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まずは子供達の装備が先なので、前の星でも作った通りソフトレザーとして作り上げる。そこから【圧縮】などを使い無理矢理固めてハードレザーを作り出す。当然ながら普通の方法とは違うので、モドキにしかならないが気にする事は無い。
これでも十分な防御力が得られるし、無理に正規の方法をとらなくてもいいだろう。それはともかく、子供達の革鎧、剣帯、脛当てを作って渡していく。今までの物は回収し、アイテムバッグの中へ。
最後にきぐるみを作り、子供達に着させて確かめれば終了だ。最初は着て遊んでいたが、すぐに暑くなって脱いでいた。そりゃ今の時季は暑いだろうよ。子供達は脱いだ後で【冷風】の魔法を自分で使い涼んでいる。
次はアリシアとウェルだが、二人はブーツもだからそれなりに革の量が必要になる。更には所々を超魔鉄で補強するので、それも含めれば今までのブーツよりも重くなる。まあそれ自体は仕方のない事であり我慢してもらおう。
最後に二人用のきぐるみも作ったが、二人は全く理解していない。なので、それは寒い時季に着る為の物だと伝えておく。防御力もそれなりにあるので防具としても使えるが、本当の使い道は防寒具だ。
「別にこんな物が無くても暮らしていけるぞ? もちろん暖かいのだろうから感謝するが、これが必要な程なのか? とは思う。まあ、それは私がドラゴンだからかもしれんが……」
「そうかもしれないが、これはダンジョン内の雪山対策でもある。ダンジョンの地形には一面雪だらけで猛吹雪の地形や、一面氷だらけで驚くほど寒い地形などがあるんだよ。防寒具が無いと耐えられないくらい寒い地形がな」
「夜の砂漠も寒かったですけど、アレよりもですか……。まあ、確かに寒い時季には稀に肌を刺すほど寒くなる事はありますけど、そんな事は滅多にありません。北の方に行くと寒いとは聞いた事がありますが……」
「という事は、この辺りは暖かい地方なのか。まあ、暖かろうが寒かろうが熊のきぐるみは防寒具として必ず作るんだけどな。その為にあれほど大量に狩ってきたんだし。後は俺の分だが、これは夕食後でいいか」
そう言って、皆と共に食堂へと移動する。中銅貨7枚を支払って食事を注文したら、席に座ってゆっくりと待つ。周囲から聞こえてくるのは武術大会の話ばかりだ。他の話題はないもんかね?。
「昨日はどうだった? 私の方はそれなりって感じだったけど、この時期は客が多い反面おかしな客も多いわ。昨日も女将さんに言って出禁にしてもらったけど、暴力を振るうヤツが出てくるのよねー」
「私の方は暴力じゃなくておかしな客よ。ずーっと犬みたいに舐めてるヤツとか、何がしたいのかサッパリ分からない。後で綺麗にするのに時間掛けなきゃいけないから止めてほしいのよね」
「私の方は嫌な客は来なかったけど、男の方には来たみたい。何かすっごい大きい客だったらしくて大変だったそうよ。裂けるまではいかなかったらしいけど、その一人の客で限界だったみたい。お尻が痛いって呻いてたわ」
「ああ、たまにいる大きな客かー、アレもキツいのよね。いちいち相手するのも面倒だけど、お客として来ている以上は丁寧にしなきゃいけないし、大きいだけだから文句もねえ……」
武術大会の時期には色んな客が来るんだろうが、何て話を食堂でしてるんだ。アリシアとウェルは若干聞き耳立ててるっぽいけど、俺はこれ以上聞くつもりはないのでスルーします。愚痴は別の所でお願いしたいもんだ。
食事後、宿の部屋に戻って今度は自分の分だ。革鎧、剣帯、脛当て、ブーツ。最後にきぐるみを作り終えたら着て、体を動かしつつ1つ1つ確認する。雪山や氷原でも動けなきゃいけないので、体が動かし難いと困るからな。
よしよし上手く出来てる。そう思い脱ごうとすると、ダリアがジャンプして引っ付いてきた。爪を立ててしがみ付いてるみたいだが、いったい何がしたいのか分からない。下に落ちたら再びジャンプしてしがみ付く。……単に遊んでるだけか。
さっさと脱いでダリアの遊びを終わらせると、気に入らなかったのか胡坐の中に入ってきてペシペシ叩いてくる。そんなに面白そうに見えなかったけど、何がしたかったのやら? そのダリアさんは現在太腿に体を擦り付けたりして遊んでいる。
まあ、早速興味は別に移ったので猫のきまぐれだったのだろう。特に気にしなくてもいいみたいだから、さっさと子供達の布団を敷くか。そう思い子供達の布団を敷いて準備を終えると、首から降りてコロコロ転がるフヨウ。今日はもう寝るのかな?。
微動だにしなくなったフヨウはそのまま置いておき、魔法の練習をしている子供達の様子を見る。なかなか上手く使えているし上達しているから、そろそろ攻撃系の上の魔法を教えた方が良いだろうか? もしくは浄化魔法を更に教えるべきかな?。
少々悩みながらも、アリシアとウェルの間違っている部分を指摘する。二人も魔法の練習をしているのだが、当然のように子供達より下手だ。特にウェルは長く生きてきた筈だが、惰性で魔法を使っていたのか大して上手くない。
「使えれば良いという感じだったからな、上を目指して努力した事など無い。そもそも教えてくれる者も居なかったのだ。群れの連中でさえ使えればいいというだけで、上達する方法などを知っていた訳ではない」
やはりドラゴンの群れとてそんなものか。子供達がウトウトしているので布団に寝かせ、二人を返り討ちにして寝かせる。部屋と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。
……あっ、忘れてた。ベッドから起き上がった俺は、ソードグリズリーの爪を太刀にして持ち手に革を巻き、木で鞘を作ってアイテムバッグに収納する。次に再びソードグリズリーの爪を使って十手を作ったら仕舞う。
全部で3つしか作れなかったが良いだろう。革を持ち手に巻いたら、これでようやく眠れる。忘れて寝るとこだったよ、危ない危ない。それじゃあ、改めておやすみなさい。
<呪いの星46日目>
おはようございます。今日もダンジョン攻略ですが、特に問題となる事はありません。昨日ソードグリズリーの爪で太刀を作ったのは斬撃武器が必要な場合に使う為です。そこまで必要としない可能性が高いですが、持っていて損はありません。
流石に強化率で言えばソードグリズリーの爪の方が上なんだよなぁ。どこまでいっても鉄だからさ、超魔鉄は。ただし爪の方は粘りが無いからポッキリいくけど、それでも通常のドラゴン程度ならあっさり切り裂くだろう。超魔鉄で斬れるんだし。
朝の日課を終わらせて紅茶を淹れていると蓮が起きた。俺は見送りながら紅茶をコップに入れて飲んでいると、戻ってきた蓮も紅茶をコップに入れている。少々危なっかしい手つきだが、【念動】を使う準備をしながら見守る。
危なげながらも紅茶を入れた蓮は、ハチミツを混ぜた後で太腿の上に座ってきた。そのまま蓮とゆっくりした時間を過ごす。今日は珍しく会話が無いが、たまには蓮とこんな日があっていいだろう。
そう思っていたら体重を預けてきて寝始めた。まあ、好きにしてくれ。皆もまだ寝ているので二度寝はセーフだしな。そんな事を考えていると、今度はイデアが起きて部屋を出る。するとダリアが起きて近付いてきた。
水皿に神水を入れて出してやると、ゆっくりと飲みつつボーッとしている。時折寝ている蓮をチラリと見てはまた神水を飲むダリアさん。何かあったのだろうか?。
そう思ったら蓮の膝の上に乗り、丸まって寝始めた。蓮は……大丈夫、起きなかったようだ。そうしているとイデアが戻ってきたが、それと同時にアリシアとウェルも起きたようだ。今日は珍しくフヨウが最後か。
ま、だからと言って何かある訳じゃないんだが。




