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 現場に着いて見たものは、熊の姿に触手の付いたおかしな姿の存在だった。その触手の先が口みたいに広がり、殺した人間種の肉を貪っている。俺達に気付いたソイツは直ぐに攻撃しようとしてきたが、俺が【念動】で強引に止める。


 その瞬間、一気に全力で【浄化】してやると、簡単に死亡してしまった。少し待って様子を窺うも、その触手熊が消滅する事は無かった。俺は近付き詳しく調べるも、呪われた魔物と大差ない事が判明。短剣で胸を切り開き、心臓を取り出す。


 子供達は直ぐに分かったのだろう、若干嫌な顔をしたが諦めた。俺は心臓を薄くスライスして食べ、子供達と2匹にも食べさせた。大した効果は無く、微量に魔力と闘気が増えただけで終わる。やはり俺達の大幅な強化は無理か。


 俺がアリシアに渡すと拒絶したが、俺は【人形】を使って無理矢理食べさせた。申し訳ないが強化のチャンスを棒に振る訳にはいかない。全て食べさせて解除すると吐き出そうとしたので、無理矢理に止めて様子を見る。


 アリシアは激怒して文句を言っているものの、途中で体を抑えて呻き始めた。俺は蓮にアリシアのサラシを外すように頼み、イデアと共に後ろを向いておく。体が頑強になり、猛烈に筋肉などの質が変わっていっている。呪いの魔物だったからだろう。


 効果が高い所為で、その分痛みが大きいのは仕方ない。胸もAAぐらいだったのに、今はCぐらいまで大きくなっている。相変わらず人体改造レベルで変化するなぁ。そんな事を暢気のんきに考えていると痛みが治まったらしい。



 「………はぁ、はぁ、はぁ。何て物を食べさせるんですか!! あれほどの痛みが襲ってくるという事は相当に良くない物だったのでしょう!! そんな物を無理矢理に食べ「でも、変わったろ?」させるなんて……」


 「魔力と闘気が増大し、体が頑強になって筋肉の密度が増え、胸も大きくなったろう? それだけの事が起きるんだから、痛むのはしょうがない」


 「………えぇーーーーーっ!?!!?!?!」



 ビックリして大声を上げたが、【止音】を使っているので遠くまでは響かない。それはともかく、視覚と触覚で分かりやすいのか、胸を触って呆然としている。まな板と言って差し支えなかった胸が、十分に膨らんでるんだからビックリするか。


 それはいいんだが、揉みしだいたり、揺らしたりするのは止めなさい。子供達もジト目で見てるだろ?。



 「……ゴホンッ! いったい何があってこんなことになっているのでしょう? 先ほどの怪物熊の心臓を食べたからなのでしょうが……何故?」



 俺は前の星の事も踏まえて教えてやる。邪気や呪いに汚染された魔物は強力な力を持つが、その邪気や呪いの汚染を一番強く受けるのが心臓である事。そして完全に浄化しきって食せば、その強さを手に入れられる事。



 「もちろん限度はあるが、明らかに普通の者よりも強くなれる。何度も食べれば、その分魔力や闘気は増大していくんだ。体も綺麗になり、胸が大きくなったり、背が高くなったりもする。ただ、絶対にバラすなよ? 死ぬぞ?」



 俺は懇切丁寧に女性の美に対する恐ろしさを教えてやる。自分が美しくなる為なら、人を殺して生き血を浴びる者さえ居るという事実を。美人を殺して生皮を剥ぎ、それを纏おうとする者など。美に対する執着は異常だと丁寧に教えてやった。


 その結果、顔面蒼白でコクコク頷くだけになっている。まあ、話を聞けば当然ではあるが、実際に実在したと言われているしなぁ。一部の異常者ではあるが、その異常者がいないなんて誰も言えない以上は、警戒するに越した事は無い。


 呪いの熊の肉を手に入れて冷凍し、腸も冷凍して収納。それ以外は穴を掘って燃やしていく。【浄炎】で燃やし、残ったものを【粉砕】。そして最後に埋めて完了。それにしても、何故呪われた魔物と戦ってたんだろう? 普通は逃げると思うが……。



 「討伐のお仕事でもあったんじゃない? 狩人ギルドに、そんなお仕事が張ってあったんだと思う」


 「ボクもそう思います。さっきの人達は戦ってましたけど、それ以外の狩人は見当たりませんし。おそらくですけど、偶然遭遇したので今の内に倒してしまおうとしたんだと思います。どちらかというと、賞金首でしょうか?」


 「ああ、成る程。賞金首な。それなら分かる。で、手を出したら全滅させられた……と。典型的なアホだなー。普通は相手の実力が分からない以上、逃げるのを前提にするだろう。それとも、あの触手で逃げられなかったのか?」


 「あれ、怖かったですね。先端が口になっていてギザギザの牙が何本も見えてましたし、かじりついて貪ってましたよ……」


 「自分で言って、気分を悪くしてどうするよ……。それはともかく身体強化の練習に身を入れろ。アリシアが遅い所為で移動速度が遅いんだから、もうちょっと気合入れて練習してくれないか?」



 それ以降は歩きながら黙って黙々と練習するアリシア。そうそう、真面目に練習しなさい。子供達も段々とだけど、遅い移動に飽きてきているんだ。このままだとイライラするだけになる。それはいい事じゃないんでな、早めに走る程度は頼む。


 その後も練習をさせていくが、歩きながらの身体強化が出来るようになったところで終了。ヌイル町に到着した。門番に小銅貨5枚を支払い町に入る。町の人に宿の場所を聞き、お勧めの宿に向かう。


 スラムの近くだが、ここが一番安いようだ。アリシアが怪訝な顔をするが、アリシアの事がバレないのもここだと言うと納得した。仮にアリシアの顔に気づく者が居ても、こんなスラムの近くの宿には来ない。


 一泊中銅貨2枚だったので2部屋とろうとしたら、アリシアから1部屋で大丈夫だと言われた。まあ、アリシアがそう言うならいいかと、1部屋とって中銅貨2枚を払う。次に狩人ギルドに行き、アリシアの狩人登録をしておく。


 実際いちいち門番のところで税を払うのもウンザリなので、今の内に作っておきたい。村にあるのは買い取り出張所みたいなもので、登録は町じゃないと出来ないんだ。面倒だがしょうがない。


 小銀貨1枚を支払ってアリシアの登録を行い、終わったら外に出る。子供達が狩っていたミニボーアを出したらあっさり正式登録された。子供達には代わりに呪いの熊の肉を渡したので、文句は一切言われていない。


 そのまま食堂に行き、中銅貨6枚を支払って夕食を注文する。出てきたのはチャパティみたいな物と、スープに肉だ。食べてみるものの、雑穀飯ほどの違和感は感じない。生地に油が使われているからかな? それなりに食べられる。


 子供達もこういう物と考えれば食べられるらしく、特に違和感は無いようだ。アリシアに関しては……駄目だ。どうも俺達が料理した物の方が美味しいからか納得していない。気持ちは分かるが、諦めなさい


 そんな食事を終えて宿の部屋へと戻る。アリシアは納得していないようなので、適当にチーズを渡し口直しをさせてやった。しかし、よく食うなー。呪いの魔物の心臓を食ったからいいけどさ。普通なら太るぞ。


 ………いや、停止されても困るんだが……。そりゃ大量に食えば太るだろ。今は呪いの魔物の心臓を食べてるから多少食べても問題無いが、今まで通りの体なら太っている可能性はある。


 頑強になった体は、その分多くの栄養を必要とするから食べても大丈夫なんだ。呪いの魔物の心臓を食べて更に頑強になれば、もっと多くを食べても大丈夫になる。そう言うと、アリシアも呪いの魔物をロックオンした気がする。


 かつての女性陣のように美でロックオンではなく、食でロックオンは初めてかな? コイツも変わってるなー、と心の中で思っただけなんだが、何故かコッチを向いたので慌てて感情を消す。


 何かしらの能力でも持ってんのか? と思うくらい反応が早かったなー。


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