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何度か鹿と熊と戦わせたが、やはり消耗が激しい為ここで終了。撤退する事となった。俺達は一度28層へと進み、脱出紋から外へと出る。夕方には少し早い時間だったが、俺達はさっさとゾルダ町へと戻りギルドへと移動。獲物を売る。
鹿が一頭で小銀貨3枚、熊が一頭で大銀貨1枚で売れた為、アリシアは物凄く喜んでいる。俺が売った獲物は全部で中銅貨42枚に小銀貨12枚と大銀貨2枚だった。それなりの値段にはなったが、気を入れて狩ってた訳じゃ無いからなー。
その後は俺達の登録証を新たに発行する為、多少の時間がかかったものの、俺とアリシアの登録証はランク6になり青銅製の物に変わった。ランク5を超えて青銅の登録証を持つと一人前と見做されるようだ。熊を狩ったからかね?。
俺達が結構な金額を受け取ってるからか随分な悪意がこちらを向いているが、スルーしてギルドを出たら食堂へ。中に入り中銅貨を6枚支払って夕食を注文したら、席に座って雑談をしながら待つ。
特に興味を持つような噂話も無く、食事が終わったら宿へと戻った。尾行してくる奴等は夜になってからだな。宿の部屋へと戻ったら、早速子供達が後ろを尾行していた奴等の話を始めた。それを聞いてビックリするアリシア。
「やっぱりアリシアは気付いてなかったんだね? そんな事だと襲われちゃうよ? 後ろからあんなに堂々とつけてきてるんだから、少しは気付いてほしいよ、まったく」
「えっと……そんなに分かりやすく跡をつけられていたんですか? ………そんなにですか」
「というより、アリシアは危機感が無さ過ぎるんだと思います。狩人ギルドで高値で売って、多くのお金を受け取っている段階で警戒しなきゃ駄目ですよ。あの時から既に悪意のある連中は目を着けていました」
「イデアの言う通りだ、アリシアは危機感が無さ過ぎる。獲物の売却金に喜んでいたが、実際に周囲からは相当の悪意が向いてきていたからな? 周りも見えずに喜んでるんだ、危機感の無いカモに見られても仕方ない」
「………まぁ、確かに喜んでいましたけど……あの時にそんな悪意が飛んできていたんですか? そうですか」
「アリシアは分かってないの、王女様だったから。ちょっとした事が嫉妬になって変な目で見てきたり、悪意を持って襲ってやろうって考える人の事。もうちょっと危機感を持ってもらわないと困るよ」
「あ、はい。ごめんなさい……」
「蓮はアリシアさんを責めている訳じゃないんです。自覚を持ってもらわないと、ボク達も同類として襲われる場合があるんですよ。襲ってくるヤツなんて大抵バカですから、勝手な思い込みで襲ってきます。周りの人にも迷惑を掛けるんだと自覚して下さい」
「申し訳ありません」
「ま、子供達より危機感が無いんだから、怒られるのは仕方ない。皆そうやって怒られて覚えていくんだ。逆に言えば怒られていなかった今までは、良い意味でも悪い意味でも王女様だった訳だな。こうやって庶民は危機感を持って生きていく訳だ。つまり、これが庶民として生きるって事さ」
「………」
少しずつだが庶民の事が分かってきたかな? それはともかくとして、宿の周囲に鬱陶しいのが張り付いたままだな。よほど俺達のアイテムバッグが奪いたいのか、それとも俺達の金銭を奪いたいのか……。どっちでもいいけど、面倒な奴等だ。
子供達とゆっくりトランプで遊んでいると、うとうとしてきたのか自分達で布団に寝転がった。その左右に2匹が寝たので、俺達もベッドへと寝転がる。部屋と体を綺麗に【浄化】し、目を瞑って【空間把握】を使っていると、ある程度経った後で動きがあった。
外に居た連中が宿の中に踏み込んできたのだ。どうも宿の従業員とは話がついていたらしく、予備の鍵を受け取ってこの部屋の前までやってきた。ゆっくりと音がしないように鍵を開け、部屋の中に入ってきた4人。
アイテムバッグを盗むのか、それともアリシアを狙っているのか知らないが、気の逸れているバカどもに【衝気】を使って気絶させる。その4人には手枷と足枷を嵌めておき、宿の従業員も遠隔で気絶させておく。1人だったので夜番のヤツなのかね?。
その5人を【念動】で浮かせて中庭に出したら、【止音】を使いつつ【白痴】を使って聞き出し殺害する。やはり予想通り、侵入してきた奴はスラムの連中で、従業員は金を貰っていたらしい。子供のお駄賃程度で殺される事になるとはバカなヤツだ。
5人を殺した俺はアイテムバッグに死体を入れ、一度部屋へと戻る。敵は倒す。これが俺の基本行動だが、相手が犯罪者なら話は別だ。犯罪者が敵なら殲滅。生かしておいても誰も得をしないからな。容赦なく殺す。
隠密の4つの技を使って宿を出た俺は、宿の近くで見張っている奴も全て殺し、悪意や敵意を向けてくる者が居なくなったのを確認してからスラムへ。【衝気】で気絶させてから話を聞き、犯罪者や組織の連中なら殺していく。
一応は情報収集をしながらだが、それでも殺すのを優先しながら進む。それなりに人数が多いので、急がないと寝る時間が減る。睡眠時間が少なくても大丈夫な体ではあるが、正しい睡眠をとるに越した事はない。
殺していきつつスラムを進んで行くと、ようやく組織のアジトっぽい場所以外の掃除が終わった。ダンジョン内で襲ってきた奴等は、それなりに有名というかゾルダ町最大の組織の連中だった。それでも100人に満たない程度の連中でしかないが。
アジトに侵入後も片っ端から殺害していき、さっさと終わらせていく。【探知】を使っているので俺から逃げられる奴なんていないし、何処に居るか全て把握しているので見逃す事も無い。そのままアジト内の連中も殺し、ボスの部屋へ。
中に4人いるが、女が3人に男が1人だ。部屋の中の連中を全員気絶させ、手枷と足枷を嵌めたら聞き取りを開始。女3人も組織の奴で、何人も人を殺してきていたので首を刎ねておく。
死体を放り出したまま、俺はボスの男を【覚醒】で起こす。起きた男はキョロキョロしたものの、床の死体にギョッとし、俺を射殺すように睨んでくる。動こうとしたものの、枷を嵌められている事に気付き「チッ」と舌打ちをした。
「テメェ何処の組織のモンだ! ここまでの事をしてどうなるか分かってんだろうな! 入り込む手管は認めてやるが、俺が騒いだらテメェは終わりだぞ」
「騒ぎたいなら、好きなだけ騒げ。お前を助ける者なぞ誰もいない。……ほら、早く騒げ」
「チッ、オレ様に何て口をききやがる。おい!! 誰かいねえか!! 居たらさっさと来い!! 誰かいねえのか!!!」
その後も必死に騒ぐが誰も来ない。そもそもコイツ以外スラムには誰もいないのだから来る訳がないし、そもそも【止音】で音が漏れるのを止めている。つまり、コイツを助ける者など存在しないし気付く者もいない。
「クソッ!! いったいどうなってやがる! 侵入者ぐらいさっさと殺しておけってんだ!!」
「残念だったな、そもそもスラムにはお前以外生きている奴はいないぞ? ……ああ、俺も生きているから2人だな」
「は? 何だこのバカは? 誰かいねえのか!! いったい何処に行ってやが……」
俺は目の前に殺してきた奴等の死体を大量にぶち撒けてやる。途端に声も出せなくなった組織のボス。ようやく自分以外が皆殺しにされたのだと自覚したようだ。急に俺を怯えた目で見てくる。
今さら事態を把握しても遅すぎるし、俺を狙った下っ端が居た事が全てだ。敵に容赦をする事が無いのは、そうしなければ守れないからでもある。
だからこそ、俺は俺の守りたいものの為に敵を殺す。




