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 「この道を真っ直ぐ行くとコイル町ですが、ご存知……なんですね。一応、我が国の地理は多少なりともご理解されているようで何よりです」


 「国境の町でもあるウェルニーで情報収集と言いますか、帝都までの道と町や村の位置は聞いていますから。ですので帝都までは分かっていますよ。それよりアルドはどこまで教えるんですか? 私達のように教える訳じゃないですよね?」


 「どっちでもいいんじゃないか? 前の星でもそうだったが、教えたところで使い熟せるかは別の問題だからなー。それに魔力や闘気にも当然限度がある訳だし。仮に情報が広がっても大した事にはならないんだよ」


 「「あー……」」


 「何だかよく分かりませんが、教えを受けられるという事でしょうか? 何を教えていただけるのかは分かりませんが……」


 「多分ですけど、身体強化だと思いますよ。戦いともなれば、アレが一番有効でしょうし。後は魔法でしょうか……。でも戦いに有効な魔法ってありますかね?」


 「さてな。在るのかもしれんし、無いのかもしれん。まあ、魔法を使うよりも早く叩けと言われる気はするがな。魔法に集中するより攻撃した方が早かろう。身も蓋も無いがな」


 「ですね。とはいえ、殴った方が早いと言われたら、それはそうだろうとしか思いませんが……。ですよね?」


 「まあな。それより修行の時間がとれなきゃ意味無いんで走ろうか? カナイスはアリシアに背負ってもらえ、疲れたらウェルと交替な。そして近衛騎士だろうが、二人は頑張って走ってくれ。じゃ、アリシアが背負ったら走るぞ」


 「………はぁ、分かりました」


 「すみません。何だか分かりませんが、失礼します」



 カナイスが遠慮がちにアリシアに背負われ、全員が走り始める。何故カナイスを走らせないかと言えば、足が遅いのと体力が無いからだ。今から走らせても10日しかないから体力の向上は見込めない。というか間に合わない。


 なので身体強化を教えるのは間違っていないのだが、まずは落ち着いた所で教え、その後に歩かせたり走らせたりするのが基本だ。いきなりやらせても上手くいかないだろうし、移動に時間が掛かってしょうがない。


 後ろの方で近衛騎士の2人が「はぁはぁ」言いながら走っているが、そこまで体力がある訳じゃないんだな。逃げるにしても戦うにしても、体力は必要だろうに。第三皇女と言っていたので、あまり質の良い騎士は付けられてないんだろうか? 本人達には言えないが。


 素早くコイル町に着いた俺達は、門番に登録証を見せて中に入る。既に騎士2人は脱落しているが、後で合流するだろう。町に入った俺達はすぐに宿に行き、中銅貨8枚を払って部屋を確保する。


 そして宿の中庭を借りて訓練だ。宿の従業員には小銀貨1枚を握らせ、既に使用の許可はとっている。カナイスは若干警戒しているようだが、まずは魔力と闘気の感じ方から教えていく。いつもそうだが、大事なのは基本だ。


 警戒していようが何をしていようが、俺は教える事はキッチリ教える。アリシアとウェルにも久しぶりに基本をやらせ、カナイスにも基本をやらせる。魔力と闘気を正しく感じられるようになったら、次は魔力と闘気の循環だ。


 これも正しく無理なく無駄なくスムーズに流れるように、ひたすら練習させる。騎士2人が町に着いたので、俺1人で宿を出て迎えに行く。町の入り口で話しかけると怒りに塗れており詰め寄られたが、練習の時間を確保する為だと言って、さっさと宿に連れて行く。



 「そもそも移動と練習を同時に出来る訳が無いだろう。そのうえ後10日しかないなら詰め込む事になるんだ、時間を無駄に使える訳もない。それより2人の足が遅いのと体力が無いのはどういう事だ? 第三皇女だから……って事はないよな?」


 「貴様……我々を愚弄するのか!!」


 「いや、置いて行かれたのは事実だろうに。愚弄するもしないも無く、唯の事実を言ってるんだよ俺は。他人に文句言う前に、自分の体力の無さを反省しろよ。最悪の場合、カナイスを背負ってでも逃げなきゃならないんだろ? それで体力が無いのはどうなんだと言ってるんだ」


 「「………」」


 「カナイスは今、宿の中庭で修行をしてる。といっても基本からだからな、大して何かをしている訳じゃないが……。それと俺達は部屋を確保したが、そっちの部屋までは知らんからな。ちゃんと部屋は確保しておいてくれよ?」


 「それは分かっておる。流石にカナイス様に雑事をさせる訳にはいかんからな。後、我等とカナイス様の部屋は別だ」


 「そうなのか? 何かあった時にどうやって守る気なのかは知らんが、護衛と言ってもそんなものなのか。俺が知っている護衛なら無理矢理にでも相部屋だけどな。でないと最悪を想定した場合に守れない」



 そう話しながらも宿に着いたので、後の手続きは2人に任せて俺は中庭に戻る。大人しく魔力と闘気の循環をしているウェルと、蓮とイデアに怒られているアリシアとカナイスが居た。子供達に頼んでいたんだが、やはり指摘されてたか。


 ウェルの足下にはダリアとフヨウが居て、上手くいってないと足を叩かれている。その度にウェルは集中するのだが、間違うとすぐにペシペシされるので若干イラついているようだ。仕方ない。



 「ダリアもフヨウもありがとうな。後はいいから、ゆっくりしててくれ。ウェル、末端に行くにつれ流れが速い。スムーズに淀みなく、ゆっくりと流せ。苦手な部分は他にもあるが、そこが速くなっている。誤魔化すようにな」


 「ぬっ、そうだったのか。すまんが2匹が何を言っているのか分からなくてな、何処が間違っているのか分からずイライラしていたのだ。すまなかった。それはともかく、苦手なところが速い……か?」


 「ああ。速く動かして誤魔化そうとしている。そういう部分こそ、ゆっくり丁寧に行って克服しなきゃいけない部分だ。ようするに自分の苦手な部分や下手な部分というのは、自分が教えてくれるんだよ。後はそこを直すだけだ。ま、それが永遠に続くんだけどな」


 「………そうか」



 何となく諦めたような表情のまま、今度は苦手部分もゆっくりやろうとして失敗した。ま、ああなるのは当たり前だ。今まで誤魔化してやっていた部分だからな。失敗して本人は愕然としているが、「そんなものだ」と慰めておく。


 騎士2人が来て部屋を確保した事を伝え、修行の様子を見つつ休憩している。流石に走ってくるので疲れたんだろうが、初日でこれじゃ後が困るんだがな。最短で帝都まで行って、後は向こうで修行をしようと思っていたんだが……。


 1日で1つの村や町まで移動して帝都まで7日、つまり集中して鍛えられるのは2日しかない。10日後は予選が始まるからな。そういえばカナイスは何の武器を使うんだ? それを聞いておかないと、どうにもならないぞ。



 「私ですか? 私は剣を使いますけど……なかなか上手くは使えません。普段から練習しているならまだしも、お茶会とか舞踏会とかの社交や、外交などに顔を出したりなど色々ありますので……」


 「皇女の仕事じゃ仕方がないんだろうが……まあ、大丈夫か。所詮は実戦で使うんじゃないし。どうせ刃引きされた物か、木剣を使うんだろ? だったら剣を使えなくても問題無いな。真面目に実戦を想定するなら、武器を変えさせるところだ」


 「私もメイスを持っているのは、それが理由ですしね。魔物を含めて敵を切るって大変ですし、そうそう上手く切れません。私の場合は不器用なのもありますけど、メイスで殴った方が速いですし」


 「流石に魔物を切ることぐらい出来るんですけど……アリシアは出来ないんですか? まあ、ご本人が不器用だと仰っているから、そうなんでしょうが……」


 「前にアルドも言っていたが、アリシアはタンクだからな。つまり盾を持って前線で敵を止める役目だ。盾の扱いは悪くないのだから、攻撃のセンスが無いのであろうな。珍しいとは思うが、大猿の時は殴る蹴るだったのだから仕方あるまい」


 「それでもアリシアはカナイスに勝てるんだから良いんじゃない? カナイスが身体強化を覚えたらどうなるか分からないけど……。蓮? 余裕で勝てるよ」


 「それは当然でしょ。流石に比べちゃ駄目だと思うよ?」



 子供達が容赦ないなー。


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