0174
「あのさ、アレって……お客さんが……こう、後ろから刺され」
「違うっ! 私はそのような事などしないっ!!」
「あ、ああ。ゴメンね。そういう可能性もあるのかなーって……」
「まあまあ。ゴメンなさい、私の言い方が悪かったわね。そうじゃないのよ」
「ディルは簡単に言うと、愛するご主人様に跪いて御奉仕するのが大好きなのさ」
「//////」
「あー、うん。そういう人だったんだね。世の中にはそれなりに居るって聞くから、そこまでアレじゃないと思うんだけど?」
「ディルの場合は結構重いんだよ。かなりの本気であるうえに、本物なんだ。アタシの好みも似たようなものだけど、ディルほどじゃないね」
「えっ!? ダナさんもそういう人だったのかい!?」
「そうだよ。やれ神眼族だ、不老長寿だ、剣の踊り子だと言われてきたけどね、アタシは愛しい人の傍に居たいだけの女さ。いつでもどこでも好きに使われたいし、染められたいんだよ」
「ダナも結構重いですよ? まぁ、全員重かったんですけどね」
「仕方ないさ。長い時間探し続けたんだし、本気であればある程に重くなるのは当然の事だよ」
「ええ。軽い気持ちのものなんて、愛情とは呼ばないわ」
「うん……。今なら分かるな。男がどうのこうのと何を言っているのかと思っていたが、今ならとてもよく分かる」
「……お客さんも大変だね」
「そうですかね? そこまでじゃないですよ。少なくとも最後の一線を越えないのは分かってますから」
「アルドが言うのは、越えたらグサッとされる一線だろ? それはないよ、あり得ない」
「「「「うんうん」」」」
後ろからグサッとされるのは嫌だけど、それがない以上はそこまでおかしな事にはならないだろう。何より深い愛情と病んでるのは、思っている以上に差があるものだ。
致命傷を与えてる時点で愛情じゃないしな。それって唯の殺人だから。唯の犯罪と愛情を、同列に並べて議論する時点で間違ってるのかもしれない。
さて、朝食も終わったし部屋に戻って準備をしよう。部屋で準備を整えるんだが、ディルの防具は青銅の鎖帷子だった。鎖帷子って何だかんだと言って、重いと20キロぐらいはあるんだが……。
そこまで重い防具を身に着けて、手数の多い速度重視の戦い方なのか? 防具の事まで考えてなかったな。取り敢えず今日は確認をするべきだと思うんだが……。
普通は速度重視なら回避優先だと思うんだが、何で重い防具を装備して速度を殺すんだろうな? ディルの里では身体強化をどういう風に教えて、どう使わせているんだ?。
俺達は村を出発し北回りで西のココ山へ行く。ここ最近は大森林などに行っていた為にこっちへ来たのだが、失敗だったかもしれないと今更ながらに思う。
少し前に大量の魔物を殺したので、魔物そのものが少なくなっている可能性を忘れていたのだ。それでも進んで行き、魔物の多い登山道ではなく麓近くで狩りをする事にした。
「こんな所で良いのかい? 向こうの方が魔物が多いけど……」
「ダナ。向こうは前に大量に狩りましたよ」
「それでも、まだまだ多いと思うけどね」
「どうでしょうね? 私達が荒らした所為で周りに散らばったかもしれないわ」
「その可能性は十分にあるよ。当然だけど、魔物だって馬鹿じゃないから強い者からは逃げるさ」
「それ程に荒らしたのか?」
「全部で金貨18枚ぐらいだったかねぇ……」
「そ、そんなに……。どれだけ荒らしたら金貨18枚も手に入るんだ……」
「私達は全員アイテムバッグを持っていますからね」
「そういえば、アイテムポーチは持ってるのね?」
「ああ。これは昔ダンジョンで手に入れた物で、魔物が持っていたのを奪って逃げたんだ」
「「「「………」」」」
「魔物は大量に居て、私1人ではどうにもならない程だったのだ。だからこそ、手に入れるにはそういう卑怯な方法でもなければ無理だった」
「責めたり、馬鹿にしたりしてる訳じゃないよ。ただね、やってる事がアルドと一緒なだけさ」
「アルドも同じなのか?」
「ああ。この大型のアイテムバッグも、大量に居たオークの首魁が持っていた物なんだよ。気付かせずに接近して奪った後、次の層に逃げたんだ」
「私もそうだった。ただ、随分長い追いかけっこをする羽目になってしまったが」
そんな話しをしていると早速魔物の反応があった。この反応はゴブリンか……スルーしても良いんだが、ディルの強さや戦い方を見るには丁度いいな。数も4体と手頃だし。
「右前方からゴブリン4体。ディルの戦いを見せてくれないか?」
「分かった。バックアップを頼む」
「??? ……ああ、分かった」
ディルは前に出てゴブリンと戦う……のだが、何というか遅い。ゴブリンの攻撃を受け流す事に集中している所為なのか、攻撃が散漫な所為で数がなかなか減らない。危な気はないが……。
皆も微妙な表情だ。対人戦ならもっと早くに決着が着いているだろう。でも、これは魔物との戦いだ。当たり前の事だが、人間とは違い少々の傷では怯んでもくれない。
その為に致命傷を与える隙がなかなか作れないんだ。1対4でもあるので余計に膠着状態に陥ってしまっている。多数との戦い方も微妙に分かってないな……コレは。暗殺主体の戦い方なんだろう。
おっ、無理をして1体倒したな。そこからは均衡が崩れて一気に決着まで行った。やっと終わったが、最初から一気に行ってたら、もっと簡単に終わってただろうに。妙な戦い方だなぁ。
「お疲れー。……どしたんだ?」
「バックアップを頼んだだろう!」
「……えっと、あの状況でバックアップ要る?」
「「「「要らない」」」」
「えっ!? いや……要るだろう!」
「要らないね。そもそも何で最初に突っ込んで1体倒さなかったんだい? アルドが4体って言ってくれただろうに」
「更に言えば、武器が良いんですからさっさと踏み込んで戦えばいいでしょう。にも関わらず、無意味な小さい傷を負わせるだけ」
「その所為で、いつまで経っても終わらない泥仕合になってたわね」
「最初から間違ってるうえに、戦い方もなっていない。総じて言うと話にならない」
「………」
「暗殺者としてなら、そこまで間違ってはいない。でも傭兵としては失格と言わざるを得ないな。………うん?」
どうも戦闘音の所為で魔物が寄ってきたらしい。丁度いい事にコボルトが4体来ている。ここはダナに任せて、戦い方というものを学んでもらおう。それが1番良いだろう。
「左からコボルト4体。ダナ、両手に武器を持って手本を頼む」
「了解」
ダナはアイテムバッグから、大脇差と脇差を出して両手に持つ。身体強化を使い左端のコボルトに一気に接近して首を刎ねた。その瞬間コボルト達は全身を硬直させて固まった。
当然その隙を逃すダナじゃない。次のコボルトに接近して、左の脇差で首を半分以上斬り裂いて放置する。後は残っている2体の首も刎ねて終わりだ。所要時間は2分もない。
「どうだい? これが多数との戦い方さ」
「そ……そんな、馬鹿な……」
「事実は事実だ、受け入れろ。それに、ディルも修行をすればあれぐらい出来るようになる」
「本当か!?」
「あ、ああ。当然だろ。ただ、身体強化の正しいやり方から覚えてもらう必要があるがな」
「正しい身体強化?」
「決まった動作中に身体強化をするのではなく、普段の生活でも身体強化が出来るようにするんですよ」
「???」
「こういう事よ。こうやって戦いの動作中ではなくても、身体強化が出来るようにするの」
「!!!」
「どうして決まった動作中しか身体強化をしないんだろうな? 誰かが気付いても良さそうなもんだが……」
間違った身体強化を流布した奴が居たんだろうか? それとも間違って伝わったんだろうか? 身体強化そのものは出来てるんだよなぁ……何でだ?。
▽▽▽▽▽
0174終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨68枚
大銀貨92枚
銀貨54枚
大銅貨109枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ