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 急ぎ足で進んでいき森の中に入って行って見つけたのは、体高2メートルを超える大きな狼だった。姿はシンプルで熊の様に触手は生えていない、ただし目が6個もあるが……。何だか虫みたいな感じになってるな。これはこれで気持ち悪い。


 アリシアが「ヒッ」と言葉を発したが、向こうは唸りながら臨戦態勢に移行する。既にこちらには気付いていた筈だが、こちらが分からず様子見をしていたのだろうか? まあ、俺が手加減してやる必要性は何処にもない。


 体を低くして唸りを上げている呪いの狼を、そのまま【念動】で固めて【浄化】する。急に力で押さえられたからだろう、呪いの狼は暴れるものの拘束を解けない。その間に一気に【浄化】した俺は、死亡を確認してから近付く。


 前の星で散々浄化してきたからか、そこまで呪いの魔物に苦戦しないな。こいつは白くなったからいいが、あの触手熊が白くならなかったのには、何か理由があるんだろうか? よく分からないが、あいつの皮は【分解】して正解だったと思う。


 何か嫌な感じがしたんだよな、あいつの皮。ま、思い出してないで今は処理と加工が先だ。俺は綺麗に血抜きをした後、皮を剥いで肉を冷凍する。腸も冷凍し、爪や牙は一纏めにして一旦保管。まずは皮からだ。


 俺は表面の毛などを【分離】して綺麗にしたら、皮の内側にある脂肪層も【分離】して捨てる。次に【念動】で揉みながら【乾燥】と【浄化】と【熟成】を行えば、ソフトレザーの出来上がりだ。モドキだろうが何だろうが、これで次の工程へ。


 俺は皆の手に合わせた指貫グローブを作り、それぞれに渡していく。そして心臓を薄くスライスして渡す。やはり俺達には効果が殆ど無い為、最後にアリシアに残りを食べさせた。物凄く嫌そうな顔をしたものの、目を瞑って必死に食べるアリシア。


 嫌なのは分かるが、そこまで嫌そうな顔をしなくてもいいと思うんだがなぁ……。心臓を食べ終わった後、少し経ってから急激にアリシアの体は痛み始める。またもや大幅な改造が行われているが、今回は内臓関連の強化らしい。それでも不老長寿よりは強化幅は低いな。


 そんな事を暢気のんきに考えつつ見守るが、また胸が大きくなってるぞ。今回でギリギリDぐらいまで大きくなってるな。相変わらずだが、必ずと言っていい程に大きくなるのは何なんだろう? 毎回思うが不思議なもんだ。もしかしたら猿の神か何かが介入してるのかね?。


 アリシアは痛みが治まったのか、現在は大きくなった胸を揉みしだいて喜んでいる。周りに目が行っていないので仕方なく「ゴホンッ」と咳をすると、ピタッと止まり「ギギギギ……」という錆びた音がしそうなくらいゆっくりと顔を上げた。


 「キャーーーーッ!!!」と叫びを上げたが、そもそも俺達が居る事を忘れたお前さんが悪い。俺はアリシアがしていたサラシを少し借りて、白い皮を使って前の星で女性陣の為に作ったのと同じブラジャーを作る。相変わらず吸い付くようにフィットするので、問題なく使えるだろう。


 アリシアは最初変態を見る目で見てきたが、蓮がメル達も持っていたと言うと黙った。その後は蓮が着け方を教えると、着けて便利な事を理解したらしい。むしろ女性陣の為にかなり作ったからな。これに関しては作り慣れている。



 「それもどうかと思いますけど、女性達が居たんですね? その女性達は何処に? 置いて逃げたんですか?」


 「何だか妙にトゲのある言い方だな。女性陣は神界で神様達から本格的な修行を受けてるよ。そもそも女性陣も不老長寿だし、俺と同じく1000年でも2000年でも生きるしな。多分だけど、修行が終わるのに200年ぐらいは掛かるんじゃないか?」


 「に、にひゃくねん………」


 「そもそも俺達も不老長寿だから好きなだけ生きられるし、最初に会った時この星の浄化に来たって言ったろうに。子供達は実地で修行。女性陣は神界で修行。俺は呪いの浄化。それを神様達から命じられている」


 「そう、なんですか……。まあ、何となく分かりました。200年は修行に掛かるんですね」


 「いや、絶対じゃないぞ。ただ、俺はそれぐらい掛かった筈だし、皆が皆、全部に才能がある訳でもない。それに俺は無理矢理やらされたが、皆が普通にやらされるなら時間がかかるだろうしな。そういう意味で同じ200年ぐらいと言っているだけだ」


 「は、はあ……まあ、分かりました。……………200年は大丈夫」


 「それよりも食べ終わったし着け終わったんだから、そろそろ行くぞ。それと、この予備とサラシの余りを返しておく」


 「あ、はい!」



 そして俺達は森の中をウロウロしつつ獲物を狩り、開けた所で早めの昼食作りを始める。かす肉入りの野菜炒めと、かす肉を【粉砕】して入れた野菜スープに、秋刀魚モドキの一夜干しと雑穀飯。


 俺は秋刀魚モドキを焼いた後、呪い熊の腸と呪い狼の腸でかす肉を作っている。呪いの魔物の腸だけあって良い匂いがしてくる。雑穀飯を炊きながら近寄ってきては、蓮は香りを吸い込んで楽しむ。……君は料理に集中しなさい。


 アリシアでさえチラチラこちらを見るだけで近付いてこないというのに。それにしても野菜炒めをしっかり作ってくれないか? 手が止まってるぞ? そう言ってアリシアにも料理に集中するように釘を刺す。


 2人揃って集中出来ないってどういう事だよ。イデアは黙々と作ってくれてるっていうのに。



 「いや、早く作らないとその分昼食が遅れますから当然ですよ? 蓮やアリシアは昼食を遅らせたいんでしょ?」



 それを聞いた瞬間、キビキビ動いて料理を作って行く2人。昼食が遅れるのはイヤなんだな。まあ、誰でもそうだとは思うけど、自分達の所為だと気付いたか。というか、疎かにされると美味しい物が食べられないのも分かってなかったみたいだな。


 俺の一言で更に真剣に料理をする2人。不味い物は食べたくないらしい。これも当たり前だけど。さて、かす肉作りはそろそろ終わりだから、どこかを手伝うか。


 ……料理が終わったので皿に盛って土のテーブルに乗せていく。雑穀飯とスープをそれぞれの椀に盛ったら、いただきます。



 「かす肉の新しいのはまだだけど、このミニボーアのかす肉も美味しいね。もちろん呪いの魔物とか龍のかす肉には勝てないけど、でも食堂の料理に比べたら十分に美味しい」


 「まあ、当然と言えば当然なんだけど。でも、食材が前の星より悪くても、水だけで料理が美味しくなるのは助かるよ。美味しくない料理を食べ続けるのって、本当に地獄だと痛感したし」


 「そこまで言いますか、と思うのと同時に仕方ないとも思えますね。普通に食べてきたんですけど、今の料理と比べると……。何だか色んな部分で美味しくないんですよね。このかす肉なんて食べた事ないのに、こっちの方が美味しいんですよ」


 「野菜の水分だけで作るっていう料理もあるんだけど、仮にそれをしても意味が無いんだよな。食材にも呪いが含まれてるから、野菜の水分だけで料理しても不味い物しかできない。呪いをどうにかしないと、料理は八方塞がりだろう」


 「お料理得意な人が頑張っても美味しくならないみたいだし、呪いって邪気よりも大変だね。前の所でもそうだったけど。でも邪気と混ざってないだけマシかな? 邪気と混ざったら強さが変わっちゃう」


 「ああ、それがあったんだったね。アルドさんが前の星のダンジョンで戦ってたけど、呪いと濃い邪気を持っているヤツって滅茶苦茶強くなるから……」



 本当にな。とはいえ酒呑童子クラスが出てこないとも限らないのが、何とも言えないところだ。


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