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 イデアもトイレに行き、ダリアとフヨウの水皿に神水を入れてやる。未だにカナイス達には神水の説明とかは一切していないが、これからもする気は無い。帝国の者である以上、取り込もうとする可能性は十分にあるからな。


 悪いが一国の利益の為に神の権能を使う気は無い。当たり前の事ではあるが、そんな事をすれば浄神に何をされるか分からないので力を使ってでも脱出だ。ある程度を殺す事になっても、神の権能を欲の為に使うのは避けないといけない。


 俺達が美味しい物を食べたりする程度なら問題は無いが、国となれば必ずや欲の為に使うからな。まあ、そんな事は横に置いておこう。それよりも、戻ってきたアリシアとイデアが紅茶を入れきったので、そろそろ仕舞うか。


 部屋を片付けて綺麗にしつつ、ゆっくりした後で準備を整えさせる。終わったら部屋を出るんだが、どうやらカナイスは既に部屋から全てを持って来ていたらしい。宿の入り口で近衛騎士と合流し、食堂に行って中銅貨7枚を支払う。


 朝食を食べたらさっさと町を出て、人力車を出したら引っ張って行く。今日も西へと進んで行き、ベス村、ポルイ村を越えた所で昼休憩を行う。今日の昼は簡単に済ませる為、アリシアとウェルに全粒粉と神水と塩を練ってチャパティを作ってもらう。


 その横で肉を細かくしてかす肉と合わせて炒めていく。火が通ったら魚醤と灰持酒と砂糖を混ぜたタレを搦めて完成。蓮とイデアにはスープを作ってもらい、俺はその横でチャパティを焼いていく。もちろんフライパンでだ。なので一気には焼けない


 焼けたチャパティに肉と葉物野菜を挟み、完成したらさっさと出す。既にスープも完成しているので、焼けたらすぐに食べてもらい新しいチャパティを焼いていく。


 ……やっと最後の俺の分が焼けた。それじゃあ、いただきます。



 「最初は齧り付くってどうかと思いましたけど、これはこれで美味しいですね。何かのソースが絡んでいて、それが濃い目なんですけど、野菜の水分と絡むと薄くなったりして面白い料理です」


 「手軽に食べられるのが良いですよね、味も美味しいし。しかしカナイスが言う程に濃い味ですかね? 別にそこまでではないような気がするんですが、もしかして濃い味に慣れてしまっているんでしょうか?」


 「そうじゃなくて、カナイスが帝国の人だからだと思う。何か帝国の料理って薄い味の物、特にお塩が少なめの物が多いからじゃない? 魚醤は沢山お塩を使って作ってるから、お塩の味が濃いの」


 「まあ、アルドさんが使ってた魚醤は、言うなれば魚の塩漬けですからね。塩分が濃いのは当たり前ですよ。それでも水を使って薄めて使うのが普通ですから、そこまで濃い味じゃないと思いますけど……」


 「成る程な、国の違いか。子供の頃から薄味だと、多少濃い目でも濃く感じるであろうな。逆に濃い味に慣れておると、少し薄めでも極端に薄く感じるのであろう。もちろん限度はあろうがな」


 「我が国は塩が不足している期間が長かった所為で、薄味の料理が当たり前になっているという事ですか……。それはそれで他国から賓客を招いた際に困りますね。これも陛下に奏上しておいた方が良さそうです」


 「そうですな。厨房の者達が五月蝿いかもしれませんが、他国からの客に不愉快な思いをさせておる可能性を言えば、流石にあの者等も黙りましょう。自分達が良いと思う物と、他国の者が良いと思う物は別ですからな」


 「うむ、美味かった」



 相変わらず一人、あまり喋らない方はコレだ。食べるのが好きなのかね? 悪い事じゃないが、一人だけズレてる気がするけどなー。まあ、とりあえず俺も食い終わったので、さっさと片付けて出発しよう。


 綺麗にして焼き場などを壊したら、準備を整えて出発する。ガラゴロと引っ張りながら進み、帝都の手前にあるイゲート町に着いた。少し手前で人力車から降ろし、俺とアリシアはアイテムバッグに仕舞い町へと近付いていく。


 時間が時間なので待たされる事も無く門を通過し、宿へ移動して部屋をとる。中銅貨7枚で3人部屋をとり、小銀貨1枚を握らせて中庭を使わせてもらう。今日も変わらず、最小の身体強化をしつつの歩きと走りだ。


 まずはこれが出来なければ始まらない。ここから体を動かしながら、戦闘をしながらの身体強化になる。カナイスは少しずつだが距離は伸びているが、これからの事を考えると身体強化の練習だけをしている訳にはいかない。


 なので身体強化の練習をさせつつ、足運びと体重移動の訓練を並行してさせる。何故こんな事をさせるのかの実演は、近衛騎士に攻撃させる事で行う。



 「このように、自分では全力を出しているつもりでも、体を動かすにつれ全力では無くなる。正しく全力で動くには、正しい動きを学ぶしかない。まずは足運びと体重移動だが、重心移動に体の連動のさせ方なども本来なら教えるんだが……」


 「どれを教えても間に合わぬであろうな。だから足運びと体重移動なのか。まあ、重心をあえてズラす動きや、体の各所を連動させ力を正しく伝える技術は難しい。あれには相当の修練が必要であろう」


 「そもそも私達どころか、子供達でさえ出来てませんよ? ある程度は出来ると聞きましたけど、ある程度でも凄いですからねー。あれが出来る様になるまで、どれぐらいかかるのやら」


 「出来るようになれば達人に仲間入りであろうな。そも、武器を振るう前にやるべき練習が山のようにあるとは思わなんだわ。殆どの者はそれも理解せずに強いと錯覚しておるのであろうがな。アルドがやっておるのは極みの技の一つだ」


 「「「………」」」


 「狩人に教えを乞うたら、予想以上の技術を教えられてビックリしてる感じですかね?」


 「で、あろうな。とはいえ、アルドの言う通り、教えたところで出来るかは別だ。ならば教えても問題無いのであろう。どうせ10日では上辺も難しく、極みまで到達する事など不可能だしな。尚の事、問題あるまい」


 「そもそもアルドは蓮の故郷で、京八流の当主を倒したよ? 八つの流派の当主全員を敵にして、あっさりと勝ってるんだから」


 「その八つの流派の当主がどれほど強いのか知りませんけど、それでも流派の当主である以上はそれなりの強者である筈ですしね。それら8人と同時に戦って勝利ですか……?」


 「まあな。幾ら達人でも……いや、達人だからこその穴があるんだよ。そういう部分はわざわざ教える事でもなく、自分で気付いて狙うものなんだけどな。それはともかく、2人も間違ってるぞ。ちゃんと足を使え」


 「ぬ、間違えておったか。しかし、歩く事一つでここまで間違っておるとはな。上手く体重移動と重心移動が出来れば、疲れにくく速く歩く事が出来る。その為には足を集中して動かさねばならんぞ」


 「まだまだ2人は、その段階だという事だ。それでも練習していれば、そのうち当たり前に出来るようになる。意識していなくとも、自分の歩き方がそうなるんだ。そこまでやって一人前だし、そこから先も当然ある」


 「まだまだ先は長そうだな。まあ、自分が強くなるのと暇潰しと思えば悪くはないか。寿命なんぞ無いからな。今までに比べ、やる事があるのは助かる。永い生の中では暇でしょうがない事もあったからな」


 「私なんて暇でしょうがないと思った事は一度もありませんよ。公務を含めてやる事は沢山ありましたし……大猿になってからはあれを倒してこい、これを倒してこいとか色々やらされました」


 「倒してこい……ですか?」


 「大抵は盗賊を殺してこいでしたね。それ以外にも建物を建てる手伝いとか、魔物を狩る仕事をさせられたりとか……今思い出すと碌でもなかったですよ」



 まあ、息子か娘かで金払いが変わる事を愚痴る王らしいし。普通に碌でもない奴なんじゃないか?。


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