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 「お前は苦労の末多くの仲間を犠牲にしながらも、呪われた王女を打ち倒した。打ち倒した王女は少しの間倒れ伏していたが、やがて煙のように消え去り居なくなってしまった。何とか打ち倒したので、お前は急いで王城に帰還して王に報告を行う」


 「私は猿王女を倒し、名誉を得た。直ぐに陛下に御報告せねばならぬ。急いで御報告を行い、私は褒美を賜る」



 ブツブツ夢を見ている近衛騎士を【昏睡】で眠らせ、俺達は王女を連れて近くの森の中に隠れる。王女は訝しみながらも従い。隠れた後で近衛騎士に【覚醒】を使って起こす。



 「……ハッ!? ここは、私は………そうだ! 私は猿を打ち倒したのだった! あの醜い大猿めが、私以外の者を殺しおって! 仲間が全て死してしまい、私は……おっと! こうしてはおれぬ。早く陛下に御報告を致さねば!!」



 近衛騎士は大きな声でゴチャゴチャと芝居がかった話をしていると、唐突に走り去って行った。まるでコントを見ている気分だったが、気にしなくてもいいだろう。それより、王女が呆れ顔をしている。そっちの方のケアをしておこう。



 「先ほどの技は完全に洗脳する技と、関連する記憶を消去する技だ。なので奴は王女を殺したと思い込み、自分に都合の良い妄想の方を信じ込んだ訳だな。後、醜い猿と覚えていてくれた方が、逃げるには都合が良い。手鏡を渡してやるから見れば分かる」


 「………これが、私……。14の頃から醜い猿と言われた私が”コレ”とは……! ははははは、それではあの妹達はいったい何? 猿以下じゃないの!! あはははははは……」


 「それよりも、これからどうするの? このままお姉さん連れてると見つかるかもしれないよ?」


 「それに関しては問題無いだろうと思う。一番の成長期を知らなかった訳だし、死体は消えた事にした。実際に調べる術は無い。後は偽名を名乗らせればいいだけだ。それで王女と特定する事は不可能になる。自分から名乗らない限りはな」


 「つまり、名乗るなという訳ですね。まあ、言われても名乗りませんが……しかし良いのですか? 私が王女だとバレる可能性はゼロではありません。それに、私は城でしか生きてきた事が無いのも事実です。重荷になってしまいますが……」


 「それは構わないんじゃないですか? そもそもボクたちだってアルドさんに助けられていますし、色々な事を教えられてきました。しかもアルドさんの性格なら、面倒を看ないなら助けないと思います。多分ですけど、纏めて始末していたと思いますよ?」


 「まあ、そうだな。後顧の憂いなんて残す意味は何処にも無い。間違いなく先ほどのバカと相打ちの形で始末してる。だが、俺としてはどっちでもいい。君が助かりたいかどうかだ。常識が無いなら学んでいくしかない」


 「分かりました。本当に助けて頂けるなら、お願いします」


 「じゃあ、まずはブーツを作るか。すまんが子供達は死体を取ってきてくれるか? 今の内に剥いで纏めて焼却する」


 「りょうかーい」 「分かりました」


 「ニャー」 「………」



 俺はアイテムバッグから<ドクロの花>のアジトや拠点で手に入れた革鎧を取り出して、王女のブーツを作って行く。その間に王女には偽名を考えさせるのだが、いちいち【錬金術】や【錬成術】に驚いていて鬱陶しい。


 それでもブーツを作った後、俺達のと同じ革鎧を作って着させる。後は子供達が持ってきてくれた兵士の剣を拝借して、王女の武器を作るのだが……。王女は武器を使った事が無かった。そういや猿の状態では殴り殺してたな。



 「殴り殺すとは人聞きが悪いですが、確かに私はこう……!?」



 王女が猿の時のように殴るポーズをすると、王女の腕が毛むくじゃらのゴリラのような腕に変貌した。何度か試してみて分かったが、王女は意識すると体を猿の時のように変えられるようだ。つまり猿の時ほどではないが、結構な怪力を出せるらしい。



 「これから狩人として生きていくなら結構なプラスだな。力は力。どう使うかでしかない。せっかく手に入った力なら有効に使うといい。ただ、武器を持った事がなくて怪力ならメイスにするか」



 俺は兵士の剣を分解し、フランジという刃が4枚ついたメイスを作成。実際に王女に振らせて調整し、剣帯を作って装備させる。これで立派な狩人に見えるだろう。後は適当な木を引っこ抜き、木のラウンドシールドを作って表面に薄く鉄を被覆する。


 作っている間ずっと驚いていたが、俺はさっさと穴を作り、子供達が剥いでくれた死体を投入する。【浄炎】で燃やして【粉砕】を繰り返し、全て処理したら穴を埋める。何故か王女は「ゲーゲー」吐いていたが、お前さんが作った死体だろうに。



 「いや、それはそうなのですが……。死体の処理なんて見た事がなかったもので。まさか、こんなものだったとうぶッ!」



 また吐いたが俺達は無視して洞窟の方へと入る。盗賊どものアジトにされていた洞窟だが、中に入っても生活雑貨とか食べ物しかない。もちろん食える物は貰っていくのだが、金銭が全く無いぞ?。


 変だと思ったら、洞窟の奥に別の入り口がある。おそらく盗賊の幹部は逃亡したのだろう、それで金銭が無い事に説明がつく。それを聞いた王女は何とも言えなくなったようだ。下っ端を殺しただけで、盗賊の問題は解決していないんだから当然か。


 一応総浚いしたものの生活雑貨と食べ物しかなかったので全て回収し、王女には背嚢を持たせて生活雑貨を持たせた。【浄化】して綺麗にした後作り変えているし、なぜかここにも銀製のカトラリーがあった。



 「銀は毒に反応すると言われているので、盗賊の幹部も毒殺に備えて使っていたのではないかと思いますよ?」


 「砒素か? あれは精製の際の不純物に反応してるので、高純度の砒素に銀は反応しないぞ? ………その驚き顔を見ると、そこまでは知らなかったみたいだな。俺達の場合は全てを【浄化】しているから、毒なんて関係ないが……」


 「浄化の神の権能……ですか。話だけ聞くと冗談にしか聞こえませんが、私の呪いが消えているのが答えですね」



 一通り見て回った俺達は、【浄化】しながら洞窟の外に出て街道へと戻る。街道には誰も見当たらなかったので、俺達は何食わぬ顔で歩き始めた。少なくともルル村までは行きたい。王女の足が遅いからだ。



 「王女、王女と呼ぶのは止めてもらえませんか? まあ、私が偽名を決めていなかったのが悪いのですが……。これからはアリシアと名乗ろうと思います。アリシア・ロードレム。ロードエルネムという英雄の名前を拝借しました」


 「まあ、何でもいいけどな。とりあえずアリシア、歩きながら魔力と闘気の扱い方を教える。子供達ですら当たり前に出来るんだから、頑張ってくれよ?」



 俺はそう言ってアリシアの手を持つと、魔力と闘気を流して自覚させる。それが終われば次に魔力と闘気の循環だが、歩きながらなので上手くいかない。とはいえ、練習しながらも歩かせる。


 最後には動きながら出来ないと意味が無いので、遅かれ早かれ動きながら練習する羽目になるのは一緒だ。子供達も苦労した事なので優しく見守っている。それに納得するかどうかは知らないが。


 それでも夕方には間に合いそうもないので、俺が背負って走る事になった。洞窟などで時間を喰った所為だ。子供達も適当な物を食べて昼を凌いだくらい時間が掛かったからな。


 夕日を背に受けながらルル村に着いた俺達は、門番に小銅貨3枚を支払って村の中に入る。アリシアを狩人登録させるまでは仕方ない。


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