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 <呪いの星29日目>



 おはようございます。今日はダンジョン攻略の日です。少なくとも2人が【気配察知】が使えるようになり、アリシアは【暗視】も使えるようになったからな。これで攻略の準備は整ったとも言える。


 おそらくは前のダンジョンと同じで最奥に呪いの魔物が居るんだろうが、俺にとってはカモでしかないから問題無し。逆に呪いの魔物をアリシアやウェルに倒せと言っても無理だしな。あの2人じゃ勝つ事は難しい。


 呪いの魔物は能力も膨れ上がっているが、それだけじゃなく回復力も異常だ。ウェルの攻撃は強力だが、当たるかどうかが分からない。呪いの魔物がスピード特化なら難しいだろうな。そのうえ近づくと呪いに取り込まれる可能性が高い。


 そんな相手と戦わなきゃいけない訳だから、あの2人に任せるのは無理だ。無駄死にするだけでしかない。朝の日課を終えてウダウダとそんな事を考えつつ紅茶を淹れていると、アリシアが起きたようだ。


 いきなり起き上がり、そのまま部屋を出て行ったのでトイレにでも行ったんだろう。その後、紅茶を飲んでいると戻ってきたが、頭を押さえている。あれは完全に二日酔いだなー。さっさと神水を飲ませよう。



 「………ふーっ。助かりました。頭が痛くてガンガンするし、いったい何だろう? もしかして病気かな? と焦りましたよ。これが二日酔いだったんですね。初めてだったので分かりませんでした」


 「初めてだったのか。とはいえ、二日酔いになるって事は飲み過ぎだ。正しくは、自分の体の限界を超えたアルコールを摂取したから二日酔いになるんだ。酒精の摂り過ぎだな。昨日のあのキツい酒はアルコール度数70度なんだよ」


 「アルコール……70度………。よく分かりませんけど強いお酒だというのは分かります。でも美味しかったので、つい……」


 「あのな、ワインは多分だけど辛口ので10度ほど。濁酒も多分だけど10度近辺だ。そして、あのキツい酒は70度。アルコールの濃さが全く違うんだよ。単純に7倍とか思うんじゃないぞ? 注がれた液体の70パーセントがアルコール、つまり酒精だ」


 「は? ………え? あれの70パーセントが酒精なんですか? ……ちょっと待ってください、それってとんでもない濃さですよね!? そんな物を飲ませたんですか?」


 「いや、俺が元々いた星だとアルコール度数が90を超えた酒もあるからな? スピリタスとかウォッカとか。それに比べりゃまだ低いよ。確か70度近辺の酒が一番殺菌効果が高いから持ってただけだ」


 「そういえば、そんな事を言ってたような気がしますが……でもですね!!」


 「五月蝿いな、朝っぱらから大きな声を出すなよ。【止音】を使っているとはいえ、皆はまだ寝てるんだぞ」


 「すみません……。でもそんなの出さなくても良かったんじゃないですか? 私、知らずに飲んでたんですよ。そうと知ってたら、そんな危ないお酒飲んでませんよ」


 「あれはウェルが普通の酒じゃドラゴンは酔えないというから出したんだよ。そもそもアリシアに飲ませる為に出したんじゃないさ。まあ、そのウェルは灰持酒で酔えたみたいだけどな。濁酒より濃縮しているとはいえ、そこまで度数は高くない筈なんだがな?」


 「ああ。ウェルさんはドラゴンですし、酒精の少ないお酒じゃ酔え……。そうです、昨日の夜ってどうなったんですか!? 私お酒飲んだ後、記憶が無いんですけど?」


 「いや、普通にベッドに寝かせておいたが? というか、それ以外にないだろうに」


 「ちょっと待ってください。私だけ未だに経験無しじゃないですか!? 呪いが解けて元の姿に戻れて、やっと男性と経験できると思ってたのに……!」


 「それを言われても、昨日酒飲んで勝手に酔い潰れたのは何処の誰だよ? 俺が酔い潰した訳でも、ウェルが酔い潰した訳でもないぞ? 自分で勝手に混ぜて、勝手に飲んで潰れたんじゃないか」


 「うむ、昨夜はそうであったな。おはよう、二人とも。昨日は勝手に眠ってしまうし、何をやっているのだろうと思ったぞ? アリシアはその勝手にやらかすのを止めた方が良い。もう少し落ち着いて行動せよ」


 「うっ!? 昔侍女長に言われ続けた事を、今度はウェルさんに言われるなんて……」


 「アリシア……<三つ子の魂、百まで>とも言うし、多分もう治らないと思うぞ? これからは子供達にも、そそっかしいアリシアと思われるな。御愁傷様だ」


 「アリシアって焦って動いて失敗する事多いよ? だからそういう人だと思ってたけど……イデアは?」


 「ボクもそんなイメージかな? 何ていうか、張り切ると空回りする感じ。慎重に行動すれば問題ないのに、何故無駄に張り切るんだろう? って思うよね」


 「無駄……」


 「まあ、失敗する可能性が高いのならば、気合いが入っても自重せねばな。それも出来ず暴走するように張り切るから失敗するのであろう。そういう者は良くも悪くもおる」


 「………」



 部屋を片付けて綺麗にし、神水なども飲み終わったので出発する。食堂に行って中銅貨7枚を支払い朝食を食べたら、ダンジョンへと移動。勝手知ったる何とやらという感じで、ドンドンと進んで行く。


 地形が変わっている訳でもないので、分かりきったルートを進んで行き、20層以降の夜の地形も突破していく。呪いの無い方向に行けばいいだけなので、特に難しい事も無い。俺にとっては簡単な事だ。


 そのまま進んで行き30層に到着。……到着したのだが、そこは久しぶりの洞窟だった。通路は広いものの、出てくるのは蝙蝠系と百足系、それに紛れての鼠系だ。どんな病気持ちか毒持ちか分からない為、慎重に進む。



 「アリシアは盾を持っているからといって安心するなよ? 鼠も百足も大きくはない。それでも結構な大きさをしているが、主に足下から攻めてくる。それに集中してると、上から蝙蝠に襲われるぞ」


 「なら、どうしろっていうんですか!?」


 「適度に散らすんだ。もしくは魔法を使ってどちらかを先に攻撃すればいい。そちらを怯ませておいて、もう片方を先に潰す。それが一人で戦う場合の1つの方法だ。まあ、ここでは子供達に上をやってもらうから、足下に注意してくれ」


 「分かりました!」



 そう声を掛けてから進む。ここでは小さくて速い魔物が多いので、ウェルの大刀は役に立たない。牽制が精々で、それ以上は難しいのが現実だ。それよりも、呪いの少ない方角は分かるが、道が合っているかは分からない。


 相変わらずの厭らしい地形だが、文句を言っていても仕方ない。俺は【空間把握】も駆使して調べて行き、正解ルートを導き出していく。途中で戻ったりなどしながらウロウロしつつも、ようやく35層への転移紋前まで来た。



 「前回のダンジョンでは35層が最奥だった。今回のダンジョンもそうかは分からないが、今回も35層が最奥の可能性がある。最奥で出てくるのは、おそらく呪いの魔物だ。強烈なプレッシャーを受けるだろうが、動けなきゃ死ぬ。とはいえ、いきなり動くのは危険だから注意してくれ」


 「うむ、危険な魔物を前にしていきなり動くのは愚か者のする事だ。それならば、相手を見極める為に動かぬ方がよい。いたずらに動けば隙にしかならんからな。……そんな事を言うとは、前に何かあったのか?」


 「前はね、いきなり目の前に呪いの魔物で、アリシアがお漏らししちゃったの!」


 「それ、言わなくてもいいですよね!? 今、言うべき事じゃないですよね!? 何で言うんですか!! あんなのが目の前に出てきたら、仕方がないじゃないですか!?」


 「蓮は言い過ぎだが、かと言って漏らすだけで身動き一つ出来なかったからなー。あれは駄目だと思うぞ? 小便漏らそうが糞を漏らそうが動けなければ死ぬからな。漏らしても生き残れば笑い話で済むんだ。今度は動けよ?」


 「は、はい……」



 頼むぞ、本当に。助けるにも限度というものがあるんだからな。自分の命を守るのは自分自身だ。


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