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 海まで走ってきたが、蓮は途中で短槍を仕舞っていた。そりゃ走っている最中には邪魔にしかならないからな、途中で仕舞うのは当然だ。だから俺が出すなと言ったんだし。


 その事で若干納得がいっていないらしいが、この近くなら短槍持って探検でもしてくればいいさ。ダリアとフヨウがついていてくれれば2人だけでも問題は無い。2匹は強いからな。



 「ニャー!」 「………」



 2匹が「任せて!」という感じでアピールしてくるので任せる。俺は昨日と同じように塩作りをしなきゃならないので、子供達の相手があまり出来ない。子供達は近くの森に行くようだが、そこまで木々が密集している森でもないので大丈夫だろう。


 塩を作って樽の中に入れていると、何故かデカイ魚が近くを泳ぎ始めた。もしかしてこの魚、俺を狙ってるんじゃあるまいな? まるでジ○ーズのように背びれだけを海面から出してやがる。【空間把握】で丸見えだけど。


 そんな魚にどうしたもんかと思いつつ、アイテムバッグから矛を出して右手に持つ。そのまま塩作りをしているとゆっくりと近付いてきた魚は、俺の近くでUターンして遠くに離れた後、一気に凄い速度で飛んできた。


 海面から飛び上がりミサイルのように俺を襲ってきたが、俺は矛で下から軌道を斜め上に逸らして後ろへ投げる。だが魚は【風魔法】を使いカーブして海へと戻っていった。どうなってるんだ、あの魚。意味の分からない戦い方しやがって。


 再び遠くから加速して飛び出してきたので、今度も矛を使って斜めに逸らす。しかしその後は違う。再び【風魔法】でカーブしようとしたものの、その前に【念動】で地面に叩き落してやった。するとビチビチ跳ねるだけで海に戻れなくなっている。


 やはり飛んでいるからこそであって、一度地面に落ちると普通の魚と変わらないようだ。何故こんな魚が存在するのか知らないが、とりあえずは始末するか。俺は【念動】で魚を浮かせると、矛に魔力を通して頭を切り落とし、身は三枚におろす。


 【浄化】をしても引っ掛かりが無かったので、こいつの身に毒などは無いようだ。寄生虫なんかは居ただろうが、全て【浄化】の権能で消えている。しかし縦に1メートルの魚はデカイ。身をどうするべきだろうか?。


 色々悩んだが海水を沸騰させて煮込み、十分に身に火が通ったら【浄化】した後で【乾燥】させる。キリのいい所まで【乾燥】させたら、謎の魚節の完成だ。鰹節じゃないけど、出汁はとれるだろうか? 多分大丈夫だと思うんだが。


 アイテムバッグに収納し、塩作りも終わっているので大樽を収納していると、子供達が戻ってきた。蓮とイデアがミニボーアを出してきたので【浄化】と血抜きを行って返す。すると、お昼に食べたいそうなので解体する。


 焼き場を作り蓮には麦飯を、イデアには包丁を渡して肉を切らせ、俺はスープのついでにタレを作る。先ほどの謎の魚節を取り出して薄く【分離】し、鰹節のように出汁をとってみた。すると、繊細ながらも美味しい出汁がとれた。


 試しに蓮とイデアに味見をさせると喜んでいる。……はいはい、ダリアとフヨウもね。俺はその出汁の水分を飛ばし、魚醤を混ぜて味の調整をした。これで肉のタレは良いとして、スープはどうするかね?。


 もう一度謎の魚節で出汁をとったら昨日の鰯を出して解凍し、身を焼いたら鍋に入れて煮込んでいく。海に近付いて適度な貝を手に入れたら、綺麗に【浄化】してから合わせて煮込む。


 合間にイデアを手伝い肉を量産したら、麦飯が炊けたので椀に盛っていく。スープも入れたら準備完了なので、早速肉を焼いていこう。


 超魔鉄の焼き網にミニボーアの脂を塗り、引っ付かないようにしたら肉を乗せて【加熱】していく。すぐに焼けてくるので取ってタレに絡めたら、いただきます。



 「ん~……! お肉はやっぱり美味しいね! あのちっちゃい猪のお肉、思っているより美味しいかも。食堂で出てくるお肉って硬いから分かんないんだよね。何か誤魔化してる気がする」


 「気がするじゃなくて誤魔化してるんだと思うよ。それでも誤魔化したら食べられる味なんだから、文句を言うつもりはないけどね。それでもやっぱり熟成してあるお肉は美味しいよ」


 「このタレもなかなか良いんだが、予想以上に謎魚が美味しかったんだろうなあ。乾燥させて旨味を凝縮してるとはいえ、これだけの味を出せるんだから十分だ。デカイ奴だったし、当分は出汁に困らないな」



 予想以上に美味しい昼食に満足し、昼食を終えた。焼き場などを破壊して町に戻ると、入り口が物々しい雰囲気になっている。何かあったのかと近付くと、何でも門番が殺されて数十人の人間種が町に押し入ってきたらしい。


 狙いはスラムらしく、現在スラムで抗争が起きているんだそうだ。何でスラムなんか狙うのか不思議だが、聞くと度々こういう事はあるんだと。裏組織の覇権を懸けた争いらしいが、俺達には極めてどうでもいい事だ。


 さっさと町中に入って食料店に移動する。昨日と同じく塩を大樽2つ分売り中銀貨10枚を受け取ったが、1枚を中銅貨100枚に替えてもらう。これで支払いは大分楽になったな。やる事もないし、とりあえずは一旦宿に戻るか。


 そう思って宿に戻るも、入り口が閉められていた。扉をノックするも開けてもらえず、仕方なく酒場で時間を潰す事に。酒場に入って果実水を5つ頼み、中銅貨2枚を払う。適当に飲みつつ子供達と暇を潰していると、近くを兵士が慌ただしく走っていった。



 「おいおい、遂に兵士まで動員されたのかよ。こりゃスラムだけで収まりそうもないな。兄さん達も災難だったが、こういう時の宿は客を守る為に閉めきるんだよ」


 「成る程なー。まあ、客を偽って押し入ってくるかもしれないから、仕方ないのかね? 俺達としたら、せめて寝るまでには宿に入らせてほしいけどな。それもどうなるのやら」


 「そこら辺は何とも言えねえなあ。ここ最近はこんなのばっかりだ。かれこれ30年ぐらい前か? 俺がガキの頃に何か巨大なモンが壊れたそうでよ。それからおかしな事だらけらしい。その所為で変な連中も増えたしな」


 「変な連中?」


 「ああ。頭の上に花を乗っけてて体が緑色の女とか、全身が狼みたいになっちまった男とか、色々な話を聞くぜ。なんでもそいつら呪われちまったんだと。そのうえ何か強力な力を持ってるらしい。頭の上に花を乗っけてる女は、頭をおかしくしてくるそうだ」


 「へー、そんな力がなぁ……」



 もしかしてアルラウネーか? 流石にドリュアスではない筈。それはともかく、やはりおかしな変化を起こしている中には、妙な力を持った奴がいるみたいだ。気を付けるに越した事はないな。


 ん? スラムの方で随分と派手に気配が消えてるぞ。……もしかして先ほど走って行った兵士か? だとすると町の兵士はチンピラよりは強いらしいな。当たり前と思うかもしれないが、訓練もしていない兵士っているんだよ、実際。


 この町の兵士は少なくともそうじゃないらしい。安心したものの、それでも時間が掛かりそうな気配だなぁ。終わるまではゆっくり待つか。


 その後、2回おかわりして中銅貨を4枚払い、飲み終わったら食堂へ。中銅貨5枚を支払って夕食を注文した。食堂は普通に営業してるんだから、おそらくは宿に入れるだろう。子供達とそんな話をしていると、近くから話が聞こえてきた。



 「何でも広域にやってる裏組織が、こんな田舎まで出張ってきたらしい。ナントカの耳だか鼻だかいう組織らしいぜ。おれも詳しくは知らねえけど」


 「確か<ドクロの花>とかいう組織じゃなかったか? とにかく荒っぽくて、どこのシマでも殺して奪っていく連中らしい。領都もそれでやられたって聞いたな。とにかく荒い連中なんで、暴れたい奴等は頭下げて入っちまうそうだ」


 「碌でもねえな。暴れられりゃ、外の奴等にも尻尾ふるのかよ。犬と変わらねーな、そいつら」


 「止めとけ。聞かれてたら、何されるか分からねえぞ」



 裏にも秩序があるもんだが、愚連隊が攻めてきたって訳か。無法な連中なら何でもやるだろうが、順調にバカどもは始末されているらしい。本当に意外だが、思っている以上に兵士が強いな。


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