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 <呪いの星1日目>



 フラッシュのように眩しい光が止むと、俺達は海の近くに居た。後ろを振り返ると海が見え、近くには森があり、真っ直ぐ続く道も見える。何となく前の星の三日月浜に似ている気もするな。そんな場所でまずは確認をする。


 持っているのは……おぉう、殆ど何も無い。それでも大型のアイテムバッグは持っているから助かる。中身は殆ど無いが、前の星に降り立った時よりは楽だ。子供達もアイテムバッグやポーチの中を確認しているが、殆ど何も無いらしい。


 俺のアイテムバッグの中には神酒の樽、神薬の樽、神血の樽。神丹の樽に神水の樽もある。何故か薬類が無くなっていない。それどころか、もしかして補充されてる? ……訳が分からん。


 他は魔法を記した紙束とかそろばんとか木の枷、縄や紐や陶器の壺や瓶。アイテムポーチが2個に中型のアイテムバッグもある。不思議な事にトランプや神獣の毛のブラシが入ったままだ。基準が分からないな。とりあえず、食べる物を手に入れよう。


 俺は海に近寄り、岩場に腰掛けたら陶器の壺に塩を入れていく。いきなり俺が訳の分からない事を始めたからだろう、子供達が寄ってきた。



 「何で塩を作ってるの? 周りを調べたりするのが先じゃないの?」


 「そんな事はないさ。人間が生きて行くには塩が必須だし、近くに村や町があるのかすら分からない。こういう時にはまず生きていくのに必要な物を確保するんだ。つまり水と塩と食べ物だ。それは目の前に全部ある」


 「ああ、確かに海は全部揃ってますね。アルドさんじゃなきゃ手に入れられませんけど……」


 「そこは気にしなくていいだろう。それより塩が出来たんで、適当に魚を【念動】で引き上げて魚醤作りだな。味付けが塩だけだと流石に辛い」



 パパッと手早く魚醤作りも終わらせたら神水を補充し、適当な魚を引き上げて冷凍する。最悪はコレを食べれば済むだろう、綺麗に【浄化】したし。それにしても鰯……かな? 色が紫で毒々しいが、何故か毒は持ってないな。


 とりあえずゲットしたらアイテムバッグへ入れて出発。蓮もイデアも暇をしていたみたいなので、そろそろ周りを調べよう。森の方へ行き子供達と【気配察知】を使うも小動物の反応も無い。不思議な森だ。


 【呪魂環】が壊れた影響が生態系にも及んでいるのだろうか? 木を無理矢理に引っこ抜き、【錬金術】と【錬成術】で加工し、久しぶりに石斧を作成した。子供達にも石と木で作った槍を持たせる。少しで身を守れるようにしておかないと。


 ダリアは地面の匂いを嗅いでいて、フヨウは首に巻きついている。そんな中で木を間引きして何本か原木を手に入れておく。何かに使うかもしれないからだ。



 「それにしても、これだけ大きな音がしているのに何も出てこないな。魔物すら一匹も居ないって、妙に不自然な気がする」


 「何だろうね?」


 「さあ? 初めての場所だし、何があるのかわ!?」



 急に大きな気配がしたので子供達と隠れる。すると猛烈な速さで何かが飛び去った。………どう見ても西洋ドラゴンだぞ、あれ。この星にいるのは西洋ドラゴンで恐竜じゃないのか。どうりで神様が竜の素材を取り上げる筈だ。


 それはともかく、あれも竜だと言って子供達を宥める。流石に相当の速さで飛んでいたし、子供達も急にでビックリしたようだ。通り過ぎたので森から出ると、真っ直ぐに続いている道を歩いて進む事にした。


 早急に誰かに会い、情報を得ない事にはどんな危険があるか分からない。そう思い歩いていくも、なかなか人間種の気配が見つからない。ちょこちょこと獣の気配はするようになったので、海沿いだから魔物が居なかったのかと理解した。


 そのまま歩いて進み、昼になろうかという頃、道の近くで戦っている連中が居た。若い少年が3人と若い少女が2人で、敵は猪系の魔物らしい。あまり大きな魔物じゃないが、頑張って戦ってるって事は近くに村でもあるのかな? そう思いつつも歩いていく。


 子供達は加勢しないのか聞いてきたが、余計な手出しをしても恨まれるだけだと言っておく。実際、倒してやっても感謝もせず、獲物を奪ったとかケチをつけてくる奴も居るからな。そんな説明をしつつ歩いて行くと、後ろから逃げてきやがった。


 俺達を追い抜いて逃げて行くが、猪は俺達をターゲットにしたらしい。仕方なく石斧で脳天をカチ割り、一撃で殺してやる。そのまま血抜きを始めると、先ほどの少年が絡んできた。……この年でかよ。



 「おい、オッサン! オレ達の獲物を「ズドン!!!」かってに……」


 「俺が何だって? ……ガキ、俺が何だって?」



 流石にこの肉体はオッサンと呼ばれる年齢ではない。どう考えても20代前半の見た目だぞ。15にもならないガキとはいえ、オッサン呼ばわりされる筋合いは無い。俺が睨んでいると、あっさりと失禁しやがった。下らない。



 「おいガキども。喧嘩を売る相手は選べよ? でないと……死ぬぞ?」


 「「「「「………」」」」」



 必死に顔をコクコク動かして頷いている。まあ、この辺で許してやるか。その後、何で馬鹿な事をしてきたのか聞くと、この猪を倒す事がギルドへの正式な加入の条件だったらしい。


 ギルドの事を詳しく聞くと<狩人ギルド>のようだ。どうやら前の星と同じく魔物を倒して売る商売のようなので都合が良い。それにこのガキどもは近くの町の出身なんだそうだ。海沿いに町を作らないのか聞くと、あそこはドラゴンの通り道で有名らしい。



 「色んなドラゴンがよく飛んでるよ。あんな所に町を作ったら、面白半分にブレスを吐かれて皆死んじまう。あいつら遊びで人間種を殺すらしいし。同じドラゴン同士で殺し合いとかしてるらしいけど……」


 「それよりも、お前らどうするんだ? あの猪が必要なんだろう? 向こうに一頭小さいのが居るが、あれならお前達でも倒せるんじゃないのか?」


 「えっ!? どこ!?」


 「ほら、あそこだよ、あそこ」



 俺が指で指し示した方向には、適当に歩いているだけの猪が居た。早速喧嘩を売ってきたガキが石を投げ、ぶつけられて怒った猪は突っ込んで来る。相手を怒らせて戦うって、あんまり良い方法とは思えないがな。


 それでも何とか倒して得意気なガキども。それはいいんだが、お前達それ運べるのか? そう言うと、ガキどもはジッと俺を見てくる。悪いが運んでやる気なんぞ無い。自分達で苦労しろ。



 「えー……そのバッグにシュッと入れるだけだろ。それぐらい、いいじゃん!」


 「明日からどうする気だ? 仮に今日が良くても困る事にしかならないぞ。あと、俺はお前らのお守りじゃないんでな。自分達の事は自分達でやれ」



 そう言われると納得したのか引っ込める。血抜きだけはしてやったので普通よりは軽くなっているんだ、それぐらいで十分だろう。甘やかしたところで碌な事にならない。


 そもそも猪の場所を教えてやっただけ感謝してほしいもんだ。そう言うと「案内してやってる」というので、「真っ直ぐ行けばいいんだろ?」と言うと黙った。という事は真っ直ぐ行けば町に着くな。分かりやすい奴で助かる。


 俺と子供達はガキどもと一緒に町まで歩いていく。それにしても体力の無いガキどもだ。本当に狩人としてやっていけるのか不思議でしょうがない。その割にはスラムの子供のように薄汚れてはいないんだよなー。


 まあ、まずは町に着いてからか。どういう国か、どんな町かも分かってないんだ。呪いは薄く星を覆ってるらしいんだが、それを【浄化】する為にも集める手段が必要だし。


 いきなりじゃ上手くはいかないから、まずは情報収集から始めよう。目の前には町が見えている。


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