0178
まぁ……ケツの話は横に置いておこう。横に置いておこう!! 何でケツの話で盛り上がってんだよ。俺のケツに変な事してみろ、幾らお前等でも容赦せんぞ。フリじゃなくてマジだ!。
不機嫌オーラを出したからか、俺のケツがどうとかいう話はピタっと止んだ。最初から冗談だったみたいだが、思いの外俺が不機嫌になって驚いたってところか。
「まぁ、お尻の話はいいとして。これからどうするんだい? もう村に帰るかい?」
「後1回か2回ぐらいは、ディルに戦闘経験を積ませたいところだな」
「つまりは、後1回か2回強力な魔物と戦わねばならないという事か」
「そうとも言えるけれど、ソードグリズリーとの戦闘経験は大きいわよ?」
「そうですね。ソードグリズリーと戦えた以上は、他の魔物だと楽に感じるでしょう」
「でも、楽に感じると危ないんだよね。気を抜くと大怪我するから、正しい緊張の仕方も覚えていかないといけない」
「緊張しながらも、適度な緩さも持つ。それが出来てやっと一人前だからな」
「普通、それが出来ればもうベテランなんだけどねぇ……」
「アルドにとっては、そこでやっと一人前なのよ。実際それが出来ないと死亡率もそれなりにあるから、一人前と言うのも分かるでしょ?」
「そうだね。確かに、死亡率はその辺りから結構下がるんだよ。ベテランは生き残る術も知ってるけど、それ以上に無茶をしないからね」
「無茶をしない……」
「さっきの戦いと同じさ。回避に専念しつつ隙があれば攻撃して、再び回避に専念する。それも無茶をしないって事だよ」
「さて、話してないでそろそろ出発しよう」
「「「「「了解」」」」」 「ニャ~」 「グルッ」
随分話し込んでしまったけど、後2回か3回なら戦う時間がある。麓のキャンプ地に戻る道を進みながら、集中して魔物を探す。すると5頭ほどの群れが接近しているのが分かった。
「左前方から、フォレストウルフ5頭。ディルが戦い、皆はサポート」
「「「「「了解」」」」」 「ニャ」 「グッ」
フォレストウルフの群れは、前に出たディルを半円状に包囲したまま牽制している。さて、どうするんだろうな。俺なら身体強化で端の1頭を直ぐに殺すが、ディルはまだ身体強化が上手く出来ない。
数を減らして有利な状況を作りだす事が出来ない以上は、カウンター狙いかな? フォレストウルフが2頭同時に攻撃を仕掛けてきたが、流しただけか。同時といっても完全に同じじゃない。
後の方を狙ってカウンターを放つ事は出来た筈だが、そこまでの技量は無いのかもしれない。1対1と1対多はやるべき事が違うからな。自分に有利な状況を作るのは同じなんだ。
だが、1対多の場合はこちらから踏み込む事をしないと打破出来ない事が多いんだよ。余程の実力差がない限りは、待ちだけで勝てるほど甘くは無い。今回はその辺りを学んでほしい。
「……シッ! ……ヤーッ!」
おっと、上手くカウンターが入ったな。さて、ここか……行ったな。そう、こっちから踏み込んでいかないと多数相手じゃ勝てない。相手にコントロールされては駄目だ。
こっちがコントロールして、戦闘を支配するんだ。この場と状況をコントロールすれば、勝ち筋は幾つも見えてくる。後は体力と集中力が持つかどうかだが、問題ないようだな。
少なくとも、元粛清専門の暗殺者だ。戦いにおいて大事な部分は鍛錬してきている。だからこそ、今まで受けてきたであろう指導とのチグハグさが目立つんだよなぁ。
一流の才能の持ち主に、凡人用の教育を施したっていうのが1番しっくりくるか……。うん? ……もしかして妬みか嫉みで、おかしな教育を受けてないだろうな? ちょっと聞いとこう。
「フゥーッ……終わった」
「お疲れー。ところで聞きたいんだが、嫉妬とか受けてなかったか?」
「??? ……どうしたんだ急に?」
「アルド、どうしたんだい? ディルが故郷で嫉妬されてたかって事かい?」
「ああ。1流の才能の持ち主に凡人用の教育を施したら、今のディルのようになるんじゃないかと思ってな」
「あー……。何か分かります。小さな里なら上の家の者に嫉妬されてしまうと、おかしな教育をされかねませんね」
「私の家は、一応里の中では一番上の家なんだが……」
「うん? ……ならディルの父親が里長なのか?」
「いや、私の父は早くに亡くなっている。私には兄弟が居ないので、その後は叔父が里長になっているが?」
「それが原因なんじゃないか? 兄の子供が邪魔だったと考えれば、非常に分かりやすい動機だ。それに、あそこまでディルの体がボロボロだったのも頷ける」
「成る程。本当に胸糞悪いね。ようするに兄の子供が邪魔だから、使い潰してしまえって事だろう?」
「それは……叔父は私が優秀だから、厄介な傭兵と戦うのは仕方ないと……」
「面倒な相手をディルに押し付けてたんだろうね。そのついでに、邪魔者は死んでくれればいいとでも思ってたんだろうさ」
「妙にダナが厳しいのは何故なんだい?」
「ダナは故郷に帰った時に、毒の付いた吹き矢で狙われてたんですよ。アルドが殺してくれたので問題は無かったんですが、ワイヌーの毒が使われてたんです」
「あんな面倒で危険な毒をかい!? よくもまぁ、あんなものを用意したもんだ。そいつら唯のバカなんじゃないのかい?」
「ワイヌーの毒といえば、触れれば死ぬと言われる劇毒じゃないか!? そんなものを使うなどあり得ない。暗殺者でもそこまでの毒は使わないし、私も使った事は無い」
「そうなのよね。あの時はそれで終わらせて、直ぐに吸血鬼の里へ出発したのよ。だから、使った毒の出所とかは分からないの」
「話は後だ! レッドパンサーが2匹こっちにくる。ディルは前に出て、皆はサポート」
「「「「「了解」」」」」 「ニャー」 「ガゥッ」
レッドパンサーはディルを警戒しながら右に左に歩いて隙を伺っている。今回は速い動きの強敵だ。数はさっきよりも少ないが、力も強いし速さも段違いとなる。この戦いを超えられれば合格だ。
やはりアイコンタクトでタイミングを合わせてるな。ディルは気付いたんだろうか? いや、気付いて無いなアレは。それでも2頭の攻撃を何とか凌いでいるのは流石と言えるか。
反応は素晴らしいんだがなぁ。やはり今までのおかしな指導と教育、それを前提とした経験が足を引っ張っている。どんな教育かは知らないが、一回リセットしないといけない。
俺達の場合は身体強化で即座に殺すが、一撃で倒せないと苦戦する相手なんだよな……。今更ながらにレッドパンサーの強さを実感している。俺にとったら唯のザコだから考える事もない。
ディルは必死に考えながら、突破口を見出そうと頑張っているが……おっ! 良い感じのが首に入ったな。これで流れは……あー、そこは突っ込もうぜ? 一気に行けた筈だが……。
それでも弱ってるから、形勢はもう変わらないだろうな。……良しっ、1頭倒したな。こうなると一気に楽になる。後はカウンター狙いでも……入ったな、カウンター。
これで終わりか。なかなかこういう戦いって見れないから、それなりに楽しめたな。危険があれば俺達が助けられるし、こういう経験は一定レベルに達する度にやらせようか。
死んだレッドパンサーに近付き、浄化と処理をしながら皆の話を色々聞く。皆も気になった部分があるらしく、色々反省するべき点を指摘している。処理を終えて収納してから俺も話しかけた。
「お疲れ様ー。レッドパンサー2頭と戦って、勝った感想は?」
「そう……だな。思っていたよりも大変だったのと、思っていたより楽だったのと、色々あったので一言では言えないな」
「皆が色々言ってたんで、俺からは一つだけ言っておく。行ける時と行けない時の見極めは、普段の戦いで学ぶようにな」
「……うん、分かった」
あそこまでの才能があるんだから、本来はゴチャゴチャ言わずとも育つんだよな。要所をキチンと教えれば、後は自分の力で1流になるだろう。
凄いよなぁ……。俺のような凡人とは違うよ、ホントに。
▽▽▽▽▽
0178終了時点
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ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ