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 食堂で中銅貨7枚を支払って夕食を頼んだら、席に座って適当な雑談をしつつ待つ。周りの噂話で特に興味の引かれるものは無かった。さっさと食事を終えて宿に戻るが、あからさま過ぎてウザい。


 ギルドで結構な金額を受け取っていたからか、非常に分かりやすい尾行をしている連中がいるんだよ。アリシアもウェルも【気配察知】で分かるのか、面倒臭そうな顔をしている。当たり前だが、前を向いたままだ。


 そのまま宿の部屋に入ると、2人は大きな溜息を吐きつつ話していく。それは良いんだが、俺に酒を要求してくるな。鬱陶しいのは分かるんだが……しょうがないな、あんまり飲み過ぎるなよ。そう言って灰持酒と70度の酒を渡す。



 「ゴホッ! ゲッホ、ゴホッ!! ……何ですか、コレ!? えっ!? これもお酒? ……ああ、酒精が滅茶苦茶強いんですか。それとここまで酒精が強いと、汚い物を綺麗にする事も火を着ける事も容易いと」


 「酒で綺麗にするとは勿体ない話よな。……成る程、魔法の使い方が知られていない星では、こういう物で病の元を洗い流すしかない訳か。それにしても、魔法の使い方が全く知られていない星があるとは……」


 「俺の元の星だが、あそこはワザとそういう風にされているんだと思う。神様いわく、魔力が無い場所など存在しないらしいからな。となると、意図的に魔法が使えない、または使わないようにされていると考える方が自然だろう?」


 「確かにそうですね。しかし使えないというか、使わないようにされているというのも凄いですねー。それで生きていけるのかと思えば、生きるどころか空を飛ぶ乗り物まであるとか」


 「魔法が無くとも発展はするという事なのであろうな。何かが無ければ駄目だという事は無く、無ければ無いなりに色々と頑張って生きていくのが普通なのだ。しかし、そういう努力すらせぬ我が種族は……」


 「無いからこそ頑張るって事はあるな。それと、ドラゴンはなー……多分寿命の所為だろうと思う。寿命が無いからこそ、待っていれば誰かがやってくれると思ってるんだろうな。自分で何とかしなきゃいけないっていう、寿命のある者達との違いはそこだと思う」


 「確かに待っていればという部分は、私の中にも無い訳ではない。適当に待っていれば済むだろうと思った事は何回もあるのでな、寿命が無いと怠惰になるのかもしれん。アルドは違うようだが」


 「俺の場合は神様に見張られているからな。怠惰とか絶対に無理だし、どんな酷い目に遭わされるか分かったもんじゃない。なので怠惰には”なれない”んだよ。2人だって神様に見張られていて怠惰になれるか?」


 「「………」」



 2人は一言も発さず酒を飲む。下手なことを言って、俺を通して神に目を付けられても困るんだろう。目線も外してしまい、何も言わずに酒だけ飲んでいる。キツい酒をガバガバ飲むのは危険だから止めた方が良いんだが……。


 あーあー、いったい何をやっているのやら。アリシアは灰持酒に70度のアルコールを混ぜて飲んでいたが、早々に撃沈してしまった。あんなペースで酒を飲むからだ。むしろ危険な飲み方だったぞ、まったく。


 俺はアリシアをベッドに寝かせ、アリシアが飲んでいた酒をどうするかと思っていたら、横からウェルが取ってゆっくりと飲み始めた。



 「これは駄目だ。こんな強い酒を飲んでいたら、早々に倒れるのは当たり前だぞ。ドラゴンの私でもキツいと思える酒を飲むとは……。強い酒が珍しくて美味いと錯覚でもしたのか?」


 「さてな。神水を飲ませればアルコールは浄化されるが、自業自得だ。あのまま寝かせておき、明日になっても残っていたら神水を飲ませればいいさ。滅茶苦茶な飲み方をした奴が悪い」


 「まあ、それはそうだな。それにしても、まだ諦めていないようだぞ。あれらは昨日と同じように殺してしまうのか?」


 「ああ。入ってくるというか、踏み込んできたらアウト。明確に犯罪なんでな、その時は殺す。周りでウロチョロしているだけなら……その時々によって変わるな。足を挫いて二度とまともに歩けないようにした事もある。命は奪ってないがな」


 「それは……ある意味で命を奪うより酷い目に遭わされていないか? まあ、最初から犯罪など考えなければいいと言えば、それまでではあるのだがな」


 「そういう事だ。あからさまな悪意をこちらに向け続けていたし、今と違って俺だけだったからな。子供達の側を離れる訳にもいかなかったし、だからこそ遠隔で足を挫いて潰したんだ。本人達は意味不明だろうけどな」


 「転んだら足が捻られて2度と歩けなくなる……か。確かに訳が分からんだろうな。っと、子供達も2匹も寝たのか。ちょっと待ってくれ、すぐに飲み終わる」


 「別に急がなくてもいいし、外の連中がどう出てくるか分からんのがなー……。ヤっている最中に入ってきたら、途中で止めるぞ? 当然、そっちの対処をしなきゃならないからな」


 「うむ、今すぐ足を潰してしまえ。そんな野暮な事をするゴミどもは生きる価値など無い。私の楽しみを邪魔する奴等など、そんな扱いで十分だ」


 「残念だが奴等は踏み込んできたぞ。どうしても諦め切れなかったのか、それとも借金か何かがあって来たのか……ま、俺達には何の関係も無いがな」



 入り口の扉を開けて中に侵入しようとしているバカどもを、【衝気】で気絶させる。外には他にこっちを窺っている者はいないので、こいつらだけの犯行だと分かった。俺は木の枷を着けてから、【止音】【忘却】【白痴】を使って聞き出す。


 ただ、聞き出した結果は予想通り過ぎるものだった。借金があり首が回らず、後先考えずに犯行に及んだとの事。借金はチームでしたらしく、返せなきゃ連帯責任で尻を掘られるそうだ。そして期限は明日まで。


 成る程。こいつらは殺さずに放置した方が面白い結果になりそうだな。必ず俺が殺さなきゃいけないという理由も無いし、こいつらは敢えて大通りの中央で寝かせておこう。今の時季じゃ凍死なんて絶対にしないし。


 俺は【念動】でバカどもを浮かせると、そのまま隠密の4つの技を使い窓から外に出る。大通りの中央まで行ったら【昏睡】を使い、それから木の枷を外して後は放置だ。朝までグッスリ寝ているだろう。


 俺は宿に戻り、隠密の4つの技を解除すると、ウェルがビックリした顔をしていた。



 「それが気配などを消す4つの技か。見えなくなると言うか、見えているのに見えないという意味不明な事になっていたので、私の竜眼が狂ったのかと思ったぞ。とんでもない技だというのが改めて分かった」


 「というより見えるのに見えないと、そう認識できている事が凄いんだが……。そうなると、竜眼相手には使いにくい可能性があるな」


 「心配は要らないと思うぞ? 私も分かっているうえで竜眼で見て、それでも見えないのだからな。何も知らん者どもだと、おそらく見ようともせんだろう」



 成る程、それなら心配は無さそうだな。それはともかく【昏睡】を軽く使う邪魔をしないでくれるか? 幾ら【止音】を使っても振動までは隠せないんで、深く眠らせないと起こす可能性があるんだよ。誰かさんは五月蝿いうえに激しいし。



 「す、すまん。あんなに気持ち良かったのは初めてだったのだ/// し、仕方ないだろう///」



 そう言いながらも、いそいそと服を脱いでいくウェル。ここだけ見ると女性陣と変わらないなと思う。もちろん口に出したりなどしないし、余計な事など言わない。当たり前のマナーだ。


 それはともかく、さっさと【房中術】と【極幸】で幸せにしておこう。鬱陶しい乱入者が居たからな、早く寝たい。


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