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 夕食を食べ終わった後、ゆっくりと宿への道を歩いている。後ろからつけられているのは分かっているが、目当てはドラゴンの素材かね? 色々考えつつも宿の部屋に入り一息吐くと、【空間把握】を使って調べる。


 荒くれと言うのがピッタリの風貌をした連中が宿の周りをウロついているが、踏み込んでは来ないようだ。まだ夕方だからか? それとも踏み込むまではする気が無いのか? どっちかは知らないが、面倒な事だ。



 「まだ外をウロついているな。アレの亡骸を狙っているのか、単に私達が金を持っていると思っているのか……。そもそもドラゴンを軽く屠るような者が弱い筈がなかろうに。寝込みを襲えば勝てるとでも思っておるのであろうか?」


 「私達はアルドの強さを知っていますが、普通の者が強さを推し量るのは不可能では? 最悪、訳の分からない所で転び、首を捻られて死にますよ? 訳が分からなさ過ぎて、むしろ恐怖の出来事でしかありませんが……」


 「まあ、言いたい事は分かる。転んで足が使えなくなるのも分からんが、転んで首を圧し折られるのは意味不明だ。しかも「出来なくはない」だからな。普通は絶対に不可能を通り過ぎて、おかしな妄想だぞ? それが「出来なくはない」のだ」



 何だか酷い言われようだが、転ばせておいて首を捻った後に<梃子の原理>で圧し折ればいいだけなんで、【念動】を使えばそこまで難しくはないんだよな。ただ、意味不明すぎるんでしないけど。流石に死因が不自然過ぎるからな。怪しまれる事はしない。


 それはそうと、未だに阿呆が宿の周りをウロついたままだな。いったい何がしたいのか分からんが………うん? 何か馬車が来たぞ? ……ついでに馬車から降りた人物が荒くれどもと話してる? 何か変だな。


 馬車から下りて来たのは執事っぽい風貌の人物だ。もうすぐ夜だっていうのに、いったい何だって貴族関係っぽい奴が来るんだ? ……面倒の予感がするな、ここは逃げる事も考えておくか。


 俺がそう思案していると、宿の従業員が部屋に来て「1階にお客様が来ておられます」と言ってきた。俺達はその客と話すとは一言も言っていないんだが、有無を言わせないような言い方だったな。この宿は客を舐めているのか?。


 俺が全員を連れて1階へと行くと、荒くれが周りを囲んだ人物が席に座っていた。荒くれが周りを囲んではいるが、その荒くれは護衛のような形で居る。執事の風貌をした人物が貴族関係だからか、こっちをニヤニヤ見てやがるな。



 「ようやく来られましたか。もうこのような時間なので急いでほしいものなのですがな? あまり礼儀には詳しくないようで」


 「いきなり宿に押しかけて「客を出せ」という無礼者よりは礼儀を弁えているよ。成る程、この領地を治める貴族は随分と礼儀も知らない蛮族らしい。……うん? 部下が礼儀知らずな行動をとったのだから、その主も同じに見られるのは当たり前だろうが。そんな事も知らないのか?」


 「………ゴホンッ!! こちらが言う事は一言だけです。貴方が持っているというドラゴンの素材を出しなさい」


 「成る程、貴族の使いではなく盗賊の使いだったのか。いきなり他人様の物をブン獲ろうって言うんだ、それが盗賊でなくていったい何なんだ? 随分と傲岸不遜な盗賊もいるもんだ……いや、盗賊は元々そういう連中か。これは失敬、盗賊はそういう連中だという事を忘れていたよ」


 「………ゴルドーフ伯爵家に楯突く事になるが宜しいか?」



 この執事はチンケな殺気を放っているが、相手が誰なのか理解していないのか? それとも此方を舐めきっているのには何か理由があるのか? まあいい、本物の殺気と殺意というものを教えてやる。周りの阿呆どもにもな。


 俺は魔力と闘気と念力の【威圧】を使い、仲間には一切被害を出さないようにしつつ、周囲の阿呆どもに格というものをしっかりと認識させてやる。



 「お前こそ、ドラゴンを殺す相手に喧嘩を売っていると理解できていないのか? 今、お前達の命は全て俺に握られているんだぞ? 気に入らなきゃ即座に首を落とすんだが……お前達は何も理解していないらしいな? 貴族という地位や家柄は、命を守るうえで何の役にも立たんぞ」


 「「「「「「………」」」」」」



 顔が真っ青を通り越して白くなり、ガタガタ震えながら上下から漏らしている。臭いから止めてほしいんだが、ここで手を抜くとバカは調子に乗るので手は抜かない。


 こいつは今まで伯爵家とやらの威光でどうにかしてきたのだろうが、それが通用しない相手がいると理解していなかったのだろう。



 「それにしても人間種はマヌケだな。そも、私のようなドラゴンをいつでも殺せるという事は、ドラゴンよりも遥かに強いという事なのだがな? 我等ドラゴン相手ですらビクビク怯えておる貴様ら人間種が、何故アルドに勝てると思うのか理解できん」


 「バカだからじゃないですか? バカだから見た目が人間種と一緒なら勝てると思うんでしょう。中身はドラゴンを遥かに凌ぐ怪物なのにね。アルドが言う、頭の悪い者から死ぬというのは事実なんでしょう。ここにも、あのドラゴンと同じバカが居ますし」


 「それ以前にアルドに勝つのは無理だよ? 蓮の故郷でも500人ぐらいが魔法で焼き殺されて死んだそうだし、その時アルドは面倒臭そうに魔法を使ってたってメルが言ってた。相手はあっと言う間に焼き殺されて死んでたんだって」


 「それって【獄炎】と【烈風】を使ったやつ? ああ、やっぱりそうなんだ。【獄炎】っていう5000度を超える熱を生み出す高位魔法と、強力な風を吹かせる上級魔法の【烈風】。この2つを組み合わせると、1000度を超える熱風が飛んでくるんです」


 「そうそう。それでね、息をすると肺が焼けて、呼吸できなくなって死ぬんだよ。あっと言う間に肺とか気道が焼け爛れるって言ってたし、その後の死体の処理も面倒臭そうにしてたって笑ってた。殺すのはいいけど後始末が面倒臭いって、そうアルドは言ってたそうだよ」


 「まあ、後始末は面倒臭かろうな。500人分だ、大変であろうが………本当に容赦が無いな。多分だが、5000度の熱量というのは我等ドラゴンでさえ焼き尽くされる熱であろう。何とも言えなくなるうえにアルドのやった事だ、間違いなく嘘ではあるまい」


 「嘘じゃなかったら、単なる地獄の光景ですね。……うん、言ってて意味が分からないですけど、地獄の光景なのは間違いありま、限界を超えたようですね? いえ、ワザと手を抜いていたんですか?」


 「いや、そんな事は無いぞ? 徐々にゆっくりと上げていっただけだ。情けない事に大して上げる事も無く、意識を手放しやがった。つまり逃げたんだよ、当然逃がさないが」



 俺は更に強くした【威圧】を使い、無理矢理に気絶した連中を起こした。既に怯えきっているが、それで許す俺ではない。いったい誰に喧嘩を売ったのか、キッチリ教えておく必要がある。



 「お前が伯爵家の者かどうかはどうでもいい。もし本当なら伯爵という奴に言っておけ、死ぬ覚悟が出来たならば喧嘩を売って来いとな。お前の一族郎党を皆殺しにして、お前の血統をこの世から消してやる。そう言っていたと伝えろ。ああ、その時にはもちろんお前達もこの世から消してやる。楽しみにしておけ」


 「「「「「「………」」」」」」


 「さっさと行け!!!」


 「「「「「「!!?!?!!?」」」」」」



 ガタガタと椅子を倒して慌てて出て行くバカども。俺達はさっさと部屋へと戻り、くさにおいから退避した。流石に糞尿まみれの入り口には居たくない。


 さて、これで後は夜中だけだな。夜中に暗殺者でも来たら、リズロッテの刑に処してやろう。


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