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 子供達はリバーシで遊び、俺はダリアとフヨウの相手をしている。アリシアは神水を飲みながら何か考えているようだが、話し掛けてくるまで放っておこう。話してこなければそれでいいし、特に興味もない。


 多分だけどロードエルネムって奴のことだろうしな。正直言って地方の英雄っぽく伝えられている程度の奴に興味ないし、そもそも凄いっていう気持ちも無い。建国したって言ったところでなー。言葉は悪いが、古い時代の建国者なんて山ほど居るんだよ。


 特に古い時代は国が興っては滅ぶの繰り返しだからな。地球だって都市国家時代とかは滅んだり興ったりの繰り返しだ、その最中に生まれたのが古代ローマ帝国だし。ローマ帝国スゲーっていうけど、それ以前に国は沢山あったんだよ。大きくなったから凄いだけで。


 それに中国大陸にも山のように小国家があったらしいし、古い時代ってそんなものなんだよな。国家の過渡期っていうんだろうか? そういうものが生まれる時代の話なら、別に英雄でも何でもない気はする。もちろんアリシアには言えない事だが。聞かせると五月蝿いだろうし。



 「ロードエルネム以外にも英雄って居たんでしょうか? 色々思い出してみたんですが、英雄と呼ばれた方は他に居なかったと思うのですが……」


 「そもそも何をもって英雄とするかで幾らでも変わるぞ? 戦争に勝った人物……といったところで、負けた側からすれば虐殺者だ。国を興したから……そんな人物は他にも居たろう。国を興した全員が英雄なのか?」


 「いや、それは………どうなんでしょう?」


 「俺に聞かれても困る。俺はロードエルネム何ていう奴に興味も無いし、そいつの功績を知らない。国を興しただけなら、英雄なんて山のように居るな。古い時代は小国が乱立するのが基本だ。それは何処でも変わらないだろう」


 「国が乱立するのが当たり前………?」


 「そうだ。俺が最初に居た星でもそうだった。古い時代は小さな国が乱立し、それらが戦争をして何処かが吸収して大きくなっていく。都市国家と言ってな、一つの都市が一つの国だった時代もあるんだよ。それぐらい国の規模が小さかったんだ、最初は」


 「国の規模が小さい……それは何故ですか? 国なんて大きい方が税も入るでしょうし、大きい方が単純に言っても強いですよね?」


 「大きな国土を持つ事が出来なかったからさ。目が届かないとすぐに裏切り、何処かの国と内通する。そんな事を繰り返す訳だ。そうやって国家というものを人間種全体が認識する事で、徐々に現代と似た国家になっていくんだ。つまり古代に今のような国家観も経営のノウハウも無いんだよ」


 「あ~……成る程。皆が国家というものを分かってなかったんですね。何となくこういうものだ! と言っているだけで、今の国とも違うんだ……。ロードエルネムの時代の国って、どんな国だったんでしょう?」


 「いや、俺が知る訳ないだろう。そんなものは考古学者や歴史学者、つまり専門の学者が調べる事であって、俺みたいな狩人が調べる事じゃないだろ。ついでに俺はこの星の出身者じゃないっての」


 「あ。そういえば、そうでしたね。色々な事を知っているので、聞けばわかると勝手に思ってました。それにしても都市国家ですか……。今で言えば、王都が一つの国って事ですよね? 税も含めて、とてもじゃないですけど国なんて運営なんて出来ませんよね?」


 「だから都市国家で戦争して、勝った側が負けた都市国家を支配して大きくなっていくんだよ。やがて今日こんにちの国になっていく訳だ。おそらくロードエルネムとかいう奴の作った国も、そういう過渡期の国なんだろうさ」


 「過渡期……国が大きくなっていく時代の小国という訳ですか。そして愚王と呼ばれてしまった王が、最後の王として国が終わる訳ですね」


 「ああ。こういうのは大抵ドラマチックというか、大きく滅んだりしたから残るのであって、おそらく似た様な国は沢山あった筈だ。それらの国々は、後世の人々が熱狂するような滅び方をしなかったんだろう」


 「いや、熱狂するような滅び方ってなんですか……」


 「事実だろ? 同じように滅んでいった国が沢山あるのに、お前らロードエルネムって奴の建国した国だけ歌にして残してるし、今でも楽しんでるじゃないか。普通に覚えられもせず無くなっていった国と、そのロードエルネムって奴の国の違いはなんだ? それを考えれば答えが出る」


 「………ロードエルネムが建国して、途中に色々あって、最後の愚王と呼ばれる人が国を傾ける。つまり国家の成り立ちから滅びまでが物語にしやすい?」


 「はい、正解。残る物と残らない物の差なんてそんなものだよ。聞いていて、多くの人が楽しめるから歌になり、多くの人々が聞くので記憶に残る。言葉は悪いが、他の国との違いなんてそんなものでしかない」



 俺はアリシアに語ってやりながらも、リバーシの最中に寝てしまった子供達を布団に寝かせていく。アリシアは色々考えているようだが、昔の事なんて学者に任せるしかないし、多分だけど答えは出ないと思うぞ?。


 唯でさえ、この星は文明が後退中なのに、歴史学や考古学が発展する訳がない。むしろ後世では暗黒時代と呼ばれるんじゃないか? 中世ヨーロッパの暗黒時代も、その時代を生きている人にとっては暗黒時代じゃなかったんだろうしな。


 後で振り返ったら、あの当時は暗黒時代だったと言われるだけで、その時代の人は生きていくだけだからなあ。おっと、アリシアもベッドに寝転がって寝始めたらしい。俺もそろそろ寝るか。部屋と体を【浄化】したら、おやすみなさい。



 <呪いの星23日目>



 おはようございます。今日は一日この町に留まり、色々な情報収集をします。買い物もするけどメインは情報だ。特に町や村の場所にダンジョン。後は呪われた奴がいるかどうかとか、その辺りを調べる事になる。


 朝の日課を終わらせて紅茶を淹れていると、フヨウとイデアが起きてきた。水皿に神水を入れて出すと、いつも通り「ズゾッ」とした後で首に巻きつき力を抜く。イデアは戻ってくると、早速紅茶を入れてハチミツを溶かしている。


 性格が出るが、イデアは全て溶けきるまで混ぜるんだよな。蓮とアリシアは適当に混ぜたらさっさと飲むんだけど、この辺りは本当に個人の性格だからなあ。イデアとしては納得できないんだろうし、気持ちは分からなくもない。


 そんな事を考えていると、蓮が起きてきた。すぐに部屋を出たが、戻ってきたらすぐに紅茶を入れ始める。スプーンでハチミツを取り、適当に数回混ぜたらさっさと飲む。美味しそうな顔をしているが、イデア的には疑問符が付くらしい。


 適当にしか混ざってないのに、果たして美味しいんだろうか? ってところだろう。その疑問も気持ちも分からなくはないが、個人の飲み方にまで口を挟んでもしょうがないからな。気になるんだろうけど。


 アリシアが起き部屋を出たのと同時くらいにダリアが起きた。水皿に神水を入れると美味しそうに飲み、終わったらペシペシ叩いてくる。とはいえ最後に起きたのはダリア自身なんだから仕方ないだろうに。相変わらず叩くんだな。


 アリシアが戻ってきて、少しゆっくりしたら部屋を片付ける。その後、食堂に行って中銅貨6枚を支払い朝食を注文したら席に座って待つ。雑談を始めてすぐ、近くの席から話が聞こえてきた。



 「クソの帝国から国を取り戻しているのはいいが、どこまでやる気なんだろうな、お国は」


 「さあな。オレ達のような辺境の、それも平民には分かんねえよ。そもそも取られた国の土地は西の端だし、塩の湖には全く届いてねえって聞くしな。そこまでで精一杯だったんだろうが……」


 「それは良かったが、毎年税だ何だで持ってかれるからなあ。土地を取り戻したら戦争は止めて税を減らしてくれねえかなー? 西の奴等の怒りは大きいらしいし、無理か」


 「無理だろうな。帝国の奴等を皆殺しにするまで止まらねえんじゃねえの? 実際それぐらいの怨みを持ってるって聞くしさ」


 「やっぱりかー」



 実際に悲劇に遭った人と遭ってない人。永遠に分かり合う事はないな。だが逆に、遭ってないからこそ冷静に考えられるとも言えるけど。


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