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 朝食後、準備を整えてカマクラなどを壊し出発する。少しするとシルト村が見えてきたのでスルーし、更に先へと進んで行く。オック町、セトゴ村と進んで、途中で昼休憩を行う。通る者達にジロジロ見られながらも食事を終えて、再び移動を開始。


 ヤント村を越えて、夕方ギリギリでドベク町に着いた。門番に宿の場所を聞き、すぐに宿へと直行するも6人部屋しか空いておらず、仕方なく6人部屋をとった。従業員に中銅貨8枚を渡して部屋を確保し、近くにあるという酒場へ行く。


 中に入って中銅貨9枚分の食事を頼み食べていると、女性が出てきて歌い始めた。よく分からない聞いた事の無い歌だが、アリシアいわく英雄譚の一節らしい。ロードエルネムとかいう人物の英雄譚だそうだ。



 「すごいんですよ? 一代で国を築きあげてロード、つまり君主にまで上り詰めた方です。昔のこの辺りに国があったとされているんですが、最後の愚王が国を傾けてしまい……」


 「よくある話だなぁ。その最後の愚王だって国を傾けたくて傾けたんじゃないと思うぞ? その時には最良の判断だと思っても、後で考えてみると大失敗だったって事はよくあるからな」


 「おい、兄さんよ。ロードエルネムが築き上げた国を滅ぼしちまったんだぞ? そのうえ最後の愚王は贅沢三昧する事で有名な奴だったんだ。それが愚かじゃなきゃ、いったい何だって言うんだ?」


 「普通だろ? そもそも王様が贅沢するなんて普通の事だ。この国の王様だって庶民に比べたら贅沢してる。だがな、そんなのは当たり前の事だ。それだけで愚王にはならんよ。結局、愚王と呼ばれる理由は国が滅んだからだ」


 「国が滅んだから……ですか?」


 「ああ。そもそも国を滅ぼしたい王なんていない。それでも国同士の関係だったり色々あって国は傾くんだよ。いや、違うな。正しくは愚王の前から傾いてたんだ。愚王は”とどめ”となっただけだ。国なんて早々傾かない。傾くなら何代にも渡ってだ」


 「「「「「………」」」」」


 「つまり、最後の王だから愚王と呼ばれてるだけで、実際に国を傾かせ始めたのはもっと前の王だ。おそらくだが、その王こそが本物の愚王だよ。最後の王は生贄のようなものだ。歴史に残り、散々馬鹿にされ続けるための生贄」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「おっと雰囲気を悪くしてすまんな。代わりといったら何だが、俺が支払いを持とう。好きなだけ飲み食いするといい」


 「本当か!? アンタ良い奴だな! ありがとうよ!! 太っ腹な兄ちゃんにカンパーーーイ!!!」


 「「「「「「「「「「カンパーーーーイ!!!」」」」」」」」」」



 俺達はさっさと食事を終え、酒場のマスターに中金貨を1枚渡す。流石に酒場のマスターも多すぎるって事で返され、代わりに小金貨2枚を提示された。俺は素直に払ってさっさと酒場を出ると、宿に戻ってゆっくりと休む。


 子供達は大きなお金を払って良かったのか? という顔をしているが、そもそも盗賊から奪ったものだから問題無い。社会に還元しているだけだと言うと納得した。アリシアは先ほどから考え込んでいるようだ。



 「いえ、本当の愚王は傾きの始まりの王だと仰っていたので思い出そうとしていたんですが……思い出せないんですよね。いったい、どの王だったのか……」


 「残念ながらそういう王は大抵の場合、名前が残っていなかったりするんだよ。本当の愚王だが、表面上は問題無かったので目立たないのさ。傾きを直そうと次代の王が失敗し、更に次の王が苦境に立たされる。最後の王はどうにもならない状態からのスタート。という可能性もあるって事だ」


 「可能性と言う割には断言している気もするんですけど? とはいえ、考えさせられるのは事実です。今までは私も愚王の所為で国が滅んだと思ってましたけど、果たして本当にそうなのか……」


 「俺がもともと居た星では、とある国の最後の王様は民衆に反乱を起こされ処刑されたが、国の財政を傾かせたのは処刑された王の祖父と父親だった。処刑された王が継いだ時には、もうどうにもならなかったとも言われている」


 「………どうにもならない状態で渡されて、民衆に反乱を起こされて処刑された、と? それは……どう考えても処刑された王の責任じゃありませんよね?」


 「まあな。この話は祖父と父という比較的近い人達だから分かっているが、才能のある人達が必死に延命していたら、もっと長く保ったかもしれない。となると、何代前か分からないだろ?」


 「まあ、確かに……」



 子供達は既に舟を漕いでいたので布団を敷いて寝かせる。ベッドが余ってるのに布団? と思うかもしれないが、ベッドは硬いんだよ。布団は適度に柔らかくて寝やすいので、子供達は基本的に布団で寝かせている。自分の分の布団も作りたいんだが、綿がな。


 布団は綿が安い獣国までお預けだ。流石に耐えられない訳でもないので、無駄に高い買い物をしてもしょうがない。部屋と体を綺麗に【浄化】したら、おやすみなさい。



 <呪いの星18日目>



 おはようございます。今日もダンジョン目指して西に進んで行きます。それにしても何だかんだといって、この国もそれなりには広いな。アリシアが遅いというのもあるんだけどさ。思っている以上だった。


 それはともかく、朝の日課を終わらせてさっさと紅茶を淹れよう。紅茶をゆっくりと飲んでいると蓮が起き、部屋を出たらイデアが起きた。その後は立て続けにダリアとフヨウが起きて、あっと言う間に静かな時間は終了した。


 皆が神水や紅茶を飲んだりしてゆっくりしているのに、誰かさんは一向に起きてこないな。身体強化が下手だから、その分お疲れなのかね? そんな事を考えていたらのそのそ起き上がり、部屋を出て行った。また寝癖が酷かったんだが……。


 戻ってきたアリシアに手鏡を渡すと怒り始めたが、起きたら直ぐに部屋を出ただろうと言うと文句を引っ込めた。すぐに出た記憶はあるんだろう。それなら文句を言わなきゃいいのに。まあ、反射で出たんだろうけどさ。


 神水を使いつつ手櫛で直している間に部屋を片付け、終わったら宿を出た。昨日の酒場に行き、中銅貨8枚でそれなりの朝食を食べる。毎回俺が食事を【浄化】しているが、不味い水で料理をされた後だと、味の変化は殆ど無いんだよな。綺麗になるだけで。


 朝食後、ドベク町を出て西へと出発。ナトイ村、モーリ村を越えた途中で昼食を食べ、再び西へ。夕方前にはゾルダーク侯爵家の領都、ゾルダ町に到着した。なかなか時間が掛かったと言うべきか、それとも早かったと言うべきかは迷うな。


 普通の人に比べれば遥かに早いが、俺と子供達だけならもっと速く移動できたろう。まあ、今さらどうこうと考えても仕方ないので、さっさとゾルダ町に入るか。そう思い入るのだが、いやに活気の無い町だな。儲かってる侯爵領の領都だろ?。


 不思議な気分になりながらも宿へ。2人部屋を10日間とり、小銀貨2枚を払う。部屋を確保できたので従業員にこの町が沈んでいる理由を聞くと、ゾルダーク侯爵家の唯一の跡取りが寝込んでいるらしい。洩れ伝わる話だと呪われたんじゃないかという事だった。


 アリシアの顔を見ると、何か言いたそうな顔でこちらを見ている。嫌な予感しかしないぞ? どうするべきなのやら……。子供達も「どうすんの?」っていう顔で見てるし。俺としては関わりたくないんだがなー。


 ダンジョン攻略後とかならまだしも、着いてすぐコレかよ……。とはいえ、よく考えたらゾルダーク侯爵家にコンタクトをとるのは無理じゃね? 俺達の立場は平民だぞ?。


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