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俺達を狙ってきた奴等はこいつらだけで、組織的に狙ってきた訳ではないようだ。なので組織の方を壊滅させる必要は無いだろう。俺はさっさと犯罪者どもの首を落とし、死体をアイテムバッグに収納したら隠密の4つの技を使って町の外に出る。
町からある程度離れたら【落穴】で穴を掘り、死体を放り込んで【破砕】と【粉砕】を使った後で【浄炎】を使い焼いていく。焼き終わったら穴を埋めるのだが、上空にドラゴンが飛んでいる?。
そのドラゴンはこっちを確認してから下りてきた。……いったい何の用だ? こっちには用なんて無いぞ。
「そこの人間。この辺りに私の夫が飛んでいた筈だが見なかったか?」
「すまんがお前の夫と言われても知らん。ドラゴンなんぞ人間種から見たら全て同じにしか見えんからな。お前達と違い識別する事など出来ん以上は、聞かれても答えられんよ。無茶を言うな」
「チッ! 人間如きでは、やはり役に立たんか。それにしても我等ドラゴン相手に随分偉そうな奴だな? あまり調子に乗っていると死ぬぞ?」
「お前達ドラゴン如きにか? 寝言は寝てから言え。あの愚かなドラゴンもそうだったが、お前ら空飛ぶトカゲは殺されるまで愚かだと理解せんな。幾らなんでも頭が悪すぎるぞ」
「高が人間如きが我等ド……貴様、今何と言った? 殺されるまで、だと? ……まさか、貴様! 我が夫を屠ったのではあるまいな!? だとすれば絶対に許さんぞ!!」
「んー……ウェルディランカというハグレドラゴンを知っているか? そのウェルディランカと同じ群れの出身で、突然ブレスを吐いてきた野蛮なトカゲなら殺したぞ。その昔ウェルが犯された後に「一端の雌になれて良かったな」とホザいた奴だ」
「き、きさま……よくも我が夫を………」
「何だ強姦魔の妻か? ドラゴンの雄って強姦犯罪者ばかりと聞くが、その犯罪は無視するのか? ドラゴンっておかしな生き物だな」
「より強い者を生み出すには弱い者は淘汰されて然るべきであろうが!! その為に我ら雌は耐えねばならんのだ!! 種として当然の事であろう! ふざけるでないわ!!!」
「そんな下らぬものの為に、私やお前は犯されたのか? ドラゴンという種を強くする為ならば、そんな野蛮な事が許されるというのか? だからあの男はアルドに殺されたのだ」
町の方から飛んできたと思ったらウェルだったのか。ドラゴン2頭が町の外で睨み合うというのも凄い構図だな。町の人が寝静まった夜だからいいが、これが日中だったら、とんでもない事になってたぞ。
「ウェルディランカ!! 貴様のような簡単に犯される弱き者が偉そうな口を叩くな! 弱ければかつての時代のように食われるだけであろうが! だからこそドラゴンは強くあらねばならんのだ!!!」
「それは悪い考えではないが、だからと言って強姦が許される訳じゃないぞ? 強姦は唯の犯罪だ。ハッキリ言えば強い子供を作るという名目で、強姦という犯罪を有耶無耶にしているに過ぎん。正直に言えば、その一点でドラゴンは獣と変わらん。人間種にとって強姦は犯罪だ、だがドラゴンでは違うのだからな」
「確かにそうだな。唯の畜生や獣であれば強姦は普通の事だろう。だが、知恵あるドラゴンが強姦を明確な犯罪にせぬとは……野蛮だと言われても仕方あるまい。しかも強い雄が無理矢理種付けしたとしても、強い子が生まれるとは限らん。弱い雌に種付けしていたら強い子など生まれんだろうしな」
「お前達がドラゴンを語るな!! 人間如きとハグレが!! 我が夫の仇め!! さっさと死ねぇ!!!」
ブレスを吐いてきたきたものの、周りに人がいる訳でもないので避け、身体強化で一気に接近した俺は右の翼を切り落とす。やはり簡単に切り落とせる程度でしかないらしい。ドラゴンと言ってもこんなもんだ。
「ぐぁぁぁぁっ!? わ、私の翼が!! お、おのれぇ!……キサマら絶対に許さんぞ!!! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「ぬっ? 何かおかしいぞ!! アルド、あれはもしかして!?」
「おいおい、マジかよ。呪いを吸収してるって事は、このドラゴン呪いを取り込む気だぞ。怒りと憎しみで狂ったか? 【浄化】してるのに流入が止まらん! どんだけ吸い込んでるんだ、コイツは!?」
「あははははは!! 私は強い! 力が湧き上がってくるぞ!! 私はドラゴンで一番強くなったのだ!!! これであの頭のおかしい長老にも、五月蝿いだけの年寄りの言う事にも従わずに済む! あのような男など私の夫には相応しくないのだ!!」
「さっきと微妙に言っている事が違うが、仕方ないと諦めていただけか? 長老や年寄りが一番の問題なのかもしれんな。そいつらが古臭いモノを今の子にも押し付けてるのかもしれん。寿命が無いし」
「確かにそれはあるだろう。それよりもリョクディマめ! 真っ黒になって呪いを噴出しているぞ。あの猪ほどではないから動けるが、アレを経験していなければ動けなんだほどだ。アルド、浄化はまだか!?」
「駄目だ、どうにもならん! あのドラゴン、【浄化】しているのに呪いを吸収し続けている!! 俺の【浄化】速度より早いってどうなってんだ、まったく!!!」
「先ほどから私の力を奪っているのはお前か!!! さっさと死ねぇ!!!」
リョクディマという奴が体を回転させ尻尾で攻撃してきたので、俺はそれを回避しつつ【瞬閃】で接近し大太刀を振り下ろす。すると「ビキィ!!」という音と共に、真ん中から大太刀が折れて飛んでいってしまった。
「おいおい、勘弁してくれよ! 超魔鉄が効かないじゃないか!? ドラゴンは呪いでどれだけ強化されるんだ。そういう所も無駄にドラゴンかよ。面倒な生き物だな、本当に!!」
「それはともかくとして、どうするのだ? 相手の攻撃が凄すぎて防御で手一杯だぞ! 人型になったら殺されるであろうから、人型になる事も出来、グゥッ!!?!」
「チッ! このままじゃマズいな。超魔鉄が効かない以上は……良し、取り戻した。これを【錬成術】でくっ付けて変えてっと……それにしても、戦闘ちゅ、ふぉっ!! 戦闘中にやる事じゃないぞ、コレ!?」
「さっさと死ね!! 人間如きが調子に乗りおって!!! 貴様らのようなゴミはこれから皆殺しにしてくれるわ! 我がドラゴンだけが生きていればいいのだ。ははははは!! 私が一番強い、ならばこの世には私以外要らんのだ!!!」
「支離滅裂だぞ、あやつ!! 言っている事が矛盾しておかしい事に気付いてもおらん! あれはアリシアと違い、完全に呪いに呑まれておるのではないのか!?」
「ああ、多分そうだろうな!! 頭がイカレ過ぎているが、元々の本性なのか、それとも狂った結果なのかは知らん。強姦と抑圧で狂っていたのなら、あれが本性と言えなくもない!!」
「成る程、ぬぁっ!!! ぐぅぅぅ! 重すぎるぞ、こやつの攻撃! 幾ら呪いで強化されているにしても、ここまでの奴であったか!? 私より多少強いというだけだった筈だぞ!!」
「はははははは!!! お前には分かるまい、ウェルディランカ!! 私には偉大な声が聞こえるのだよ! どうすればいいか、どう戦えば効率的か! 声が全て教えてくれるのだ!!!」
「呪いだ! かつて<ドクロの花>という裏組織の女ボスも呪いから声を聞いていた! こいつも間違いなく呪いに汚染されているぞ。しかしドラゴンだからか【浄化】が追いつかん! それでも今は吸収量と変わらないくらいになっている!!」
「もしかしてだが、周囲の呪いを大量に集めすぎて、呪いの量自体が大幅に減っておるのか? ならばこのまま……」
「何処かにあるであろう呪いの塊から補給されるだけだ! 元々の【呪魂環】の呪いの量は、こんなものじゃなかった筈だからな!! よし、出来た!!!」
俺は折れた大太刀を大きな杭に変えた。たったこれだけだが、呪いのドラゴンの攻撃を掻い潜って作るのは大変だったぞ。
さーて、こいつをお見舞いしてやるからな。………今だ!!!




