコにしていた。
その甲斐あり十分な干し肉を作れたし、ヘビーブルの肉も十分確保できたと思う。ていうか、ちょっと確保しすぎな気もする。デスボーアも干し肉以外に沢山獲れたし十分だろう。少し早いがそろそろ帰るか。
そう言って脱出紋に乗り、俺たちは外に出る。少し歩くと運悪く5人組に出会ってしまい、クソガキに見つかってしまった。何かを言うつもりも無いのか急に態度が悪くなったが、こちらも何も言うつもりは無いので無視。
とっとと帝都へ戻り、向こうの狩人ギルドで獲物を売ろうと思ったら、急に何かが空から降りてきた。というか、空から降りてくるヤツなんて1種族しかいないぞ?。
「ほう、こんな人間種塗れの所に同族がおるとはな。どうせハグレであろう、違うか?」
「お前が何処の誰だか知らんが、確かに私はハグレだ。それがどうかしたか?」
「クククク……ハグレだと堂々とぬかすとはな。余程に愚かと見える。愚か者の末路というものをしっか「お前! 村を襲ったドラゴンだな!!」りと教えてやろう」
「お前はかつてオレ達の村を襲ったドラゴンだ、間違いない!! 今でも忘れてないぞ! お前の所為で村の人達は殺され、オレ達がどれほどの怨みと憎しみを持ったか!!!」
「うん? ここから北にあるチンケな小さい村の事か? そういえばそんな事もあったな。力の無い人間種が必死に逃げ惑う姿は随分と滑稽であり、なかなか面白かったぞ。褒めてやる」
「キッサマーーーッ!!! ブッ殺してやる!!!」
あのクソガキは右手を鰐の腕にしつつ、剣をドラゴンの右腕に振り下ろしたが、「ビキィッ!」という音と共に剣が折れて飛んでいった。ドラゴンは予想通りだったのか、避けようともしなかったな。
「クックックックッ、人間種というのは相変わらず頭が悪いな。お前達の持つ武器如きで我等ドラゴンが傷付く事などあり得ぬわ。しかし手を出してきたのはキサマだ、死ね」
そう言ってドラゴンは右手で薙いできたが、アリシアが盾を両手で持って防ぐ。その際のアリシアの両手は大猿の腕になっていた。しかしその御蔭か、それとも身体強化の御蔭かは分からないが、受け止める事が出来ている。
「チッ! 我の攻撃を受け止める事ができ……うん? 猿の腕だと? こっちのは鱗の腕。お前達は人間種ではないのか、気持ちの悪い生き物も居たものだ。まあいい、ここで殺してしまえば増えはすまい。さっさ、ギャァァァーーーッ!!!」
散々バカが隙を晒しているのにも関わらず、俺が何もしないなんて事はあり得ない。そろっと超魔鉄の大太刀を取り出して、左の翼をぶった斬ってやった。これで飛んで逃げる事はできなくなったので、後は嬲り殺しだ。
俺はそのままの勢いで尻尾を斬り落とし、右の翼も斬り落とす。最後に両腕両足を刎ねたら完成。後は穴を掘って斬り落としたゴミを処理していくだけだ。
「グュェヤァァァーーーーッ!!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛いーーーーーー!!!」
「「「「「………」」」」」
「相変わらずの切れ味ですねー。あっと言う間にドラゴンがぶった斬られてますけど、前に戦ったドラゴンもこうやったんですか?」
「最初のドラゴンはブレスを吐いてきたので首を斬り落としたのは覚えてるだろ? その妻だった呪われたドラゴンは浄化したが、そのすぐ後に3匹出てきてな。ウェルがハグレだと知るや犯そうとしてきたので首を刎ねた」
「そういえばそんな話しでしたか、ドラゴンの雄は雌をすぐに犯そうとするクズだったんでしたね。人間種ですら強姦は犯罪だというのに、ドラゴンの雄は強姦犯罪者だらけです。呆れて物も言いたくなくなりますよ」
「まあな。で、その後に3つの群れの長老が偶然飛んできて、呪われたドラゴンの話をしたにも関わらず「弱いから犯されるのだ」って言ったんだよ。分かるか? 犯された方が悪いって言うんだぞ? 頭がおかしいんだよ、ドラゴンは」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
周りで聞いている奴等も唖然としてるな。ドラゴンがそんな獣のような連中だとは知らなかったんだろう。ウェルの事を知らないという事は、たぶん東の群れのヤツじゃないんだと思う。まあ、何処のヤツであろうが殺すんだがな。
「グゥ、おのれ人間種如きがーーーっ!! 死ねぇ!!!」
またバカの一つ覚えのようにブレスを吐いてきやがったか。俺は面倒なので【念動】でカーブさせ、バカなトカゲの顔面にシュートしてやった。綺麗に決まったが、どうやら目が熱でやられたらしい。見えていない。
「グヴァァーッ!? クソッ、おのれ何処だ人間種!! 何処に逃げおったのだ! 我が殺してやるからさっさと出てこい!!!」
「出てこいも何もずっとここに居るぞ。お前の目が見えなくなっただけだ。仮に生き残れても一生目が見えないままだな。憐れなトカゲだ」
「キサマーー!! 言うに事欠いて我等ドラゴンをトカゲだと!! 許さんぞ、虫ケラめ!! 我等の祖先を食らい知恵を身につけた程度の分際で! 我等が祖先を食わねば、今でも獣の分際で!!」
「前にも言ったが、それを言っていいのは食われた祖先だけだ。食われてもいないお前が言っていい事ではないし、食われたという事は負けたって事だ。ドラゴンは別の生き物に食われたんだよ。お前達が言うほど、ドラゴンは強くない」
「何だと!? 我等ドラゴンに対する何という不遜な物言いだ! 所詮は人間種の分際で!! 死ねぃ!!!」
またブレスを吐いてきたが見当違いの方向だった。まあ、それもカーブさせて顔面に直撃させるんだけどね。バカの一つ覚えだが、よく飽きないもんだ。




