0180
帰りながら色々話していたんだが、村が近くなってきたので大きな声では話せない。バカどもの所為で既に夕方だ。周りにはそれなりに傭兵が居て、聞かれるかもしれない。
「今の所は何もしなくていいと思う。それが責任を取らせるには1番良い」
「どういう事なんだい?」
「何もしなければ、このまま仕事をさせるだろう? そうすると失敗が増えていく。失敗が増えると、何故失敗するのか調べる事になり発覚する」
「つまり、どっちにも責任を取らせようって事だね? ギルドにも里にも」
「あー、成る程。調べた際にギルドの不手際も発覚するんですね?」
「特に総長の不手際だ。組織の頂点はそれだけ重い責任を背負うからな。知りません、分かりません、記憶にございませんは許されない!」
「妙に強く言い切ったけど、何かあったのかねぇ……」
「多分”故郷”であったんだと思いますよ」
「私もそう思うわ。記憶にございません、何て言い回しは聞いた事がないもの」
「二股かけたり、浮気や不倫してる人が言ってるのは聞いた事があるけどね」
「それは、どうなんだ? 記憶が無いと言い訳も出来ないし、辻褄を合わせる事も出来ないと思うんだが?」
「そうだよ。言ってる方は、その場凌ぎの為に言ってるだけさ。追い詰められるとボロが出るものなんだよ。だから言い訳も出来なくなって”記憶に無い”って言い出すのさ」
「記憶に無いと言い出す前に、散々言い訳をしているのにか? 私には理解出来ない」
「その場を凌ぐ事しか考えていない奴は、そんなものさ。そういう男女はいっぱい見てきたよ」
流石に650年も生きてれば、そんな奴等は山ほど見てきただろうな。入り口の門番に登録証を出して、村の中に入る。そのまま解体所へ行き査定を頼むと、いつもの2人が来た。
「今日も沢山の獲物が狩れた様だな。しかも邪生が随分多いな。もしや山が邪気で汚染されているのか?」
「そんな感じじゃなかったね。むしろ別のところから来たのを食ったのか、流れてきたのか。多分それで間違ってないと思うよ」
「それならいいんだが、邪生が増えるというのも怖いものだからな。傭兵が間に合えばいいが、間に合わねば村の者に被害が出てしまう」
「こちらはゴブリン4、オーク7、フォレスウルフ5、スマッシュボーア、レッドパンサー2、ソードグリズリーです」
「うむ。こちらはゴブリンの邪生2、レッドパンサーの邪生、ウィンドディアーの邪生、ソードグリスリーの邪生が2だ」
「しかし、改めて見ると驚きだな。私はここまで大量の邪生を1度に見たのは初めてだ」
「何だかアタシ達って、ズレてきてないかい……?」
「私も同じ事を思いました……」
「アルドが居るから、邪生の居る方向とかが分かるものね」
「更にアルドは強力な【浄化魔法】が使えるしね。そうなると邪生は単なるカモにしかならないから、大量に見る機会は増えるんだよね」
「全て纏めて、金貨17枚、大銀貨24枚、銀貨25枚、大銅貨17枚となるが、それで良いか?」
「勿論それでいいよ」
そのまま査定を終えて登録証を返してもらい、木札と売却金を受け取る。金貨18枚、大銀貨5枚、銀貨25枚、大銅貨17枚で受け取り、ギルドへ行きながら皆で分ける。
俺の取り分はいつもと違い、金貨3枚、銀貨15枚、大銅貨217枚を受け取った。大銅貨を増やしたかったのでこういう形になった。皆は、金貨3枚と大銀貨1枚ずつだ。
ギルドに入りミュウさんの所の列に並ぶ。どの列も人の数は大して変わらないので、違いは特に無い。にも関わらず、絡んでくるバカがまた出た。面倒臭いな、いい加減にしろよ。
「おい! お前! そんなに女を侍らせながら、受付嬢まで狙ってんのか? その女どもが要らないなら、オレに寄越せよ!」
何なんだこの女は。……どうも見た感じ1人だけのようだ。珍しいな、1人で喧嘩売ってくる奴は……。大体は群れて調子に乗ってる奴が、イキがって喧嘩を売ってくるんだが……。
「あん? オレの言う事が聞こえなかったのか? さっさと、そこの女を置い……」
「なかなか良い度胸をしてますね、ウェリア? 貴女に自殺願望があったとは知りませんでしたよ……」
「……ハハハ。や、やだなぁ。シュライアさんに喧嘩を売ったワケじゃ……」
「私の主様に喧嘩を売っておいて、なぁなぁで済ませるとでも思っているんですか? それとも、今すぐ殺してくれと言っているのですか?」
「申し訳ありませんでしたーーっ!!!」
スゲー。見事なジャンピング土下座だ。日本でもかなりの高得点が出るんじゃないかな? それぐらい綺麗なジャンピング土下座だった。しかし、誰なんだろうな? この女性は。
シュラの知り合いっぽいが、ダナは知らなさそうなんだよな。まぁ、ダナはこの村で100年くらいギルドマスターをしてたから。その間に知り合ったのかね?。
「シュラ……この馬人族は誰だい?」
「……はぁ。この者の名はウェリア。男だろうと女だろうと見境無く喰う奴ですよ……」
「まぁ~、祖母と通じ合えそうな子ね。私は遠慮するけれど」
「私も遠慮するね。そもそも私は伴侶意外に興味が無いから、男女以前の問題だけど」
「それは楽しいのか……? 男も女も色々だし一度や二度で理解出来る程、簡単ではないだろう」
「そういう高尚な考えは一切無いのですよ、この駄馬には!」
「幾らなんでも酷いんじゃないですか!?」
「その日捕まえた男の家に行って、その妻と3人でヤるような奴は駄馬でいいんですよ!」
「「「「「………」」」」」
「何をやってるんだ、コイツは? 幾らなんでも……頭の中には性欲しかないのか?」
「ぐふっ!?」
「流石にないわー、これはない。幾らなんでも酷すぎる。ここまで酷い奴は初めて見たな……」
「こいつは駄馬の癖にランク9なんですよ。傭兵ギルドの目は節穴なんですかね?」
「「「「「ランク9!?」」」」」
「あー……ハハハ………」
「ランクを上げる為の貴族からの依頼で、その依頼人すら喰って逃げた女なんですよ。コイツは!」
「「「「「うわぁ……」」」」」
こいつ、ある意味凄いな。この貴族が権力を持つ世の中で、貴族を喰って逃げるとか尋常じゃない。それに、今もまだ生きているって事は、逃げ切ったか許されたかのどっちかだぞ。
無茶苦茶な奴だな。よくもまぁ、そんな人生歩めるもんだ。そこに痺れもしなければ憧れもしないが、凄いのは認める。絶対に真似したくないし、面倒はお断りだがな。
「シュライアさん以外も駄目ですかね? ……ヘヘヘ」
「聞けばいいんじゃないですか? ただし、死を覚悟して聞きなさい」
「ヘッ!? それはどういう……」
「……面倒ですね。私の右に居るのがダナ。<剣の踊り子>と言えば分かりますか? こちらがメル。この村の前村長で魔女族です。貴女より遥かに強いですよ?」
「いえ……そのー……オレはこっちの方が……」
「私は伴侶以外に興味が無いと言ったろう……もう1つ言うと君に興味が全く湧かない」
「こりゃ、厳しい。でも1度ベッドでオレと戦うと、病み付きになりますよ?」
「それも無いね。君の実力的に大した事はなさそうだ。【闘気術】も大して扱えそうにないしね」
「いえいえ、そういう戦いじゃなくてですね……」
「そういう意味じゃないのと、駄馬はやっぱり駄馬ですね」
「あのですね、シュライアさん! オレの事を……」
「駄馬が言い寄ってるのは、私の姉上ですよ?」
「駄馬って言うの……は……?」
「私はシュライアの姉で、アルメアと言うんだよ」
「申し訳ありませんでしたーーーっ!!!」
またも綺麗なジャンピング土下座。何だろうな? さっきからやってるこのコント。いつになったら終わるんだろう。
……あっ、手続き終わりました? 済みませんね、今日も獲物が多くて。……うん? アレですか? 放っといていいんじゃないですか。知らないけど。
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0180終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨71枚
大銀貨92枚
銀貨69枚
大銅貨326枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ