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その後は夕方までカナイス達の練習を看て、俺達は近衛の練習場を後にした。何故か皇太子を始め、皇族全員に教える事になったが構うまい。特に気にする必要も無いし、センスや才能についてもさほど変わらなかった。ある意味で正しく兄弟姉妹だと思う。
平民街へと戻ってきた俺達は、食堂へ行き中銅貨7枚を支払って夕食を食べる。相変わらず戦争の話が多く、特に気になる噂なども無い。さっさと食事を終えた俺達は宿へと戻る。
受付に居た店主に部屋を聞き、案内された部屋に入ると一息吐く。皆も一息吐くというか、やっと落ち着けた感じのようだ。いちいち面倒だったもんなぁ、皇族は。
「まあ、王族や皇族というのは面倒ではありますけどね、それにしても皇太子殿下が出て来られるとは思いませんでした。私の事はスルーされたので良かったですけど、いずれは話題に出そうです」
「とはいえ、元王族であるのだから仕方あるまい。アリシアの祖国に対する何かとして利用する事は無かろうし、そこまで警戒する必要は無いと思うぞ? 帝国としては、戦争をどう終わらせるかの方に集中せざるを得んであろうしな」
「でしょうね。色々な事があって戦争をしてたんでしょうが、怨みと憎しみは早々無くなったりしないでしょう。乗り越えるのにどれほどの時間が掛かるのやら。大変だとは思いますが、他人事ですしね」
そんな事を話している横で、眠たくなった子供達を布団に寝かせる。2匹を左右に寝かせ、【昏睡】を使ったら次は2人の番だ。さっさと撃沈して寝かせ、綺麗に【浄化】したら俺も寝よう。それじゃあ、おやすみなさい
………夜中に襲ってくるって事は、殺されたいって事だな。俺は容赦せんぞ。
宿の玄関の鍵を開けて強引に入ってくる奴等がいるんだが、何となくは分かる。この宿に借金を払えと言っていた奴等だろう。見張りなども置く事なく入ってきたので、ただのチンピラとして対処するか。間違って無いだろうし。
入ってきた7人を即座に【衝気】で気絶させ、【念動】で浮かせたらその場に留める。次に隠密の4つ技を使い部屋を出たら、玄関近くまで行く。後は【止音】を使いつつ【白痴】と【忘我】を使っての尋問だ。
……下らないな。どうもスラムで一番勢力の大きい奴等だったらしいが、徐々にスラムの外にまで手を出し始めていたようだ。幾つかの店を借金のカタに奪ったようだが、次に狙っていたのがこの宿だった。どうりで俺が金を払うと多くの人が喜ぶ筈だ。明日は我が身だったのか。
事情を理解した俺はさっさと侵入者の首を刎ねてアイテムバッグに収納する。血の跡なども綺麗に【浄化】したら、次はスラムへと移動。その前に玄関を綺麗に直し、鍵もきちんとかけておく。
部屋に戻った俺は窓から外へと出て、近くにあるスラムへと入る。勢力としては一番だが全てでは無いし、スラムの連中だからといって皆殺しは少々マズい。仕方なく聞いては忘れさせ、聞いては首を刎ねて収納する。
それらを繰り返していき、スラムの7割の者を掃除した辺りでようやくアジトに来た。見張りが一人居るがさっさと首を刎ねて中へと侵入。手当たり次第に殺戮していく。ここには組織の連中しかいないから楽でいい。
途中で金を取り立てていた奴が居たが、起こす事も無く首を刎ねる。最後に組織のボスを始末したら終了。特に見所も無く終わったなあ、現実なんてこんなものだけどさ。だってチンピラ組織だし。
全ての死体を収納したら、金銭を全て回収していく。小金貨10枚も戻ってくる形になったが、それは気にしないでおこう。金銭を全て回収しながら戻っていると、借金の証文もあったので全て収納していく。
アジトの前まで戻ったら、スラム地区から帝都の外へ。壁があるものの俺なら楽勝で越えられる。外に出たら遠く離れ、ある程度の距離を進んだら穴を掘る。後はいつも通りに死体を処理していくだけだ。
さっさと【浄炎】で焼いていき、呪いを【浄化】しつつ死体の処理を進める。帝都のスラム最大の組織であり、7割以上殺したが200人には届いていない。多いか少ないかで言えばどうなんだろう? それなりだとは思うんだが……。
途中で証文なども加えながら焼いていき、骨や灰が溜まったら埋めて次へ。また穴を掘り死体を放り込んで焼いていく。繰り返し行い、終わったら今度は鉄の武具を取り出す。それなりには武器を持って武装していた勢力だったし、アジトにも武器庫があったんだ。
その鉄を精錬し、要らない不純物を捨ててから穴を埋める。後は鉄のインゴットを超魔鉄に変えてアイテムバッグに収納すれば終わり。いやー長かったなー。早く帰って寝よう。
体や服などを念入りに【浄化】した俺は、帝都の宿へと戻り、さっさとベッドに横になるのだった。どれだけ寝られるか分からないが、少しでも寝ておかないと明日が辛い。
それじゃあ、おやすみなさい。
<呪いの星38日目>
おはようございます。結構眠たいですが、仕方ありません。朝の日課を終わらせて、紅茶を淹れたら昨日のお金を数えよう。やるべき事はやっておかないとな。
小銅貨が191枚、中銅貨628枚、大銅貨が311枚、小銀貨が322枚、中銀貨が132枚、大銀貨が96枚、小金貨が33枚、中金貨が21枚、大金貨が2枚。これで全てだが、割と持ってた方ではなかろうか?。
「確かにな。それなりに持っていたのであろう、全部奪われておるが……」
「でも、前の星でも同じだったよ? 皆を襲おうとすると、アルドが夜中に全部倒しちゃうんだー。で、朝からお金を数えてるの。今までに何回もあったもん」
「そうですね。アルドさんはいつも「襲ってくるバカが悪い」と言っていました。そもそも人を襲うって普通に犯罪ですしね」
「それはそうなんですけどねー……手ぐすね引いて待っているのは、何か違うような気がするんですけど?」
「例え罠であっても、掛かったバカが悪い。そもそも罠に掛かるという事は、犯罪を犯したという事だ。同情の余地は無い」
そんな話をしつつお金を仕舞っていると、玄関に近衛騎士がやってきた。皆にその事を話して片付け、玄関へ出ると近衛の練習場へ案内しようとするので、朝食を食べていない事を話す。
すると、近衛の建物で朝食は食べられるらしい。なので黙ってついて行く。昨日と同じ左右に近衛の建物がある場所に来た。昨日は右にある練習場へ行ったんだが、朝食は左の建物みたいだ。練習場は平民街から見て右なので、帝城から見たら左だな。
左はどうやら近衛の寮などらしい。右にも寮はあるそうだが、そちらは下っ端と新人用の寮なんだそうだ。そんな話を聞きながら食堂に行き、中銅貨7枚を支払って朝食を食べる。町と違って量が多いな。体を作る為かね?。
それなりの量の朝食をとったら、右の練習場に行きカナイスが来るのを待つ。皇族にも教えているが、あくまでも俺の依頼者はカナイスだからな。依頼者が先なのは当然の事だ。テリオスという名の第二皇子が既に居るが、俺は練習を始めない。
昨日蓮に股間を打たれた騎士が何か言いたそうにしているが、俺が取り合う事は無い。あくまでも依頼者優先だ、俺は依頼を請けているんだからな。他の皇族はオマケでしかないし、カナイスが頼んだから教えているだけだ。
というより、第二皇子が気にしていないのに何故騎士が鬱陶しいんだ? 第二皇子を利用して偉そうにしたいだけか?。
そう言うと視線を逸らしたが、その顔は憤怒に塗れている。どうやら図星だったらしいな。第二皇子がどう見ているかも視界に入っていないらしい。
カナイスがやってきたので練習開始だ。今日はどこまで上達できるか分からないが、頑張ってもらおう。




