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 夕食も終わり、宿の部屋に戻って適当に寛ぐ。神水を飲みつつ明日からの予定を話すのだが、結局のところ移動という事に変わりはなかった。次は獣国まで移動していき、向こうでどうするか決めるしかない。



 「獣国は平原や草原が多い国だと聞いています。丘が多くなだらかに登ったり下ったりしているそうですね。後、獣国も農業が多いそうですよ? 我が国も農業国ですけど、獣国もです。とはいえ、向こうは砂糖も紅茶も多く、更には塩もありますが……」


 「砂糖があるって事は甜菜は獣国の特産なのかね? この辺りがサトウキビに適した気候かどうかは知らないし、甜菜の方が可能性が高そうだと思うんだが」


 「さあ? 申し訳ありませんが、てんさい? とかサトウキビ? とかを知りません。獣国では砂糖の原料は厳重に管理されていると聞きます。なので私は砂糖が何から出来ているかを知らないんです」


 「成る程。それならしょうがないし、主要な輸出品なら厳重に管理するだろうな。砂糖ってだけで儲ける事は可能だし。とはいえ、この星は呪い塗れだから綺麗な砂糖かどうかは知らないけども」


 「ハチミツあるから、無くても良いんじゃないの? 料理にだってハチミツ使えばいいよ?」


 「ハチミツはハチミツで癖があるからなあ……。癖なく甘さだけを加えたい場合は砂糖の方が良いんだよ。といっても、今の所そこまでする料理も無いし、そこまで拘る理由も無いんだけどさ。……おっと」



 座っていたらダリアが胡坐の中に入ってきたので、出して神獣のブラシでブラッシングしてやる。いつも通りにあっさりと寝たが、気にせずに綺麗になるまでブラッシングをしていく。終わったら次はフヨウだ。



 「ブラシを持っていたんですね? 髪を整える事が何回もあったんですから、貸してくれても良かったんじゃないですか?」


 「アリシアが自分に使うの? そんな事したらすぐに寝ちゃうよ? 神獣の毛のブラシは凄いんだから」



 アリシアはよく分かってないので蓮から説明を受けているが、それでようやくこのブラシがとんでもない物だという事が分かったらしい。それでも若干信じきれていないようだが。なのでブラシを少し貸してやる。


 手鏡を使いつつ自分の髪を整えていると急速に眠気がきたんだろう、慌ててブラシから手を放して愕然とした顔をしつつ頭を左右に振っている。



 「……あ、危なかった。寝てしまうところでしたけど、このブラシ滅茶苦茶ですよ。しんじゅうっていうのが何なのか分かりませ、かみのけもの? ………神の獣!? え!? 神の獣の毛のブラシ?」


 「そう。神様から貰った物で、神獣の毛のブラシ! さっきからそう言ってるのにアリシアは鈍いなー」


 「いやいやいやいや。普通に生きていて神獣なんて単語を聞く事なんてありませんよ! 分からなくても仕方ないでしょう。………それにしても、神獣の毛で作られたブラシですか……」



 アリシアはビックリしているが、俺は気にせず子供達の組紐を外して髪を梳いていく。途端にトロンとした目になり、そのまま寝てしまう蓮。綺麗に整えて寝かせたら次はイデアだ。同じ様にして眠らせ、最後はアリシアを梳く。


 アリシアも流されるまま髪を梳かれ、そして完全に眠った。上手く流れで眠らせる事が出来て良かった。アリシアをベッドに寝かせるついでに【昏睡】を使って深く眠らせたら、隠密の4つの技を使って窓から外に出る。


 俺は素早く侯爵家の屋敷に行き、呪われた跡取りを探すと簡単に見つかった。身長は2メートルを超え、全身毛むくじゃらで完全に狼だ。漫画やアニメで登場する二足歩行の狼であり、正にそのものの見た目をしている。


 俺はその狼を【浄化】していく。すると、何故かは分からないが塵のように消え去ってしまった。まるで空気の中に消え去っていった<ドクロの花>の女ボスと同じ結果だ。この結果に俺は首を捻りつつも、宿へと戻っていく。


 終わったから良いんだが、何故<ドクロの花>の女ボスと侯爵家の跡取りは消えたんだ? そして何故アリシアは呪いが消えて元に戻った? 妙な結果だが、とりあえずさっさと帰って寝るか。


 俺は部屋の窓から戻り、すぐにベッドに寝転がって部屋と体を【浄化】。それが終わると目を瞑り、とっとと意識を手放した。おやすみなさい。



 <呪いの星21日目>



 おはようございます。今日はゾルダ町を出て獣国へと移動していく日です。おそらく獣国でも呪われた人は居るだろうから、それらを【浄化】しつつ進む事になるだろう。といっても、カーナント王国も総浚いした訳じゃないから、取りこぼしはあるだろうけど。


 朝の日課を終わらせた俺は、紅茶を淹れて飲みつつ今日の予定を考える。買い物をするので、この町で買っていく物を確認しているとダリアが起きたようだ。水皿に神水を入れてやると美味しそうに飲みつつ、半分ほど飲んだら膝の上に乗ってきて丸まる。


 そうしているとフヨウが起きてきて、水皿に残った神水を吸い上げると首に巻きつきにきた。しばし2匹とゆっくりしていると、次に起きてきたのはアリシアで驚く。コップに紅茶を入れて飲みつつボーッとしていたが、突然覚醒したのか手で髪を触り始める。


 寝癖は大丈夫だと言うと、途端に安堵した顔をし大人しく紅茶を飲む。少し経った後で蓮もイデアも起きてきたので、部屋を片付けて出発の準備を行う。紅茶を飲み終わったら全て片付け、食堂へと移動し中銅貨6枚を支払い席に座る。


 雑談しつつ待っていると、突然複数の兵士が店の中に入ってきた。



 「ここに昨夜、何かの異変があった事を知っている者はおるか!! おるならば、こちらへ来い!! ……居ないのか!! 昨夜、何かの異変を感じた者はおらぬか!!!」



 何時まで経っても誰も名乗り出ないからだろう、兵士は食堂から出て行った。周りは「何だあいつら?」という話をしているが、俺はスルーしている。俺の態度で子供達も2匹もアリシアも理解したらしい。俺が異変に関わっていると。


 朝食を終わらせると、すぐに俺達は町を出る為に移動を開始する。買い物がしたかったが仕方ない、国境前のデカート町で買い物をしよう。そう思い町の入り口へと行く。


 門番が1人1人調べているが、この町はダンジョンがあるので朝から町を出る奴は珍しくない。俺達も調べられたが「ダンジョンに行く」と言って終わりだ。


 そのまま町を出て北北東に進みつつ、町から見えなくなったら西へと走る。町から西への道に出ると、全員が異変について聞きたそうにしているので【念話】で話をしていく。



 (昨夜、皆が寝た後に侯爵家の屋敷に行ったんだよ。実際に跡取りが本当に呪われたって分かったからな。侯爵家の屋敷には入らず、すぐ外で遠隔浄化を行った訳なんだが……)


 (((訳なんだが……?)))


 (<ドクロの花>という組織の女ボスと同じく【浄化】すると塵のように消えていってな、何も残らなかったんだ。そのまま宿へと戻ったんだが、アリシアと他2人の違いがよく分からない)



 昨夜の事を話した後は、それぞれが考えているようだ。とはいえ3例しかない訳で、そんな少ない数だと答えなんて出せる訳もないしなー。実際に違いなんて王族かどうかとか、人を殺してきているとかぐらいか?。


 それを話すと何とも言えない顔をされたが、違いなんてそれぐらいしか思いつかないぞ? アリシアだけが特殊となると、もっと分からなくなるし。



 「私がオカシイみたいな言い方止めて下さい。それよりも3人中2人が塵のように消えるって怖いですね。私もそうなっていたかもしれないと?」


 「まあ、元々はそのつもりだったんだが、何故か残ったんだよ。勘違いしたかもしれないが、俺の神命は呪いの【浄化】だからな? 呪いを【浄化】したら残る者と消える者に分かれただけだ」


 「え、ええ……」



 流石に殺そうとしたって訳じゃないからな。そうなるだろうと予想していただけで。


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