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 部屋を片付けて皆の準備が整ったら、食堂へと移動して中銅貨7枚を支払い朝食を注文する。席に座って待っていると、昨日の武術大会の話をしていた。昨日で予選は終わったらしい。



 「ついに本戦出場者が出揃ったけど、皇族方は流石に誰1人として落ちてないな。このまま何処まで勝ち上がれるかは分からねえけど、今年は良いトコまで行くんじゃねえかな?」


 「確かにな。とはいえ優勝候補には勝てねえだろうからさ、一回戦か二回戦で終わりじゃないか? それでも本戦に出られるだけで十分だろ。32人の中の1人だからな」


 「まあな。大半の奴が本戦に出場する事もないんだから、本戦出場っていうだけで既に凄いんだが……それでも本戦出場っつーだけじゃ、騎士にはなれねえしさ。難しいな」


 「まあ、騎士を目指して来る奴は沢山いるけど、大半が田舎剣術か碌に練習もしてねえ。騎士の人に聞いた事あるけど、普段は畑仕事してるだろうから仕方ねえってさ。だから見てるのは体力があるかとか体が大きいかぐらいだってよ」


 「って事は何か、体が大きくて体力がないと騎士にはなれねえって事か? でも体力っつっても騎士になったら訓練で身につけるんじゃねえの? よく分からねえなあ」


 「最低限の体力っつーのがあるんじゃねえの? そういうのも入れなきゃ駄目なんだと思う。聞いた話だと武器の使い方とか馬の乗り方とか、全部騎士になってから教えるしかねえってさ。下手だし知らない奴ばっかりなんだと」


 「正しい剣の振り方とか馬の乗り方とかを、田舎の農民が知ってる訳ねえわな。オレだってそんなもん知らねーし。結局は騎士になってから教えるしかねえから、騎士にする基準にはならねえのかー。成る程な」



 途中から騎士の話に変わったが、そういえば田舎から騎士を目指して来てる連中が居るんだったな。とはいえ最初は兵士からだろうし、大半の奴は兵士として使われて終わりだと思うけど。


 田舎の農民から騎士になれる奴なんて殆どいないだろう。何故なら騎士の場合は教養が要るからな。様々な教養が農民にあるかって言えば無い。ならどこまで行っても兵士止まりだろうとは思う。稀に気に入られて騎士になれる者もいるだろうけど、滅多にはいないだろう。


 それはそれとして、朝食も終わったしそろそろダンジョンへ移動するか。ゆっくりと歩いて帝都を出た俺達はダンジョン街へと移動し、そこで5人組を見た。たまたまクソガキはこちらに背を向けていたので気付いていなかったが、他のメンバーは気付いたらしい。


 俺達は気付かないフリをしてその場を去って行くも、4人は微妙な顔をしながらも何も言わなかった。多分だけどクソガキが善人になった理由が俺だと分かっているんだろう。まあ、あの状況なら誰が考えても俺が原因だって分かるだろうけどさ。


 あいつらが再びチームを組んでいるかは俺たちにとってどうでも良い事だ。もはや関わる気も無いしな。そんな事を話しつつ身体強化を使って30層まで一気に走って行く。あそこまで行って遅い昼食を食べた方がマシだ。


 16層から虫の平原、砂漠、夜の砂漠と、碌でもない地形が続くからな。15層で昼食は早すぎるので、結局30層まで我慢するしかない。それでも洞窟とか火山とか氷原とか雪山よりはマシではあるんだけど。


 ………よーし、30層に着いたから昼食にしよう。蓮には麦飯を炊いてもらい、イデアにはスープを作ってもらう。アリシアとウェルはサラダの用意で、俺はヘビーブルのステーキだ。


 ある程度の時間が経ってから、分厚く切ったステーキ肉に塩だけ振ってジックリと焼いていく。胡椒に似た香辛料がないのでどうしようもないし、ここは調味料に漬け込むべきじゃないと判断した。


 久しぶりのヘビーブルだからな、素の味を楽しまなきゃ駄目だ。重い代わりに肉の旨味が非常に強いから、最初は余計な味付けはせずに食べたい。


 神水、謎の魚節、呪いの魔物の脂、魚醤、灰持酒、そして【粉砕】した野菜を混ぜて煮込む。味見をしながら丁度良いところで止めればタレの完成。使うかどうかは各々に任せるけど、山葵か大根が欲しいところだ。どっちでも美味いだろうに。


 麦飯と肉が焼けるのは同時ぐらいだったので、麦飯を椀に盛りつつ肉を皿に乗せていく。アリシアもウェルもダリアも五月蝿かったな。早く食べたいのは分かるんだが、最高の焼き加減で出さないと駄目に決まってるだろ。


 あんまりにも五月蝿いのでソードグリズリーが近寄ってきたし、2人と1匹に任せたけどさ。爪を残してフヨウが喰ってくれて良かったよ。俺は肉を焼くのに集中してるから、処理できないし。頼むから、もう下らない事はしないでくれよ。


 それじゃあ、準備も終わったし食べようか。いただきます。



 「ん~! 美味しい! 久しぶりだけどヘビーブルはいいね! このお肉は噛めば噛むほど美味しいんだよ。お肉の美味しい汁が溢れてきて、堪んない!!」


 「うん。やっぱりヘビーブルは美味しいね。それにしても、こっちの星でもヘビーブルが出てくるとは思わなかったよ。おかげで美味しいお肉が食べられるんだけど、不思議な事もあるんだね」


 「これすっごく美味しいですね! こんな肉が世の中にあるなんて……! 王侯貴族ですら食べた事が無いんじゃないでしょうか! こんなに美味しいお肉初めてです!!」


 「ああ、これは美味いな! ここまで肉々しい肉は初めてかもしれぬ。かつての時代にいた美味い肉の魔物というのは、案外あのヘビーブルとかいう魔物かもしれんな。少なくとも私は、あの魔物を外で見た事が無い」


 「久しぶりだが美味いな。ガッツリ肉という食感と味に重さを感じるんだけど、雄の肉なんだよなー、コレ。普通は柔らかい雌の肉か子牛の肉なんかが好まれるが、コイツはガッシリした雄の肉なのにやたらに美味いっていう、何とも不思議な肉だからなあ」


 「そうなのか? ふむ、そういう事は考えた事がなかったが、たしかに猛烈に不味い肉はたまにあったな。皮と間違っておるのではないかという肉はあったし、あまりの不味さに食べるのを止めた肉もあったな」


 「私はそこまで不味い肉というのは食べた事がありませんけど、ここまで美味しい物も無いです。信じられないほどに美味しいですけど、30層なんて獲りに来れません。普通なら」


 「確かに実力がないと無理であろうな、ここまで来るのは。仮に来たとしても、この層の魔物に勝てるかどうかは疑問があるがな。デスボーアとかいう猪はヤスリのような牙を持っておるし、ヘビーブルの体重を乗せた突進の威力は凄まじい」


 「アーマーベアとかいう熊はとんでもない毛と皮をしてますし、ソードグリズリーの方は鉄を容易く切り裂く爪を持っている。どう考えても身体強化が使えないと勝てませんね。素の能力で勝てるのはドラゴンぐらいでは?」


 「分からん。ここはダンジョンだし無限に出てくる事を考えたら、いつか殺されるかもしれん。我等ドラゴンは強いが、その分体が大きい。四方八方から攻められれば耐えられんと思う」


 「ヘビーブルが特に厄介だと思う。あの重い体重で突進してくるし、足が太くてパワーが凄いから。あれで体当たりされると肉とか内臓まで響くと思うよ? その間にソードグリズリーに切り裂かれるかも」


 「魔力を纏わせて爪を強化して切り裂いてくるもんね。だから鉄の鎧がまったく役に立たないんだし。アレは回避するしかないから、普通のドラゴンの鱗じゃ難しいかも」



 超魔鉄で切れたぐらいだからなー。ソードグリズリーの爪にも耐えられないんじゃないかね?。


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