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 「まあ、そういう事だ。竜の神は獣と変わらんようなドラゴンは殺して構わないと言っている。これが聞きたかった事だろう? 念神もそれ以上は何も言ってこないしな。そもそも神様が聞いて答えてくれる事なんて普通は無いぞ」


 「それは……そうなのだろうな。私としても同族殺しというのが許されるのか聞きたかっただけなのだ。………昔、あまりにも酷い同族を屠った事があるのでな。その事が気掛かりでもあったし、その所為で私は群れに戻れない<ハグレ>となってしまった」


 「ん? ……この国の塩湖で塩を樽に詰めているのは、お前さんじゃないのか? そんな事をこの国の人が話してたが……もしかして同族に居場所がバレないように生きてきたのか?」


 「ああ、その通りだ。私は塩湖になど行かないし、同族の目から隠れるように生きてきた。私は同族殺しだ。もし群れに近付けば、流石に袋叩きで殺されてしまう。まあ抵抗はするので、こちらから近付かなければ襲って来ないだろうが……」


 「ドラゴンの世界も大変なんですね……それでも呪われた者が出てくるよりマシだと思いますよ。ドラゴンが呪われるなんて最悪ですから、それに比べたらロクデナシを叩き潰す程度は問題ないでしょう」


 「我等ドラゴンは浄化魔法が使えるから呪われた者などは出てこぬと思うぞ? ただし昨今に生まれた者は知らんがな。昔は厳しく浄化魔法を長老から叩き込まれたものだが、今の子も同じかは知らぬ。私は400年ほど前に同族を殺し、それからドラゴンの群れがどうなったかは分からんのだ」


 「ドラゴンの群れって一つなの? だったら群れがどうこうは分かるんだけど、一つじゃないなら別の群れに行けばいいのに」


 「同族殺しの悪名などすぐに広がる。元々ドラゴンは数が少ないのだ。昔の話だが群れは3つあった。あったものの、そもそも各々が勝手に生きている。あくまでも巣や群れがあるのは子育ての為なのだ。成長したドラゴンは個々が勝手に生きている」


 「カーナント王国では村や町にブレスを放って、人間種を脅して遊んでいる者が。ここガルドラン獣国では毎年塩の湖に行き、塩を樽に詰めて持っていくドラゴンが居ます。確かに勝手気ままですね」


 「……塩湖で塩を手に入れるのはともかく、村や町にブレスを放つとは頭がおかしいのかソイツは? これだからドラゴンが馬鹿にされるのだ。これでは竜の神が仰るような獣と変わらぬではないか」


 「だからこそ、俺に殺せという命令が下るんだがな。ま、馬鹿な事をしているドラゴンは殺して良いらしいから、これからは見つけ次第殺すけどな。どうせ強姦犯罪者だ、始末するのは当たり前の事でしかない」


 「それは……まあ、そうだな。罪は罪だ。誰かが罰を与えねばならん。ドラゴンの者達が驕り、罪に対して罰を与えぬからこうなったのだ。ある意味で自業自得だな。もっと早く対処していれば殺されずに済んだというのに」


 「アルドさんが殺せるって疑ってないんですね? ドラゴンって最強の存在ですよ? そのドラゴンが人間に負けるのは想像できないんですけど……」


 「ドラゴンは別に最強の存在ではない。昔には多くの魔物に集られて貪り喰われた者も居る。決して最強の存在などとは言えぬさ。ドラゴンを貪り喰った者どもは強くなり、新たな種となったらしいがな。一応そういう話は長老から聞くのだよ」


 「驕らないように、という話じゃなくて、単に気を付けろというだけな気もするけどな。それより明日からどうする? この国の王都も見たし、もうする事も無いしな。さっさと次の国へと行くべきか?」


 「そうですね。ガドムラン獣国もそこまで見る物は無かったですし、後はダンジョンがあるかの確認くらいでは? 他にする事も無いと思います」


 「紅茶とお砂糖をもっと買ったら、さっさと西へ行こう。この辺りはそれと綿で終わりだから、これ以上は何も無いよ」


 「うん、そうだね。ボクも蓮の意見に賛成です。この国に居る理由も無ければ見る物も無いようですから、さっさと帝国とやらに行くべきだと思います。まあ、帝国に見る物があるかは知りませんが……」


 「そうするか。確かに特に見る物も無かったし、この国も塩湖があるのと砂糖を作っているくらいだったな。他に特色も無いし、武具はアレだったしなぁ……まあ、呪いが蔓延してからは正しいと言えるが」



 そう言いつつ腰を上げた俺達は、夕食を食べに酒場へ行く。何故かドラゴンの女性がずっとついてくるんだが、どういう事だ? 酒場に行くとまた「ビクッ」とされたが中銅貨6枚を支払って夕食を注文する。


 マスターは再び震えたが、完全にトラウマになっているようだ。明日には居なくなるんで気にしなくてもいいな。俺達が席に座って待っていると、何やらドラゴンの女性がマスターに話していた。


 俺達はスルーして食事をし、終わったら宿へと戻る。しかし……何故かドラゴンの女性がずっとついてくるんだが、どういう事なんだ? 仕方なく聞く事にしたが、本当は聞きたくない。おそらくは……。



 「ドラゴンを殺すのだろう? 当然、私もついていく。同族同士ならお互い見れば分かるし、ドラゴンとしての存在感は隠せん。<竜眼>は普通の目とは違うのでな、私達には見えるのだよ」


 「やっぱり、そのつもりかー……。皆、どうする? ってその顔は諦めてるな。まあ、俺もこうなるとは思ってたけどさ。仕方ない、俺も諦めるとするか」


 「何だか酷い事を言われている気がするのだが? お前には勝てぬと言っても、私はドラゴンだぞ? 流石に早々簡単に負けたりなどせぬのだがな。私はそんなに弱くはない」


 「いや、そういう事じゃなくなー……というか、人間種の社会で生きてきたお前さんでさえコレなんだから、他のドラゴンはどんだけ傍若無人なんだよ。自分の思った事は叶って当たり前だとでも思っているのか?」


 「それよりも、まず仲間に入れてって言うべきだよ。だってこのヒト何にも言わないし、チームに入れて当たり前って顔してるもん。誰も入っていい? って聞かれてないよ」


 「す、すまん! ……私も一緒に連れて行ってもらえないだろうか?」


 「それが先にあれば、こういう顔をされる事も無かったんだ。という事は覚えておけよ? でないと無理矢理に犯そうとする雄どもと然して変わらんぞ。結局は己の都合を相手に押し付けてるだけなんだからな」


 「………」



 愕然とした顔をしたが、事実なんだから諦めろ。周囲が圧倒的に強いコイツに口を出せなかったんだろうなぁ。だからコイツも傲慢なドラゴンのままだ。それでも頭のおかしい奴等に比べればマシなんだろうけど。


 布団を敷きつつ考えていると、何故かドラゴンが布団の上に寝転がり始めた。これは子供達の布団だっつーの。そもそもお前さんはとっている部屋があるだろうが、その部屋に戻れよ、勿体ないだろう。



 「それはそうだが、私も受け入れてくれたのだろう? ならば一緒のチームなのだから除け者にしなくてもいいだろう」


 「いや、除け者じゃなくて、とっている部屋が勿体ないって言ってるんだがな。後、寝るならもう一つ布団を敷くから、子供達の布団を取るんじゃない」


 「うむ、すまない!」



 このドラゴン、単に寂しかっただけか? 何だかそんな気がするぞ? 400年前に同族を殺し、群れに居られなくなって孤独だったんだろう。圧倒的な強さを持つので、根本的に対等な関係など不可能だ。


 どうしても態度に出るし、ドラゴンと知れば人間種など卑屈になるだろう。尚の事、孤独になり続けていた。そこに現れたドラゴンですら素手でブン殴って倒すヤツ。ようやく対等か、それ以上の者が現れた……と。



 「うむ、その通りだ。私が強い、またはドラゴンだと知ると卑屈になる者ばかりなのだ。いい加減イヤになる。群れの者は他種族を見下す阿呆が多く、人間種はドラゴン相手に卑屈になってばかり。私もいい加減疲れていた」


 「そういえば、何故アルドさんを追いかけて戦いに行ったんですか? 別に戦う必要は無かったですよね? 元々は酔っ払いが原因ですし」


 「そうなのだが、些かやり過ぎだと思うてな。強い力を持つ者は傍若無人な者が多い、ドラゴンと同じだ。だからこそ強い力を見せ付けて反省を促そうと思っていたのだが、まさか私が敗れるとは思ってもみなかった。そのうえ神の加護まで持つとは」


 「まあ、気持ちは分かります。私なんて呪われて大きな猿になっていたのに、あっと言う間に元の姿に戻してもらえたんですよ。あれは驚きでした」


 「ほう、呪いをな。そんな凄い力の持ち主とは知らなんだ。ますます共に行くのが正しいと思えてくるな。そういえばだが、そなたらは何時シているのだ? 共に居るのだろう?」


 「は? 何時している……ですか? ………すみません、何を言っているのか分からないのですが……」


 「何をって、雄と雌なのだからねやに決まっているだろう。男は溜まるしな、ドラゴンの雄のように無理矢理でなければ普通の事であろう? ……まさか何もしておらんのか?」


 「する訳ないでしょう!? そんな事!!」


 「成る程、そうか。ならば私が独占できそうだな。それは良い事を聞いた」



 こいつは大きな声で、何を言ってるんだ?。


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