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宿の近くでウロウロしている連中は次々と何もない所で転倒し、何故かアキレス腱が捻じ切れた。意味が分からないうえに激痛にのた打ち回る事になり、無事な片足を使って必死に帰っていく。俺も流石に両足を潰す気は無い。
悪意を向けている奴にしかしていないので、それ以外の者には何もしていない。ただ、悪意を向けていなかった連中もビビったのか、一斉に宿の側から居なくなる。周りを探っても他に悪意を向けてくる奴は居ないので寝るか。
子供達も既に寝ているので、部屋と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。……そういえば、この宇宙では邪気は浄化されてるんだっけ? ブラックホールみたいなもので邪気を吸引し、浄化しているらしい。なので邪気汚染が前の星ほど酷くない。
代わりに呪いの汚染が酷い訳だが……。
<呪いの星2日目>
おはようございます。今日はこの星に来て2日目ですが、まずはお金稼ぎからです。子供達用の武器なども作らなきゃいけないし、他にも様々な物が足りてない。今の内にやれる事を精一杯やっておこう。
朝の日課を終わらせて、神水の樽を取り出してコップを木で作って入れる。茶葉なんかも無くなっているから、今のところは神水しか飲むものが無い。まあ、これだけ綺麗な水を飲めるんだから、贅沢言うなと怒られるかもしれないが。
ゆっくりしていると子供達が起きてきたので挨拶し、2匹も起きてきたのでコップ2つと水皿2つを作って神水を入れる。子供達は「お茶は?」と言ったので、「神様に消された」と説明しておく。流石に子供達も諦めたようだ。
部屋を綺麗に片付けたら食堂に行き、小銀貨1枚を出して朝から豪勢な朝食を食べる。中銅貨が足りないからどうしようもない。余った分は全てフヨウが食べてくれたので、店員や店の人から睨まれる事は無かった。それどころか皿などが綺麗で感謝されたほどだ。
そういえば、今のところは新種族のような者は見ないな。獣人だったり、エルフだったり、ドワーフだったり。他にもダークエルフや鬼人に鳥人……鳥人!? 何だあの種族、足がダチョウみたいだぞ。あれが呪いの新種族……?。
早々に決めつけるのは良くないが、あんなの初めて見てビックリしたわ。子供達も2匹もビックリしているくらいだしな。そんな驚きをしながら町の外へと出て行く。子供達と共に身体強化で走って行き、すぐに昨日の出発地点である海に来た。
俺は作った樽に塩を入れていきつつ、新たな樽を作っていく。ワイン樽のような大樽。それより小さい中樽。そして持ち運びに便利な小樽。それぞれを作りつつ、大樽に塩を入れていく。これが一番売れそうなんだよな。
次に昨日の鰯をとって凍らせていると、蓮の大好物を見つけた。この星のもデカイなと思いつつ【念動】で引き上げてやると、蓮が狂喜乱舞して喜んでいる。まあ、気持ちは分かるけどな。串を作って突き刺し殺害。後は【浄化】と【乾燥】をして渡す。
蓮は喜んで千切り、ガシガシ噛んで食べている。他にも大きなイカがいたので引き上げ、同じ様に干物にしてイデアに渡す。イデアは受け取って食べるも、そこまで喜んではいない。まあねえ……。
樽を作って塩を大量に入れた後は、近くの森の木を間引きしてアイテムバッグへ入れる。昼近くになったので焼き場を作り、昨日買った土鍋に麦飯と神水を入れて炊いていく。今まではエリアがやっていたが居ないので、代わりに蓮がやるらしい。
イデアには別の土鍋でスープを作ってもらい、俺は秋刀魚っぽい魚を引き上げては一夜干しのように【乾燥】させていく。20尾ほど終えたら、焼き場をもう1つ作って焼き始めた。なかなか良い感じの香りがするし、脂が浮いてきて美味しそうだ。
イデアのスープは最後に魚醤を混ぜて味付け、蓮の方の麦飯も遅れて炊けた。既に木で箸やスプーンにフォーク、椀や皿なども作ってある。焼けた秋刀魚モドキも皿に乗せてあり、骨は外して小骨は【粉砕】済みだ。
子供達も我慢出来なくなっているので、そろそろ食べよう。いただきます。
「美味しい! 御飯が美味しいし魚も美味しい! イデアが作ってくれたスープも美味しいね。魚の団子と貝の美味しい味が出てるよ!」
「うん。思ってるより成功してると自分でも思う。なかなか美味しいし、昨日までの雑穀より美味しい。正直に言って、昨日までの雑穀は本当に美味しくなかった。あれヤシマの国の雑穀飯より酷いよ。入ってるのは似たような物なのに……」
「多分だが水が悪いんだと思う。俺の故郷の星でも、水が悪い所の料理は油を多用した物が多いんだ。誤魔化しているのか、悪い水を吸収させない為なのかは知らないけどな。少なくとも、神水なら変わらず美味しい事は分かったから良かったよ」
子供達も頷いているので、水が違うだけでここまで料理がマズくなると理解出来たらしい。俺も知ってはいたが、ここまで変わるとは思わなかった。本当に不味い水で料理を作っても美味しくならないんだと思う。
昼食後、後片付けをしたら焼き場を壊し、町へと帰る。そうそう、あの町の名前はソーゼンというそうだ。立地としては地方都市になるらしい。この辺りは穀倉地帯に入るらしく、辺境の割には豊かなんだと。
国の首都は南西にあるそうだが、まだまだ近付く気にもならない。子供達とゆっくり町に帰っていると、昨日のガキどもが元気に魔物と戦っていた。俺達はスルーして進むが、近くにミニボーアの反応がある。
俺は隠密の4つの技で近付き、身体強化を込めた石斧の一撃で頭をカチ割ってやった。殺した後は首を切り、血抜きをして【冷却】したら収納して子供達の下に戻る。
ギルドの査定の為にも、ある程度の魔物は狩っておかなきゃいけないんだ。謝りつつも説明し、子供達と町に帰る。大人が登録証を持っていれば、子供はタダで通れるので通り、まずは狩人ギルドへ行く。
昨日正式に登録した際に、ギルドの解体所に持っていくように言われたので持っていき査定を受ける。質は最上だと言われたので、他の連中は碌に血抜きなどもしないらしい。何処にでも手を抜く奴は居るようだ。
ギルドの裏側にある解体所から、ギルド内に通じる扉があるので中に入り、解体所で貰った木札を提出する。ミニボーア1頭で大銅貨12枚らしい。多いのか少ないのか分からないが、周囲は驚いているので多いのだろう。
何故か蓮が得意気だが、そこは気にせず金を受け取ったら、さっさとギルドを後にする。次に食料店に行き、大樽1つの塩を売ろうとしたら怪しまれた。塩は国の専売ではないものの、ここまで大量の塩だと盗難品の可能性があるからだ。
なので、盗難品がこんなに質の良い塩なのかと問う。食料店の店主は一舐めして理解したらしい、平謝りしてきたので許した。大樽1つ分の塩の代金は中銀貨5枚。結構な高値だと思ったので2つ分売る。
アイテムバッグから出した時に仰天されたが、大樽2つ分の代金である中銀貨10枚を受け取った。中銀貨1枚を中銅貨100枚に替えてもらい、これで支払いはある程度出来るようになったろう。
塩が十分な利益になったので、鰯は売らずに食べる事にした。あまり色々売って変に目を付けられても困る。……まあ、アイテムバッグで既に目を付けられてるけどさ。それはともかく、武具屋へ行こう。
子供達にも短剣か何かと短槍を持たせないと駄目だ。更には剣帯も要るし、必要な物が多いな。まあ、金策は出来たから問題は無くなったけど。




