0176
レッドパンサーの所為で【浄化】の権能に集中出来ないので、まずはレッドパンサーを殺す事にした。ウィンドディアーの邪生は動けない程度の浄化に留める。そうしていると、レッドパンサーはある程度の距離から近付いて来ない。
その付かず離れずの状況が俺をバカにしているように思えて、ブチッときてしまった。俺は全力の身体強化を行いレッドパンサーが反応出来ない速さで、こめかみをブーツの先で蹴り飛ばす。
レッドパンサーは綺麗にブッ飛んで行ったが、俺の知った事ではない。ウィンドディアーも安らかになりたい所を邪魔されたのだから怒って当然だし、中途半端な距離で牽制っぽい事をされた俺は激怒した。
俺にとってもウィンドディアーにとっても邪魔者でしかなかったゴミなんかどうでもいい。ウィンドディアーが安らかな顔で死んだのでアイテムバッグに収納し、直ぐにゴブリンの邪生の方へ行く。
【浄化】の権能を使いゴブリンの邪生2体を安らかに送った後、心臓を取り出そうとしたら強烈な邪気を感知した。一箇所に邪気が収束していってるのか……コレは?。
俺はゴブリンの邪生を収納して強烈な邪気の方へ急ぐと、さっきのレッドパンサーに邪気が収束していっているのが見えた。どうやらあのゴミが邪生になるらしい。だからどうしたと言う話だが。
「グルルルルァァーーーーッ!!!!」
はいはい、良かったね。俺はさっさと【浄化】の権能を全て使い、安らかに送ってやった。邪生の心臓が1つ増えたと思えば、なかなか使える奴だったと言えるかもしれない。
アイテムバッグに収納して皆の下へと戻り、心臓を半分にしてディルに渡し、もう半分を7等分にする。4つの心臓を食べてディルはお腹が膨れた様だが、結構変化したみたいだ。
「お腹が苦しいが、胸が引き締まって形が変わってる? それに体が物凄く楽になった」
「やった! 凄く綺麗になってる! これは結構期待出来るんじゃないかい?」
「そうですね! 子供の頃とは言いませんが、それに近いくらい綺麗な色になってます!」
「私もよ! これで悩まなくて済むわ。綺麗になる事なんてないと思ってたのに、まるで夢のよう!」
「確かにね。色は努力じゃどうにもならないけど、凄く気になるんだよ」
嬉しいのは分かるんだが、大きな声でそういう事を言われても困るんだよ。それ以外だと、ディルの体の中は健康な人と変わらないレベルまで回復している。
体の方も頑強になっているし、胸の形はロケット型に変化してる。ダナと同じ形なんだが、胸の形そのものが変化したのは初めてか? 釣鐘型とロケット型は元々近い形ではあるが。
なんだか体の様々な部分が変化してるんだよな。俺は碌な変化が無いんだが、この肉体って最初からほぼ完成された肉体なんだろう。それなら変化が殆ど無いのは当然だ。
さて、そろそろ昼の時間だから焼肉でもするか。地面に【土魔法】や【錬金術】と【練成術】を使い、焼き場と焼き網を作る。スマッシュボーアを取り出して解体したら肉を【熟成】して準備完了。
肉を焼いていき、1人を除いて皆で食べる。1人はお腹いっぱいで食べられないから仕方がない。こんな昼に近い時間に4体の邪生が出てきたんだ、文句は邪生に言ってほしい。
焼けた肉は2匹の餌皿にも入れてやるが、2匹は生肉も食うからな。焼く手間が少なくて助かるよ。そんなに分厚くはしてないし、【加熱】の魔法で焼いてるから中までよく焼ける。
ただ、面倒な事に変わりはないんで楽が出来るのはありがたい。皆も満足したらしいので、昼食はこれで終わりだ。最後の方でディルがちょっとだけ食べていたが、大丈夫なのか?。
昼食後はゆっくりして十分に体を休める。ディルのお腹がマシになった頃、立ち上がり再び歩き始めた。ある程度は山を登って来ているが、今までの登山道とは違い森に近い。
その為か魔物の生息範囲などが違っていて、強い魔物はそこまで多くない。言うなれば山の強い魔物と森の強い魔物の、隙間みたいな感じの場所だ。近くに弱い魔物はいるんだが……。
「弱い魔物はいるんだが、無理してこちらから襲う必要も無いしなぁ。襲ってくるなら別だが」
「何かボヤっとしか分からないけど、何かが近くに居るのは分かるよ」
「そうですね。動かないですし、こちらに襲い掛かってくる訳でもないので無視してますが」
「何でもかんでも狩れば良いと言う訳でもないし、狩り過ぎは村の為にならないわ」
「ホーンラビットやビッグラットなんかは狩ってもしょうがないからね。私達が狩る魔物の餌みたいなものだし」
「居なくなったら、傭兵は他に行かざるを得なくなる。最も、そこまで狩れる者は殆ど居ないだろうが」
「「「「「………」」」」」
何だか皆が俺の方をジト目で見てくるんだが……。確かにやろうと思えば出来るけどさ。そんな面倒臭い事を、俺がする訳がない。勿論、全員が冗談でやってるのは分かっているけど。
碌にメリットが無いうえに、村に迷惑が掛かるとか絶対にやらないよ。わざわざしなくてもいい苦労をするとか、間違いなく唯のアホだ。それも、周りに迷惑を掛けるタイプのアホだな。
アレだ、無能な働き者だ。無能なうえに余計な事しかしないんで、動かない方がマシな奴。こういう奴って時代を問わずに居て、必ず誰かの邪魔をするんだよ。
日本にもそういうヤツは居たし、外国にも居た。ニュースなんかでも見たし、ネットでも話題になっていた。そう考えると、無能な働き者って本当に時代を問わずに居るよなぁ。
俺が元の世界で生きていた時代なんて、この世界のような時代じゃないんだ。義務教育を含めて教育が充実している時代なのに、無能な働き者は普通に居たんだよ。
知識と知恵は違うと言うけど、その言葉は間違いなく正しい思う。……これ以上下らない事を考えるのは止めて【探知】に集中しよう。弱い魔物しかいないんで、思考が横道に逸れてしまった。
……都合の良いのが居るな。周りに他の魔物もおらず1頭だけか……よし、ディルにやらせよう。1対1なら上手く戦うだろうし、防具を着けない戦闘を経験させておきたい。
「前方からソードグリズリーが1頭来る。ディルだけで戦闘をしてもらう。他のメンバーはサポートを頼む」
「えっ!?」 「「「「了解」」」」 「ニャ」 「ガゥ」
「ちょっと待ってくれ! 防具も着けてないのに……」
「どのみち、ソードグリズリー相手じゃ青銅の鎖帷子なんて何の役にも立たない」
「それはそうかもしれないが! そんな危険な事を私にしろと言うのか!?」
「いいからさっさと行きな! 慣れるしかないんだよ!」
ソードグリズリーの前に押し出されて、戦いを強要される形になったがこれでいい。近付かれたくないのか牽制っぽい事をしているが、大した意味が無い。接近戦というのは死の危険が必ずある。
鎖帷子を着けていようが変わらない。その事を頭と体に叩き込むにはこれが1番良い。今までの鎖帷子に対する安心感は、根拠の無い妄想でしかなかったと理解してもらおう。
「ふっ! ……やぁっ!」
掛け声はそれなりなんだが、それだけだ。へっぴり腰じゃ牽制にもならない。ソードグリズリーが腕を振るたびに”ゴゥッ!”とか”ボッ!”とか良い音がするんで、余計に怖いんだろう。
でもなー。その恐怖の中動けないと困るんだよ。俺達の旅について来れないし、流石にディルを置いて行く気にはならない。そうなると、恐怖の克服はしてもらわないと。
「その、へっぴり腰はなんだい!? もっと前に出るんだよ!」
「敵の呼吸を確認しなさい。前に出続ける生き物なんて居ませんよ」
「立ち止まるか後ろに引くか、そのタイミングが攻撃するチャンスよ!」
「それまでは回避優先! しっかり敵の動きを見て確実に回避するんだ!」
「はいっ!!」
なんかスポーツ漫画の1場面みたいだな。実際には生きるか死ぬかの狩りなんだけど。……それにしても、ディルはちゃんとした師が居れば強くなる素質は十分に持ってるよなぁ。
何であれだけの才能が、あんなポンコツ状態だったんだろうか。いや、理由は分かるんだけど、何だか遣る瀬ない……。
▽▽▽▽▽
0176終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨68枚
大銀貨92枚
銀貨54枚
大銅貨109枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ