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 ウェルは一人納得し、大刀を持ってウロウロしている。敵の気配が分かるので特に危険は無いだろう。ここは4層だし、特に危険な魔物も居ない。突然走り出したウェルは、猛烈なダッシュを行った後で大刀を振り下ろす。


 「ドォン!」という地面に叩きつけられた音の後、「しまった」というウェルの声が聞こえる。何かと思って近付くと、ネイルラビットが粉砕されていた。どうやらウェルの膂力りょりょくと大刀に耐えられなかったようだ。



 「まあ、仕方ないんじゃないか? 大刀で小さな魔物を狩ろうとしたらそうなるだろう。超魔鉄というか鉄の余りも無いんでな、すまんが短剣も何も作れない。鉄の余りでもあれば武器は作ってやれるんだが……」


 「私が悪いのだから別に構わない。それにしても、気配が分かるというのは素晴らしいな! 敵の居場所が分かるので気を抜く事も出来るし、緊張感も持つ事が出来る。警戒がしやすく身を守りやすいのは本当にありがたい」


 「まだ【気配察知】だけなのに嬉しそうで何よりだ。【魔力察知】もあるんだから、そっちも頑張らないとな。そちらが使える様になれば、相手が魔法を使おうとしている事も分かる様になる。つまり、魔法を使う前に潰す事も可能だ」


 「魔法を使う前に潰す?」


 「魔法を使うには当然集中する必要がある。その魔法が発動する前に物を投げつけられてみろ、それだけで魔法陣は霧散する。相手を驚かせるだけで魔法なんて使えなくなるからな」


 「ああ、確かにそうですね。私も【清潔】の魔法とか教えて貰いましたけど、あれって集中しないと使えませんし、よく魔法使いって戦闘中に使えるなと思います。祖国の魔法士部隊って軽く思ってましたけど、本当は凄く大変だったんだって理解しましたよ」


 「それは当然だろう。私だってある程度の浄化魔法は使えるが、それだって使うのは大変なのだ。忘れていて魔法陣が間違っている事とか普通にあるからな。おかげで使えなくなった魔法すらある」


 「魔法陣を忘れるのはどうかと思うがな。それはともかく、10層以降に行って魔物を狩るか。あそこなら金になる魔物も居るだろう。それとも少し早めに昼食にするか?」



 そう言うと、子供達も含めて昼食にする事が決まった。お腹が空いていたらしい。俺達は少し移動して人が居ない場所に行くと、土のテーブルや椅子に焼き場を作り料理を始める。まずは土鍋を一つにしよう。


 2つの土鍋を1つにし、大きくしたら蓮に麦飯を炊いていってもらう。イデアにはスープを頼み、俺はチーズインハンバーグを作っていく。呪い熊の肉のみで作ってみるつもりだが、どうなるかは分からない。


 脂身の少ない部分と脂身の多い部分、それにかす肉を【破砕】して混ぜ合わせていく。捏ねてハンバーグにしたら、間にチーズを挟みながら成形して完成させていった。大きさがそれなりになったので、4つと3つで焼いていこう。


 フライパンに4つ乗せるとギリギリだった。これは何処かで鉄を手に入れてフライパンも更新しなきゃ駄目だな。そう思いつつジックリと焼いていく。途中から蓋をして更にジックリと焼き、出来たらソースを作る。


 灰持酒を使っているとウェルが勿体ないという顔で見てきたが、元々これは料理用だっての。そう言いつつソースを作り終えたら、上から掛けて完成。暇しているイデアにサラダを頼み、次のハンバーグを焼きつつマヨネーズを作る。


 イデアは慣れたもので、ささっと切ってサラダの準備を整えてくれた。マヨネーズができたので上から掛け、残りのハンバーグが完成したのと、麦飯の蒸らしが終わったのは殆ど同時だった。


 茶碗に麦飯を盛っていき、皆に行き渡ったら、いただきます。



 「うん。このハンバーグ美味しいね。両方熊のお肉だからどうかと思ったけど、かす肉が良い感じで美味しいし、チーズが纏めてくれてるから上手くいってる。呪いの牛か呪いの猪が居れば良いんだけど……」


 「仮に居るとしても、ここの最奥じゃないかな? どのみち手元に無いんだからどうしようもないよ。どっちも熊肉だから合わない事は無いし、かす肉のアクセントと溶けたチーズは上手くマッチしてると思う」


 「相変わらずですけど、子供達の言っている事の半分くらいしか理解できません。美味しい物を食べてきているからでしょうけど、元王女の私より美味しい物を食べてきているというのも……よく考えると、本当に凄いですよねー」


 「アリシアは元王女だったのか? ………特にそういう風には見えんな。盾を持って棍棒で魔物を殴りつける王女……なかなか斬新だとは思うが、私は流行る事は無いと思うぞ?」


 「物語じゃありませんよ! 私は本当に王女だったんです。カーナント王国の第一王女、それが私でした。ただし呪われて大きな猿の姿に変わってしまったんですよ。それで父王より盗賊を殺したりとか、そういう仕事をさせられてきたんです」


 「最後の仕事が盗賊退治で、そこで味方の騎士に裏切られて攻められていた所に俺が行って【浄化】したんだよ。俺としては呪いを【浄化】しに行ったんだが、何故かアリシアは呪いが無くなると人の姿になったんだ」


 「ふむ? 呪われた大きな猿の姿なのに、人の姿に戻ったという事か? ………元々人間種なのだから、呪いが無くなれば人の姿に戻るのではないのか? むしろ、それが普通だと思うのだがな」


 「それがなー、今まで3人呪われた奴を【浄化】してきたが、元の姿に戻ったというか消えなかったのはアリシアだけだ。他の2人は塵のように消え去っていった。何が違うのかは俺には分からん。3人とも同じように【浄化】したんだが……」


 「確かにそれは変だな? 呪いが浄化されると、消えてしまう者と消えない者に分かれるとは。そこを分けている何かが有るのであろうが……私如きでは皆目見当もつかん。まあ、分かれば誰もが治せるようになるのであろうがな」



 食事も終わり後片付けをしつつも話をしていたが、妙な連中が近付いてきたので早々に片付けを終わらせる。テーブルや椅子を壊して【粉砕】しているとギョッとした顔をし、そいつらは足早に去っていった。



 「何だあいつらは? ………ああ、土のテーブルや椅子と同じように、自分達も【粉砕】されると思って逃げただけか。その程度なら最初から絡もうとするなよなー、いつか命を落とすぞ。ああいう奴等は人の話を聞かないんだろうけどさ」



 アリシアもウェルも呆れていたが、子供達は慣れたものである。前の星でもあんなの居たしなあ。今さらと言えば今さらか。それより先へと進んで金を稼ごう。


 俺達は身体強化で走っていき、すぐに先ほどのバカどもを追い抜いた。そのまま10層以降まで走って行き、乱獲していく。俺は血抜きと【冷却】をしているが、子供達も含めて早いよ。少しは落ち着いてくれ。


 倒す方は簡単に済むだろうが、こっちは血抜きと【冷却】に多少の時間は取られるんだ。そう言いつつも高速で処理していき、何とか済ませていく。結局、他の傭兵の邪魔になるほど狩る勢いだったので、ある程度狩るとさっさと次の層へと進む。


 20層に突入してしまったので外に出たが、狩り過ぎだと解体所で怒られるほど狩った。木札を手に町のギルドに入ると、受付で精算してもらう。流石に疲れたが、その甲斐もあって皆ずいぶんと儲かったようだ。


 受付嬢には睨まれたので、今後は自重するべきだな。あれなら20層以降の魔物の方が高く売れそうだし、大量に乱獲するよりは良いだろう。俺が面倒臭いし疲れる。やはり1匹の単価が高い方が良い。


 俺はそんな事を話しつつギルドを出ると、皆と一緒に食堂に移動していく。


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