0171
「ニャー!」 「ガウッ!」
「フッ……ハァッ!」
まだやってるなー。最終的にはディルファグルさんが負けるんだから、そろそろ止めさせるか。あんまり遊び続けられても困るし。でもなー、楽しそうなんだよな。
「そういえば……。念神に言われた以上、ディルファグルさんは付いてくるんだろう?」
「私の事はディルとお呼び下さい! ………フッ!」
「ニャ!」 「グル!」
「じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。とにかく、一旦部屋に戻ろうか。装備の事も含めて色々話をしないといけない」
「はい、分かりました」
部屋に戻って話し合いをするんだが、酒を飲みながら移動するのはどうなんだろうな? 片手に酒の入ったコップを持ったまま、気分良さ気に階段を登ってる。危ないなぁ。
転げ落ちたらどうすんだか……。大丈夫って言ってるが、大丈夫じゃない奴ほど大丈夫って言うんだよ。酒飲みって奴はこれだから困るんだ、本当に人の話を聞かない。
部屋に戻り、椅子に座って浄水を入れて飲む。水の樽は出してあるので好きに飲んでいい事を伝えると、持っていた背嚢からコップを出して飲み始めた。
4人が酒を勧めるも、ディルは飲まないそうで拒否している。粛清専門の傭兵一族と言ってたが、酒は飲むなと教えられてきたらしい。そのうえ、俺も飲んでいないので飲まないそうだ。
まぁ、飲むか飲まないかは個人の自由だが、飲まないに越した事は無いと思う。体に良くないし、酔っ払いは面倒臭いしなぁ。俺も酔っ払いが増えなくて助かるよ。
「本当に酒を飲まなくてもいいのか? 別に飲んだからといって咎める事もないぞ? 流石に飲み過ぎは注意するがな」
「特に問題ありません! 酒を飲むと反応が鈍りますので、咄嗟の時に動けないかもしれません。ですので、飲酒は一族の掟で禁じられています」
「まぁ、そこまで徹底しなくてもいいって事なんだが……まぁ、いいや。まずは喋り方を初めて会った頃に戻してくれ。堅苦しくてしょうがない」
「し、しかし……」
「俺の傍に侍ると言ってたろう? ならば楽にしてくれ。肩肘張ってるのは周囲も疲れる」
「……分かった」
「それで聞いておきたいんだが、武器は何を使ってるんだ? それと、どういう戦い方をするか教えてくれ」
「武器は短めの剣と短剣を使っている。短めの剣というのは短剣よりも少し長いくらいの物だ」
「40から50センチぐらいか……それと短剣。んー? ……何とかいけるか」
「いけるって、何がですか?」
「うん? ディルの武器が要るだろ。俺達の武器より絶対に質は悪いだろうからな」
「そりゃ、そうだね。アタシ達の武器より良かったら、驚きじゃ済まないよ」
「……私の武器は魔鉄で出来ているんだが?」
「俺達の武器は希少金属で出来ているんだよ」
「………希少……金属?」
「ああ。マナリアとかヒヒイロカネとかアダマンタイトとかオリハルコンだな」
「……うぇっ!? オリハルコン!?」
「何でオリハルコンにだけ反応するんだよ……」
「ぷっ……確かにそうだね。何でオリハルコンにだけ反応するんだろう?」
「私の一族の長は、代々オリハルコンの短剣を継いでいる。それを持つ事が長の証であり、何よりも大事な物なのだ」
「これかい?」
アルメアはアイテムバッグからオリハルコンのダガーを取り出した。あっさりと長の証と同じ物が出てきたからか唖然としてるな。口が大きく開いたまま固まってるが、そこまでか?。
完全に思考停止してるっぽいので、浄化でもするか。固まっているディルを中心にして、【浄化】の権能をフルに使って浄化していく。綺麗にしていっていると、紋様が目に入った。
幽人族の紋様って生まれた時からなんだろうか? それともある程度の年齢になってから出てくるんだろうか? ……聞いてみたいんだが、固まってるしなぁ……。
「そんなに驚く事かい?」
「………はぁーっ。……希少金属製の武器など滅多に無い物だ。国宝になっている物が殆どで、それも各国に2つか3つしかない。そんな事は子供でも知っている」
「これがかい?」
「これがですか?」
「これかしら?」
「こっちじゃないかい?」
皆はアイテムバッグに手を突っ込んで、希少金属製の武器を取り出しディルに見せた。ディルは百面相の如く様々な表情をした後、疲れたように溜息を吐き俯いてしまった。
「……何なのだ。いったい何がどうなって………」
「何だか凄いダメージを受けてるみたいだけど、他の希少金属製の武器とアタシ達の武器じゃ品質が全然違うからね?」
「そうですよ。アルドいわく、精錬技術や加工技術が未熟過ぎて、希少金属の力を半分も引き出せていないそうですよ」
「つまり、他の希少金属製の物は大半が大した物じゃないの」
「質の悪い、希少金属モドキが多いらしいね」
「……モドキ………」
「ショックを受けてるみたいだが諦めてくれ。さっきシュラが言っていた通り、希少金属のポテンシャルを発揮出来ていないんだ。ダンジョンで手に入った物は別だがな」
「そうなのか!?」
「きゅ、急にどうしたのかしら?」
「我が一族に伝わっているのは、祖先がダンジョンで発見した物だと聞いて育ったのだ。だから粛清の仕事が無い時には、よくダンジョンに潜っていた」
「そうだったのか……。まぁ、申し訳ないが、今回使うのは俺の小烏丸と金砕棒なんだがな」
「「「「えーっ!?」」」」
「いや、別にいいだろうに……。最近小烏丸はあんまり使ってないから、丁度いいかと思ってな」
「???」
俺はディルの疑問を無視して、どんな剣が良いのかを聞いていく。色々話をしたうえでディルの理想も聞くと、その結果は脇差と鎧通しだった。どうも振った感触が良かったらしい。
ディルの戦い方自体が右手で斬りつけ、左手で刺すという形のようだ。長柄の武器は使わず、重い武器も使わない。標的を素早く殺害するという戦い方を、子供の頃から叩き込まれたそうだ。
小烏丸を一旦素材に戻し、脇差へと【変形】させる。刃長は45センチで刃は厚めにする。素材が十分に余る為、鍔などもアダマンタイトで作り鞘を合わせれば完成だ。
金砕棒を鎧通しに【変形】して【分離】し、残りの部品類も同じ素材で作り組み合わせて完成。ついでに十手も【変形】して【分離】したら終わりだ。他の物は今は無理だな、材料が無い。
「こ、これを……私に……。いや、それ以前に、あんなに簡単に武器が作れる物なのか?」
「アルドにとっては、あんなに簡単なんだよ」
「ウニョウニョ動いて武器が出来ていきますからねー」
「初めて見た時はビックリしたわね」
「魔法陣とか一切無く、急にウニョウニョ動くから仕方ないんだけどね」
「【錬金術】や【練成術】って、そういうものだからな」
アレだなー……。喜んで武器を振り回すのは4人と全く変わらない。刀身が分厚い脇差と鎧通しを喜んで振り回し、偶に左手を十手に変えている。左手は突き刺すか受け流すんだろう。
ヨーロッパではレイピアを使う際には、左手に防御用のマン・ゴーシュを持っていたと聞いた事がある。だから、考え方としては似たようなものなんだろう。
ある程度振り回してスッキリしたんだろうな、相変わらず表情に乏しいが喜んでるのは分かる。殆ど表情が動かない……という程ではないのが救いだ。
表情って変わらないと、結構不気味なんだよな。能面みたいな顔で居られても反応に困るし、何を考えているのか分からない。そういう人物じゃなくて良かった。
ただ、表情が豊かでも武器を振り回してる人は怖いけどな。笑顔で武器を振り回されても怖いだけなんだよ、そこの4人。分かってる? ……ああ、分かってて振り回してたんだ……。
▽▽▽▽▽
0171終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨68枚
大銀貨92枚
銀貨54枚
大銅貨117枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ