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 ルル村に入って宿へと直行。すると、部屋は空いていなかった。仕方なく食堂に行こうと思ったが、美味しくない食事を嫌がった子供達の言葉もあり、さっさとルル村を出る。門番には止められたが、気にするなと言ってさっさと出た。


 アリシアを背負って街道を走り、ある程度ルル村から離れたらカマクラと焼き場を作る。【光球】を使って料理を作るのだが、蓮には麦飯を、イデアとアリシアにはミニボーアと大きな鹿肉を薄く切ってもらう。


 俺はお馴染みのタレを作りつつ、スープ作りだ。今日は野菜を煮込みつつ出汁をとり、その後に追い野菜をした野菜オンリーのスープを作る。【抽出】と【熟成】を使っているので、野菜だけでも十分に美味い。


 後は焼肉用のタレを作り、肉の量産の手伝いにいく。アリシアはたどたどしい動きで怖いが、自分達の食べる物を作っているのは分かるのだろう、物凄く真剣だ。もうちょっと肩の力を抜いた方が上手くいくんだが……。


 それはともかく御飯が炊けたので椀に盛り、焼き網で肉を焼いていく。焼けたら皿に取って、いただきます。



 「ん~~~!! やっぱり御飯は美味しいね! せっかくなら美味しくない食堂より、美味しい料理を作るべきだよ。一日に一回は自分達で料理を作らないと駄目。美味しくないのは我慢できない!」


 「ニャー!!」 「………」


 「言いたい事も気持ちも分かるけど、蓮の場合はお米が食べたいだけでしょ? 本当に気持ちはよく分かるし、水が不味いのがここまで美味しくない原因になるとは思わなかったけどね。それに呪いが溶け込んでるから不味いなんて思わなかったよ」


 「そうだな。唯でさえこの星を呪いが覆ってるっていうのに、その呪いの所為で不味い水しかないっていうのも、とんだ笑い話だ。まあ、人間種には呪いを浄化する能力もあるし、少しずつは減ってるんだろうけどな。とはいえ……」


 「「「「「???」」」」」


 「いや、【呪魂環】っていう呪いの塊が壊れたにしては、呪いの量が少ないと思ってさ。どこか分からない所に溜まってる気もしないでもないんだよな。ダンジョンなのか何処なのかは分からないけど」


 「えっと、つまり……?」


 「【世界】は【呪魂環】を壊した訳だが、それは兵器利用させない為じゃないかと思うんだ。少しずつ呪いを漏らして浄化させようという、神様達の方針は維持してるって事さ。つまり、何処か人間種には手を出せない所に、呪いを溜めこんでるんじゃないかって事だ」


 「それを見つけて、アルドが【浄化】するの?」


 「多分な。まあ予想の一つでしかないけど、それでも健康に多少の害があるっていう程度で済んでるのが不思議でさ。神様が封印したなら莫大な筈なんだよ。それが星中に散ったのなら、人間種は死滅してるか狂ってないとおかしい」


 「神様に選ばれて下界に下ろされるというのは、それ程までに知識が無いと駄目なんですね。あっ、このお肉美味しい!」


 「「「「「………」」」」」



 なかなかいい根性をしてると思うも、単に空元気なだけかもしれないので何とも言えないところだ。それはともかく、思っているより食うな? 別に悪くはないが、次から多めに炊いて貰うか。



 「すみません。思っている以上に美味しくて。ハッキリ言って、お城の料理より遥かに美味しいです。先ほど水が違うだけでと言っていましたけど、本当にここまで違うとは思いませんでした。水が綺麗なだけで、こんなに美味しいなんて」


 「そもそも浄化魔法を使えば綺麗に出来るんだから、綺麗にすりゃ美味しい料理は作れるだろ。何で浄化魔法を使って綺麗にしないんだ?」


 「浄化魔法なんて、聖国の者しか使えない特別な魔法と聞いているんですが……違うんですか?」


 「この星もかよ……! 本当に碌な事をしないな。いや、もしかしたら邪気が蔓延していない分、前の星よりも悪いかもしれない。聖”国”って事は、国が浄化魔法を占有してるって事じゃないか」


 「「あー……」」


 「ニャ……」 「………」


 「えっと……その反応を見てると、誰でも使えるんですね。とはいえ、魔法自体を私は知りませんので、何とも言えないのですが……」


 「魔法は魔法。誰でも使えるし、知識を持って努力すればいいだけだ。相変わらず占有して権威付けに使ったり、他者を見下す道具に使う奴等が居るなぁ……。碌な連中じゃないが、どうするかね?」


 「また、殲滅?」


 「そうなるかもな」



 食事をしながらする話でもないのだが、これから先の事は考えなきゃいけない事だ。喫緊に解決しなきゃいけない訳じゃないが、行動の指針ぐらいは立てないといけない。とはいえ、今は色々な場所を見て回るしかないなー。


 食事後、魔銀の短剣を解体し、板にして【清潔】の魔法陣を刻む。それを超魔鉄で包み、アリシアに渡しておく。トイレで用を足した後使うように言い、説明したら理解したのか赤面した。といっても、魔法が使えないのだから仕方ない。



 「拭くのは専用の葉っぱで拭くのではないのですか? 私は猿になってから、城の中を流れる川の支流で洗っていたので……」



 詳しく聞くと、城の真ん中に川が流れているらしい。何でそんな所に城を建てたかは横に置いておくとして、その川から支流のような物を作って様々に活用していたそうだ。その一つがトイレであり、王女は自分でお尻を洗っていたそうな。


 それに自分で穴を掘ってしていたとも聞いて、唖然とする。徹頭徹尾、人間扱いをしていない。むしろアリシアが深く考えないタイプで良かっただろう。そうでなければ、とっくに気が狂って暴れている。



 「いや、最初は私も許せなかったし、恥ずかしかったしで大変でした。心の中で様々なものを憎んだし、恨みもしましたし……。ですがそんな生活が続いていくと、何処かで麻痺してくるんです。いや、心が凍るというべきでしょうか。段々と気にならなくなってくるんですよね」


 「それは慣れちゃ駄目だろうと思うも、希望が無いと慣れざるを得ないんだろうな。ま、今は元に戻れたんだから、ちゃんと人間種らしくしような? という事で、コレ使って綺麗にするように。後、カマクラの奥にトイレはあるから」


 「は、はい……」



 あんまり話したくはない話題かもしれないが、きっちり話しておいた方がいい事でもある。すのこをカマクラの中に敷き、その上に麻布と毛布を敷いて準備完了。そういえば洞窟の中で追加の毛布を見つけて良かったよ。御蔭でフカフカ度が増した。


 子供達は美味しい料理で満足したのか、今はトランプで遊んでいる。アリシアにもルールを教えて遊んでいるが、アリシアはトランプにビックリしているようだ。そこは気にせず、子供達と遊びなさい。


 俺はアリシア用の鉄の短剣を作り、革で鞘を作って渡す。アリシアは驚いていたが、細々とした事を行うには短剣が必要だ。それを説明して渡しておく。この星では子供でも護身用に短剣やナイフを持っているとも。



 「子供がですか……そんな事も知りませんでした。少し前にこの星に来た人達より何も知らないとは……」


 「まあ、一国の王女に教える事か? とも思うがな。とはいえ、思っているよりも知らないのは、何処かへ嫁がせる為に余計な事を教えなかったんじゃないか? 俺はそう思う」


 「知らない方が都合よく扱いやすいからですか……。王族の女性なんて、他国に嫁がされて子供を産むのが仕事という事ですね? それっぽい教育はそれなりに受けていますので分かります」


 「ああ。仕方がないっと、子供達が舟を漕ぎ始めたか」



 俺は子供達のトランプを片付け、寝かせていく。蓮とイデアが真ん中、その左右に2匹。その左右に俺とアリシアが寝る。とりあえず遠ければ緊張せずに眠れるだろう。多分。


 俺も眠たいので、アリシアの事は気にせずさっさと寝よう。それじゃあ、おやすみ。


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