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 カナイスや近衛が立ち上がって挨拶しているが、俺達は座ったまま挨拶した。そもそも昼食を食べている所へきて、昼食よりも自分を優先しろなど礼儀知らずでしかない。押し掛けてきたのは向こうであってこっちじゃない。ついでに俺達は狩人だ。



 「いや、そうですけど……皇太子殿下もおられるのですが? 流石にその態度はどうかと思いますよ?」


 「この国の者にとっての皇太子殿下だ。俺達は自由民であり、この国の者じゃない。例えばだが、お前さん達はドラゴンに頭を垂れろと言うのか? ……そういう事だよ。相手が力ある者だと何も言わないんだろ? ならその程度なんだからガタガタ言うな」


 「「「………」」」


 「アルドの言う事はたしかに間違っておらんな。私はドラゴンだし、各国の王族に頭を下げろなどとは言われた事が無い。相手を舐めておるから頭を下げろと言うておるだけにしかならん。それがお主らのやっておる事だ」


 「とはいえドラゴンにはどうこうとは言えませんし、仕方ないのでは? ……まあ、だからこそアルドに先程のように言われるのでしょうけど。国を敵に回して本当に勝ってしまう相手には言えませんよね」


 「それはそうなんですが………いえ、国の威光にも限度があるという事ですか。確かに仰る通り、自由民に対して国がどうこうと言っても仕方がないのでしょう。ですが、依頼などに関して困るのでは?」


 「俺達はまったく困らないな。そもそもランクを上げる気が無い。狩人ギルドに所属した理由は、町に入る際の税が鬱陶しいからというぐらいだ。それ以外に理由が無い。狩人で無くなっても、面倒な税を払えば済むだけでしかないんだよ」


 「……まあ、君達の言い分は分かった。そもそも私は立ち上がれとも、頭を垂れろとも言ってないのだがね? ああ、私はウィルナイト帝国皇太子、ディランドロス・トルド・ウィルナイトだ」


 「僕はテリオス・トルド・ウィルナイト」


 「私はフェルデリア・セロン・ウィルナイトと申します」


 「私はカルディナ・セロン・ウィルナイトと申します」


 「俺達はカナイスから依頼を請けた狩人。俺の名前はアルドゥラム」


 「蓮はね、土御門蓮っていうの」


 「ボクはイディアルマです」


 「私はアリシア・ロード……なんでしたっけ? えっとロードエルネムの名前をもじったんだからー……えーっと……」


 「何をやっておるのやら? 私はウェルディランカだ」


 「それで……君達がこんな所で昼食を食べているのは横に置いておこう。いったい君達は何をしているんだい? 別に近衛の練習場を使うなとは言わないが、依頼と言っていたが……」


 「ハッ! 現在カナイス様が狩人の皆さんより教えを乞うております。………主に身体強化というものと、足運びや体重移動? というものを習っており、その最中に昼食となりました!」


 「……身体強化? ………ふむ、聞いた事が無いね。何だか使えれば凄そうだけど、本当にそんなものが?」


 「はっ。カナイス様はそこにおられるレンという子に対し、剣を持って試合を行われました。レンという子は無手で武器を持っていなかったのですが、至極あっさり負けましてございます」


 「プッ! イル……こんな小さな子に負けたのかい? 流石に今年の武術大会は棄権した方が良いんじゃないかと思うけどね」


 「ムッ! そこのヒト、蓮と勝負する? カナイスと同じ条件でいいよ? それでも蓮の相手にはならないからね!」


 「へぇ……まあ、いいけど。死んでも文句は言わないようにね」


 「うん? 蓮が? ……あはははは、ないない。蓮が死ぬなんてあり得ないから。もし死ぬならそっちだよ」


 「………」



 テリオスとかいう第二皇子と食事の終わっていた蓮は、カナイスの時と同じく6メートル離れて対峙する。第二皇子は真剣を持ち、蓮は何も持ってはいない。それでも蓮の勝ちは揺らがないので、俺は見る事すらせず食事の片付けをしている。



 「君は見なくていいのかい? テリオスは私よりも強いし、武に傾倒しているからね。あの小さな子がどう勝つのかは分からないけど、あまり実体の無い自信をつけさせるのは良くないと思うよ?」


 「何を勘違いしているのか知らないが、アレが百回挑んでも百回とも蓮に負ける。その程度の実力しか持っていない。俺達からすればザコが調子に乗るな、そう言うだけだ。本来、戦いの場に皇子などという立場が入る余地は無い。見ていればそれが分かる」


 「「「………」」」



 蓮はカナイスの時と同じくテクテク歩いて行き、第二皇子はカナイスと同じく正眼に構えている。蓮が剣の範囲に入った瞬間始動したが、それでも蓮の方が圧倒的に速い。カナイスと同じく脛を蹴り、第二皇子は痛みで跳び上がった。



 「うむ、文句なく蓮の勝ちだ。そもそも真剣を持っていたところで当たらなければ何の意味も無い。剣を持っているからといって絶対的な有利にはならん。そもそも相当に手加減されておるしな」


 「づっ、つう………手加減されているとは、どういう事だ!! 愚弄しているのか!!!」


 「愚弄も何も、手加減されていなければ、今ごろそなたは死んでおるぞ? 蓮が蹴ったのは手加減して蹴っておるし、そもそも蓮は複数の魔法が使える。それらを駆使すればそなたを殺す事など容易いのだ」


 「……魔法?」


 「そうだ。そもそもアルドは魔法は魔法、剣は剣として教えるが、それでも戦闘中に両方使う事も想定して教えておる。そこの睨んでおる近衛騎士よ出てこい。そして先程の第二皇子の場所に立て。蓮、死なぬ程度の魔法を頼む」


 「りょーかい!」



 どうも第二皇子の取り巻きみたいな近衛騎士が睨んでいたので、そいつを利用する気のようだ。実はアリシアもウェルも蓮やイデアがどういう魔法を使うのかを知っている。二人ともが聞いた瞬間大笑いしたんだよな、女性だから。アレの痛みは男にしか分からないからなー。


 試合が始まると先程とは違い、近衛騎士が走りこんできたけど、途中で【土柱】の魔法を股間に喰らって悶絶している。皇子も皇女もドン引きしているが、蓮は「いえーい!」と言って喜んでいた。



 「まあ、こうなるわな。俺は蓮にもイデアにも容赦なく弱点を狙えと教えている。戦場で手加減する阿呆などいない。こんな場所での手合わせだろうが、戦場での命のやりとりだろうが同じだ。緊張感を持って相手を舐めず、正しく戦いに挑む。それは当たり前の事だぞ。第二皇子が負けたのが気にいらんのか知らんが、目が曇っている相手なんぞあんなもんだ」


 「そういえば……戦場でのってたまに仰いますけど、戦争に出た事があるんですか?」


 「ここではない所でだが、普通にあるぞ。そもそも子供達でさえ、良い悪いは別にして乱戦を何度も経験してきている。その中で矢を受けた事もな。だからこそ子供達は戦いそのものを舐めたりなどしない」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「子供達は5歳だが、経験してきた事が違いすぎるのだ。命を危険に晒して学んできた事は大きいという事であろう。そなたらは何処までいっても皇族だ、周りに助けてくれる者がおる。その状況で、果たして正しく学べておるのであろうかな?」


 「ま、これ以上説教する理由も無いからしないけど、理解はしておくようにな。例え子供でも、命を危険に晒してきた者と、守ってもらえて当たり前の者の経験は同じじゃない。その両者が似たような事をやっていてもな、絶対に同じにはならないんだ」



 股間を強打された騎士もマシになったのか、立ち上がって第二皇子近くまで歩いてきて謝っている。第二皇子も特に怒っていないみたいだが、自分でも避けられないからかね? 手加減されていて良かったと理解したか?。


 蓮は既に俺達の所にいて、壊していない土の椅子に座っている。今は神水を飲んでゆっくりしているが、そろそろカナイス達の練習を始めるか。


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