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 全員が緊張感を持って35層への転移紋に乗る。俺達が転移紋の上に移動すると光が立ち昇り、35層へと転移していく。35層は枯葉が舞い散る秋の森で、そこには呪いを溜め込んだ猪がいた。


 体高は3メートルほどの、かなり大きな猪であり、周囲に濃厚な呪いを撒き散らしいている。その撒き散らされた呪いだけで、アリシアとウェルは仲良く動けなくなった。既に俺が【浄化】の権能で動けなくしているにも係わらずだ。


 俺は集中して一気に【浄化】してしまい、倒れ伏した白い猪に近付きつつアリシアとウェルを【浄化】する。子供達がアリシアとウェルを見て「仕方ないな」という顔をしているので、口には出さない事にしたらしい。


 俺は首を切って血抜きを行いつつ、【冷却】してから解体をしていく。心臓を取り出して薄くスライスし、子供達と共に食べるが強化は無しと。アリシアとウェルを呼ぶと正気に戻ったのか、顔を真っ赤にして近付いてきた。


 スライスした心臓をアリシアに食べさせるも変化無し。残りの全部をウェルに食べさせる。「何故だ?」と問われたので、魔力と闘気が強化される事を説明すると、文句も無くあっさり食べた。まあ、人型だけどドラゴンだしな。


 現在ウェルは体が痛いのか唸っている。ドラゴンなのに何かあるのかと思いつつ、俺は皮の脂肪層を取ったり【乾燥】させたりしつつ【念動】で揉む。そうしていると回復したのか、ウェルは立ち上がって体を確認している。


 胸の大きさがCの上の方から、Dをギリギリ超えた辺りになっている。相変わらずだが胸が大きくなる効果は何の為なんだろうな? 大きくなるのが、どういう強化に結びついているのか分からない。それはともかく、何かの強化はされている筈だが……?。


 ………ああ、成る程。痛かったのは、長年の歪みを強制的に直していたからか。身長も伸びてないのに物凄い痛がりようだったからな、おかしいとは思ってたんだ。もしかしたら酒の影響かね? 酔えないからって大量にガバガバ飲んで体を壊していた可能性もあるな。


 そんな事を思いつつ白い皮で指貫グローブを作り、ついでにブラと予備を作って渡す。残りの皮は子供達用のブーツだ。さっさと作って渡すと子供達も喜んでいる。やはり白い皮のブーツはフィットするからな。


 子供達が喜んでいる横で、俺は骨を使って一体成形の大刀を作り、刃の部分に頑丈な牙を被覆する。それをウェルに渡し、代わりに超魔鉄の大刀を受け取ったら素材に戻す。そこから短剣を作ってウェルに渡した。これで終わりだ。



 「ふむ。金属製よりも多少軽いが、それでも十分な重さと威力があるな。魔力を通した際の強化はこちらの方が上なのが分かる。金属でないのが少々怖いが、壊れたら先程もらった短剣で戦えばいいか。アレでも十分戦えるだろうしな」


 「ウェルさんも呪いの魔物の装備ですか……。別にどうこうという訳じゃありませんけど、ウェルさんも耐えられませんでしたね? アレってそうそう耐えられるものじゃありませんよ、本当に」


 「///情けないとは思うが、私も動けずに漏らしてしまった。屈辱すら感じぬ程に怖かったぞ、アレは。得体の知れない非常におぞましいナニカであり、根源的な恐怖を感じた。ドラゴンである私ですら、動けず漏らすしか出来ん怪物だ。アルドが居なければ食い殺されるしかない」


 「そうですよね!? なのにアレを前にして動けって言われるんですよ? そんなに簡単に動けたら誰も苦労しません! 私だってまだ2回目なんですから」


 「どのみち動けなければ死ぬのは変わらんがな。人間種だとかドラゴンだとか、そんな事が何も関係しない相手が居る。それが分かっただけでも良かっただろうに。人間もドラゴンも等しく食い荒らすのが呪われたヤツだ。そして、ああいう奴を生み出す呪いが蔓延しているのが、この星となる」


 「そんな危険な所に住んでいるんですね、私達!? 改めて理解すると、怖ろしく危険な所に何も理解せず住んでいるって事ですか?」


 「まあ、そうとも言えるが……危険な呪いからは遠ざけられていると思うぞ? 元々呪いを溜めこんでいた【呪魂環】が破壊されて、呪いが撒き散らかされたにも係わらず、呪いが蔓延して全員呪いに汚染されきっている訳じゃないだろ? 薄く呪いの影響を受けているだけだ」


 「でも、私は呪いの影響で大きな猿になってしまいましたよ? それに他にも呪いでおかしな事になっている方もいますし……」


 「そうなんだよな。【呪魂環】の呪いはもっと大量にあった筈だから、やはり前に言った通り呪いは何処かに移動させられて隔離されていると考えるべきだ。実際、バカが呪いを兵器利用なんてしなきゃ【呪魂環】は破壊されなかった筈」


 「【呪魂環】を兵器利用だと!? もしかして昔にあった<黒い大爆発>か? ドラゴンの姿で飛んでいた時に見た事があるぞ。黒い光が広がる様な爆発を右に見て、慌ててアレから遠ざかったのだ。おぞましさを感じたので気持ち悪くなり、慌てて遠ざかった後、何度も何度も浄化魔法を使ったのを覚えている」


 「多分それが神様の言っていた、呪いの兵器利用だ。そしてその事に怒った【世界】が【呪魂環】を破壊した。よし! これで子供達の槍が完成だ。柄は1メートル50センチ、穂先の長さは50センチで、あわせて2メートルだ。子供達にはちょっと長いが、これでも短槍だから頑張ってくれ」


 「「はい!」」


 「ふーむ。呪いを兵器に利用した阿呆がおり、それに激怒した【世界】とやらが怒って破壊したと。呪いの塊とも言える【呪魂環】を壊せば、呪いが薄くとも蔓延するのは当たり前であろうに! 何故そのような事をするのだ!」


 「一応言っておくが、【世界】は神様よりも上だからな? というより、全てにおいて一番上だ。この世界は文字通り【世界】の中にあり、【世界】は自分の中にあるものを自由に弄繰いじくり回せる。俺達は【世界】の中に住まわせてもらっているだけだ」


 「「………」」


 「神様連中よりも上が居てビックリしたか? とはいえこれが現実だ、受け入れろ。神様でさえ【世界】の下っ端でしかない。それはともかくとして、コレを作り終わったら出るからそのつもりでな」



 そう言いつつ、俺は回収した超魔鉄で大太刀を作っている。想定しているのは大型の魔物、というかハッキリ言うとドラゴンだ。ウェルが居る以上、一度は絡まれるだろう。なら備えをしておくのは当たり前の事でもある。


 ドラゴンに対してだと矛では刃が短くて戦いづらい。初めてこの星に降り立ってすぐに見た、飛んでいたドラゴンを仮想敵と考えると、圧倒的に刃の長さが足りない。最初から大太刀を用意しておくぐらいで丁度良いのだが、素材が全く無かったので作れなかったんだ。


 これでドラゴンが出てきても斬り飛ばせる。そう言うとウェルからジト目をもらった。とはいえそこまでであり、それ以上は何も無い。ウェルも自分の手で強姦魔を殺害しているし、ドラゴンの中に殺されても仕方がない奴が居る事は分かっている。


 それでもジト目をせざるを得なかったのだろう。対ドラゴン用の武器だ。そのうえバカが適当を言っているのではなく、俺がドラゴンを斬る為の武器だと言ってるんだし。それが事実だと分かるからだろう。


 大太刀も出来上がりアイテムバッグに収納したので、そろそろ出ようか? そう言うと、「待ってました」と言わんばかりに子供達が脱出紋に走っていった。どうやら飽きていたらしい。


 待たせてしまったようだが、やっと獣国のダンジョンも終わりか。とはいえ、早かった方かね?。


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