1736
部屋を片付けたら食堂へ行き、中銅貨5枚を支払って朝食を食べる。食事後、領都の中を歩いて情報収集をするのだが、<ドクロの花>が壊滅している話題で持ちきりだった。その所為でなかなか情報収集が進まない。
それでも地理関係など色々聞いていき、判明した情報を元に次にどうするかを考える。移動していくのは間違い無いのだが、一日で何処まで進むのか。子供達に無理をさせても仕方ないし、色々な町で止まる事になるかも……。
ちなみに領都セグノーから南東にオル村、ソル村、ムルイ町。そこから西にゲウ村、セウ村、ソモド町。更に西にコル村、ルル村、ヌイル町、ロット町。そして王都カナーンがある。この国はカーナント王国というそうだ。
なかなか遠いが、間に森とか山とかあるから曲がりくねるのはしょうがない。それらが優秀な農地を国に齎してくれているので、国の人も嫌だとは思っていないようだ。どのみち移動するのは商人ぐらいで、殆どの人は地元で一生を終える。
その為、道が曲がりくねっていようが気にしない。商人がその分苦労するだけである。それはそうと、食料店に行き、買い物を済ませておこう。子供達と店に行き、米と大麦と小麦を小銀貨1枚ずつ、野菜を小銀貨2枚分買ってアイテムバッグに仕舞う。
大量に買ったものの旅をするので消費する事を言ったら、店の店員も納得していた。子供達と食堂に行き、中銅貨5枚を支払って昼食を食べる。未だに<ドクロの花>が壊滅した話で持ちきりだが、領主兵が壊滅させた奴を探しているらしい。
何でも<ドクロの花>が持っていた物が、根こそぎ無くなっていたからだそうだ。それって領主がぶん取ろうとしているだけなんじゃ……。昼食後、店を出て町の入り口へ。門番に登録証を見せると<ドクロの花>の事を問われたが、「知らない」と言うと通された。
門番は子供達をチラリと見ていたので、子供連れの男に<ドクロの花>の壊滅など不可能と思ったのだろう。普通ならその考えは正しい。ちょっと俺が規格外なせいで間違ってしまったが、門番の責任じゃないだろう。
そんな事を子供達と話しつつ走って移動する。木像があれば速く移動できるのだが、速く移動したところでなぁ……という気持ちもあるし、ここはゆっくりと進むかね。まあ、走っての移動も十分に速いんだけどさ。馬車とか追い抜いてるし。
夕方までで進めたのはソル村までだった。村と村の距離が結構遠いので、移動距離はなかなかのものになる。馬車などは一つ一つの村を一日かけて移動するようだ。もちろんギリギリの距離ではなく、余裕を持った距離ではあるんだが。
ソル村に辿り着いた俺達は食堂に入り、中銅貨5枚を支払って夕食を食べる。その後、宿に行ったのだが満室だった。仕方なく村の外に出てカマクラを作り、そこに入って眠る。すのこを敷いて、その上に何枚もの麻布と毛布を掛けたら寝床の完成だ。
「すまんな。布団を作ろうと思ってたんだが綿が売ってないんだよ。おかげで詰める物が無い所為で、今のところ布団が作れない。麻布ばかりで綿布を見ないし、この国には綿が無いのかもしれない」
「別に大丈夫だよ。それと綿って三河にあったフワフワのやつだよね? ……確かに見たこと無いね?」
「うん。ボクも見なかったような気がする。フワフワのがないと硬くて寝にくいから、綿がないと布団ができないのはしかたないね」
「他にも羽毛でも作れるんだが、そんな大量に羽毛なんて売ってないしな。その所為でどうしても布団が完成しない。それでも洞窟のアジトで毛布を手に入れていて良かったよ」
子供達は何枚も重ねられた上に寝そべって遊んでいる。ダリアとフヨウも感触を確かめているが、悪くはないらしい。なら寝床として問題無さそうだな。神水をコップに入れて飲んでいると、子供達は既にウトウトしていた。
今日は走ったからだろう。ほどよい疲れで寝やすくなったんだろうと思いつつ、眠った子供達と2匹を綺麗に【浄化】する。神水を飲み終わった俺も【浄化】し、おやすみなさい。
<呪いの星9日目>
おはようございます。今日も王都への移動日です。なかなか呪い関係の事は無いが、少しずつ改善していければいい。少なくとも、今すぐどうにかしないと星が崩壊するなんて事はあるまい。
そんな事を考えつつ朝の日課を終わらせ、外に出て朝食を作る。村の外なのでわざわざ村の食堂に行く気にもならない。子供達が狩ったミニボーアの肉もまだ残ってるし、特に料理に問題なし。
全粒粉と神水と塩を練って生地を作り寝かせておく。次にミニボーアのミンチ肉と野菜を炒め、その横で謎の魚節で出汁をとる。出汁の中に鰯のツミレと野菜を入れて煮込んだらスープの完成。
後はチャパティを焼いていき、出来上がったら皿の上に重ねていく。匂いで起きたのかダリアがカマクラから出てきたので、水皿に神水を入れてやる。料理は終わったのでゆっくりしていると、早速ちょっかいを出し始めた。
暇なのか構ってほしいのか知らないが、ダリアが朝食に手を出さないように牽制していると子供達も起きてきた。するとダリアはすぐに大人しくなる。子供達が起きる前に食べたかったのか、お姉さんぶってるだけなのか。
タコスモドキを作って渡しつつ、温めなおしたスープを椀に入れていく。朝食は久しぶりのタコスモドキだが、子供達は美味しそうに食べている。やはり神水で料理を作ると如実に味の違いが分かるのだろう。喜びが大きい。
美味しい朝食を終えた俺達は準備を整え、カマクラ等を壊して出発する。今日はどこまで行けるだろうか。
途中の森の近くでミニボーアを倒したり、大きめの鹿の魔物を倒してゲットしつつ、今日はソモド町まで辿り着いた。朝早かったのと、昼も饅頭で済ませたからだろう。途中の村や町には一切寄らなかった。
夕方の町に入り、町の人に宿の場所を聞いて部屋をとる。一泊中銅貨3枚だったので払い、近くの酒場で夕食をとる。中銅貨8枚分の料理を頼んで食べていると、周囲の噂話が聞こえてきた。
「ここから西のコル村とルル村の間の盗賊、何でも呪われた王女が討伐に赴いたらしいぜ? これで盗賊どもも終わりだなー」
「呪われた王女ってアレだろ? 体が毛むくじゃらの猿みたいになっちまったっていう。凄いパワーやスピードらしいけど、どこにも輿入れ出来なくなったそうじゃねえか」
「そりゃなあ。巨大な猿なんて誰が嫁にもらうんだよ! 庶民のオレらでも願い下げだっての!」
「おい、やめとけ! 聞かれてたら殺されっちまうぞ!!」
慌てて周りをキョロキョロしてるが、本当に居たら不敬罪で首が飛んでるぞ? まだ付いてる時点で大丈夫だろ。それはともかく、呪われた王女ねえ……。それも大きな猿の姿ときたか。どういう基準か分からんな?。
食事後、宿に戻って休むも、子供達は言いたい事があるようだ。
「行くんでしょ?」
「ん? まあな。その王女を殺す事になるか、それとも呪いが解けるだけなのか。そこのところは分からないが、少なくとも呪いで種族が変わっている以上はなあ。呪いを減らすのが神命なんだから、放っておくのは無理だ。それに城にいないなら尚の事な」
「確かにそうですね。お城に侵入するのは面倒ですけど、外に居るなら【浄化】するチャンスだ」
「ああ。だから城に戻られない内に【浄化】してしまいたい」
次にやるべき事が決まったか。俺が行くまでに殲滅を終えないでくれよ。戦っている最中に乱入するのがベストだからさ。




