1728
町の入り口には門番が立っているが、町の周りには堀が掘られているので簡単には越えられない。俺は門番に話しかけ町に入るのに必要な物を聞く。妙な顔をされて警戒されたので、素直に金が無い事を口にした。
魚や塩など売れる物は持っている事を口にすると、見せろと言われたのでさっさと見せる。俺が持っているのがアイテムバッグだと知ってビックリしたのだろう、その後から欲が漏れ始めた。ウチの子供達も理解したらしい。
ただ、俺達が気付いたと理解したのだろう、慌ててその欲を引っ込めた。今さら引っ込めても既に遅い。一応確認の為に塩を調べたが、特に問題の無い塩という事で壺の半分を持っていった。それで町に入れるらしい。
面倒だったのでそのまま渡し、子供達と共に町中へと入る。先ほどのガキどもが行った場所が狩人ギルドだろうから、まずはそこに行く前に食料店に寄る。町の人に聞き食料店に行くと、俺はすぐに持っている魚を売る交渉を始めた。
俺が予想していた通り魚は高級品だったので、思っていた以上の額で売れた。1匹で大銅貨5枚、全部20匹あったので大銅貨100枚。それを小銀貨10枚にしてもらう。
ガキどもに聞いていた通貨の単位で考えると、魚1匹で結構稼げるな。明日も獲ってきて売ろうと思うぐらいには良かった。ちなみに単位はこうだ。
小銅貨100枚で小銀貨1枚
中銅貨20枚で小銀貨1枚
大銅貨10枚で小銀貨1枚
小銀貨100枚で小金貨1枚
中銀貨20枚で小金貨1枚
大銀貨10枚で小金貨1枚
小金貨5枚で中金貨1枚
小金貨10枚で大金貨1枚
中金貨2枚で大金貨1枚
前の星とは微妙に違うが、そのうち慣れるだろう。この星では中銅貨が一番使うのかね? そんな事を考えつつ、次は狩人ギルドへ行く。子供達の登録は出来るんだろうか、そこが悩みどころだ。多分無理だとは思うが……。
扉を開けて中に入り、受付に近付いて登録を頼む。この辺りは前の星とも変わらないな。
「登録ですね、分かりました。………その子供達ですか? すみませんが12歳未満の子供は登録出来ません」
「そうか、分かった。俺の登録だけで。登録料は幾ら?」
「登録料は小銀貨1枚になります。……はい、お預かりします。少々お待ち下さい」
その後、受付嬢が持って来た用紙に適当な事を記入していく。この星の文字や言葉は神界で脳にブチ込まれているので、俺達は問題なく話せる。昔は練習させられたが今回は緊急事態だったからか、そんな適当さで知識が与えられている。
まあ、楽だったから助かるんだけどさ。記入して渡すと裏へと持って行った。多分だが、木札か何かに書いているんだろう。受付嬢はすぐに戻ってきた。
「これが仮の登録証です。町の外でミニボーアを狩ってきて下さい。3日以内に狩ってきたら合格となり、正式な登録証をお渡しします」
「ミニボーアって多分だけどコイツの事だろ?」
そう言って俺はアイテムバッグの中から猪を取り出す。それを見た受付嬢は驚いたが、猪を見て確認した。するとコレがミニボーアで間違い無いらしい。あのガキどもが登録の為に狩ろうとしてたんだから、間違い無いとは思っていたが合ってて良かった。
何故かミニボーアは取られたが、代わりに正式な登録証を作ってくれている。あれがどれぐらいで売れるのかは知らないが、それなりの値段で売れるんだとは思う。取られたのはシャクだが仕方ない。
正式な登録証を受け取ったら、狩人ギルドを出る。何かしら絡んでくる奴が居るんじゃないかと思っていたが、それは無いらしい。テンプレイベントが無かったのは助かるが、ギルドの中でも欲を向けてくる奴は居たな。気を付けておくか。
子供達と歩きつつ、食堂を見つけたので入り席に座る。メニューを見ると小銅貨で書いてあり、思っているより安いのが分かった。ダリアとフヨウと食事をしてもいいか聞いたが、金を払うなら何でも良いとの事。豪快なのか適当なのか分からんな。
俺は小銀貨を渡し、メニューから注文したが返された。小銀貨を渡されてもお釣りに困ると言われたので、全員がいろんな物を注文して小銀貨1枚分にした。全部食べられるのかと思われたが、高い物も注文したので納得はされたようだ。
子供達と適当な雑談をしていると運ばれてきたが、それなりに多い料理が運ばれてきた。匂いから油を使った料理が多いのが分かる。何となく中華系っぽい感じかな。醤なんかも使われているようだ。
「これ、思っているより美味しいね。脂が一杯だからもっと重いのかと思ったけど、そんな事もないからビックリ」
「確かにそうだね。思っているよりスルッと入ってくるから食べやすいよ。ただ肉が多いから、その分重いけど……」
「ニャー!」 「………」
ダリアは肉を焼いて何かのタレを掛けたヤツを食べている。意外と言ったらいいか、どれも美味しい。そして前の星とは違い、最初の町から米がある。雑穀飯だけど、中に少しの玄米が入っているのは確認した。
おそらく中粒種だと思うが、そこはどうでもいい。粟や稗と共に僅かだけど入っている玄米。蓮は微妙に納得していない。何故なら1割入っているかどうかだからだ。それと麦飯よりも美味しくない。炊き方も水も悪いからだろう。
食事後、まずは雑貨屋に行ってある物を探す。色々と探していると隅の方に土鍋を見つけた。小銅貨20枚の物を3つ買い、小銀貨1枚で支払う。中銅貨8枚でお釣りを貰い店を出る。流石に小銅貨を大量に持ちたくはない。
その後は食料店に行き、大麦と米を小銀貨1枚分ずつ買っていく。いつ何処で野宿をする事になるか分からないし、アイテムバッグに入れておけば済む。他には香辛料もあったが、怖ろしく高値で買う気にはならなかった。
次に武具屋に行くのだが、思っている以上に武器の質が悪い。そのうえ高いのだから始末に負えない。お金に余裕ができるまでは石斧でいいやと思う程だ。狩人は果たして儲かっているのだろうか?。
まあ俺が心配しても意味など無いし、狩人という仕事が成立しているのだから大丈夫だと思おう。子供達も歩きっぱなしで疲れてきたようなので、宿に行って部屋をとる事にした。
一泊で中銅貨2枚だそうなので、小銀貨1枚を支払い10日間確保する。一般常識とお金稼ぎにそれぐらい掛かると思うので、10日ぐらいは必要だろう。宿の部屋に入ってゆっくりすると、子供達は疲れていたのかウトウトし始めた。
初めての場所なのと、別の星という事で気を張っていたのだろう。今は寝かせておこう、どうせ夕食には起こす事になる。俺はその間に樽を作成しておく事にした。壺ではなく樽で塩を確保しておこうと思ったからだ。
丁寧に樽を作っていると夕方になっていたので、子供達を起こして食堂に行く。中銅貨5枚を支払って食事を注文し、運ばれてきた食事を食べる。この食堂にも定食のような物はあり、それが中銅貨1枚だった。
相変わらずの雑穀飯と、肉と野菜の煮物だった。野菜が少なくてアレだが、そこまでマズい物ではない。蓮はやはり米が少ないのが腹立たしいらしい。入ってないなら納得できるのだろうが、ちょっとだけ入っているから余計に気になるようだ。
そんな食事も終え、宿の部屋に戻って適当に過ごす。子供達は途中で寝たからか今は眠たくないらしい。それは良いんだが、宿の周りにチョロチョロと目障りなのが居るなー。どうしたもんかね?。
殺すとバレる恐れがあるんだよ……仕方ない。悪意を向けてくる奴だけ【念動】で転倒させ、そのタイミングでアキレス腱を捻じ切っておこう。これなら俺の仕業だとバレないだろうし。




