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夕方になったので練習を止め、食堂に行って中銅貨7枚を支払って夕食を頼む。特に面白い噂話も無く、さっさと食べて部屋へと戻る。またもやカナイスが部屋に来たが、暇なのだろうか? それとも寂しいのかね?。
アリシアやウェルと会話しているが、三人とも循環させながら会話をしている。これは俺が言ってやらせている事だ。身体強化は生活行動でも出来るようになる事。コレに尽きる以上は、会話しながら出来て当たり前となる。
その為の練習だが、ふとした時に切れていてダリアやフヨウに叩かれている。そして当たり前のように淀みなく綺麗に循環させ、それを維持している子供達。他人の魔力や闘気を感じれば、それが出来ている事はよく分かる。
「だって長くやってきたもん。アリシアやウェルは始めたばかりだから仕方ないよ。使えるだけでも違うけど、使えるだけは所詮使えるだけ。アルドもそう言ってた」
「まあ、実際に長くやってると分かってくるんです。ああ、本当に使えるだけだと駄目なんだなって。そこまでやらないと分からないんですが、大体の人はそうなる前に止めそうですけどね」
「私ではまだ分からんな。とはいえ、随分後になって分かる事だろうから今は無理か。とにかく今は練習あるのみだな。ドラゴンの状態でも使えたうえに、呪われていたリョクディマの攻撃もなんとか耐えられたぐらいだ。使えるようになって損は無い」
「そんなに強力だったんですか? って思いましたけど、よくよく考えたら相手は呪われたドラゴンなのを忘れてました。その破壊力たるや、とんでもなかったんでしょうね」
会話の最中も途切れたら使いなおしていたが、とうとう眠たくなったのかカナイスは部屋に戻った。大丈夫かね、あれは? 宿の変な客に襲われなきゃいいけど……。
子供達も眠たくなってきたのか布団に入ったので、2匹を左右に寝かせて【昏睡】を使う。相変わらず我慢出来ないのか、抱き付いて匂いを嗅いだり首筋にキスをしてくるチョロゴン。少しは待てないのか、君は?。
それでも何故かアリシアに先を譲るそうなので、そのアリシアを撃沈させた。何か理由があるのかと思ったらリクエストがあったので、その通りにしてやる。本当に女性陣に似てきたなと思うも、それぞれに好みがあるのも当然か。
とはいえ、ウェルの場合は好みを探している最中という感じだが……。考えていても仕方がないので、綺麗にして寝よう。部屋と体を【浄化】して、おやすみなさい。
<呪いの星36日目>
おはようございます。今日も人力車で進んで行きますが、今日でほぼ終わりです。明日は隣が帝都なので、そこまで時間はかからない。それでも一日かける距離だそうだが……そんなにゆっくり移動するんだなと改めて思う。
だからこそ村でも宿があったりするんだけど、俺達が村で止まる必要性が何処にも無いんだよなぁ。何かの仕事とかで仕方なく止まるか、3つ先4つ先も村だった場合は止まるかな? それぐらいしか理由が無い。
朝の日課を終え、紅茶を煮出して飲んでいると蓮が起きてトイレに行った。今日は蓮が一番早いが静かに過ごせるかね? と考えていたら、何故か蓮はカナイスを連れて戻ってきた。……何でだ?。
その蓮はコップに紅茶を入れてハチミツを溶かしたら、俺の膝の上に座ってきた。まあ、そこは好きにしていいが……カナイスは朝っぱらから何しに来たんだ?。
「トイレで偶然出会いまして、部屋に戻って紅茶を飲むと聞きましたので……」
「ああ、そういう事か。それは構わないが自分のコップは……背嚢も持ってきたのか。なら好きにしてくれ」
そう言うとカナイスはコップに紅茶を入れて、蓮がしていたのと同じくハチミツを混ぜて飲み始めた。一口飲んだ瞬間ビックリし、目を見開いてこちらを見てくる。……いったい何だよ?。
「この紅茶! 凄く美味しいんですけど、何でこんなに美味しいんですか!? 我が国の紅茶はこんなに美味しくありません!! 何故ですか!?」
「朝から五月蝿い、静かにしろ。それと、美味しいのは水が違うからだ。俺達が使っている水は【浄化】してあるんでな、だから不味い紅茶にはならないんだよ。何処の国でもそうだが、不味い理由は水に呪いが薄く付いているからだ」
「すみません……しかし、呪いですか? 昔、呪いの塊が壊れ、その影響で魔導の国が滅んだと言われています。その所為で我が国の魔導炉も停止し、その結果、とても質の悪い鉄しか作れなくなってしまいました」
「おそらくだが鉄を溶かす為の温度が足りないんだろうな。大きな鞴とか使って風を送り、木炭を燃焼させて炉を高温にするしかないんじゃないか? 古臭い方法だが、俺も然して詳しい訳じゃないからなぁ」
「古臭い方法ですか? ………成る程。魔導炉が登場する前の時代なら、当然それ以外の方法で鉄を溶かしていた訳ですね? その時代の資料でも残っていたら、そこから復元出来る可能性が……」
「木炭使うなら大量の木と窯が必要だが、それはあるのか? 無限に木が採れるなんてダンジョンぐらいだが、ダンジョンを持っている貴族と交渉も要るだろうし……まあ、頑張れ」
「……おそらくご存知ないのだと思いますが、我が国のダンジョンは帝都近くにあり、ダンジョンの所有権は代々の陛下にあります。なので陛下に奏上するだけで済みますよ? それに、ダンジョンは万人に開放されてもいます」
「帝都の近くにダンジョンがあったのか。この国の地理は聞いたが、ダンジョンの位置までは聞いてなかったな。まあ、どのみち近付けば分かったとは思うが」
「でしょうね。……それよりも聞きたい事があるのですが、アリシアと一緒の部屋で寝ているのですか? いえ、アリシアは一応王女ですから、色々と問題があると思いますよ?」
「と言われても……本人が特に気にしてないし、何も言わないからなぁ。それに余計な金がかからずに済むし。宿代や食事代を出しているのは俺だぞ? まあ、社会に還元しなきゃならないんで、それは良いんだけども。でも無駄金使うのは何か違う気がするんだよなー」
「話がズレたような気がしますが、ワザとですか? 私が言っているの「気にしなくてよいぞ?」はですね……」
「おはよう。カナイスよ、アリシアの事なら気にせずともよい。そもそもアリシアも私もアルドに抱かれておる、それも自らの意思でだ。そなたがアリシアを心配する気持ちも分かるが、昨夜も雌として随分と悦んでおったしな」
「………」
「アルドを睨んでおるが、勘違いしすぎだ。そも、アルドは自ら女に手を出す事は無い。つまりアルドに抱いて欲しいなら、自ら誘惑するしかない訳だ。子供達も居るのでな、当然そうなる」
「はあ、そういう事ですか。つまりアリシアは……」
「当然、自ら望んで抱かれておるという訳よ。そなたの心配は杞憂というか、アリシアにとっては余計なお世話というところだな。私の方が後に出会っておるが、私の方が先に抱かれて怒っておったくらいだ。その後で抱かれて気を失うくらい悦んでおったが」
「気を……///。そうですか、それならいいのです。助けたから云々という事が無いのであれば、王女でなくなった以上は自由でしょうから」
「うむ。先ほども言ったが、アルドが自分から雌をどうこうという事は無い。そもそもだが、そなたも女ならば邪な視線が飛んでこんのは分かるであろう? アルドはそういう目で見ぬからな」
「ああ、はい。それは確かにそうで……」
いきなりアリシアが起き上がったと思ったら、猛烈な勢いで部屋を出た。どうやらトイレに行ったらしいが、残りの全員がその所為で起きてしまったようだ。何やってんだか……。




