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「ふむ、サキュバスであるにも関わらず溺れたか……。あり得ぬ訳ではないが、仕方がないのであろうな。相性というものもあろうし、何と言っても惚れておると【誘惑】に手心を加えるかもしれん」
「【誘惑】というのはサキュバスの生まれ持った能力だと思うのですが、いったいどういうものなのですか? この町に今は居ませんが、原初のサキュバスに似た容姿を持つ子は居ます。名前はアルエルというのですが……」
「ほう。滅多におらぬ筈なのだが……あの子もそうだし、いったいどうなっておるのやら。まあ、それはよいか。【誘惑】というのはサキュバスやインキュバスが生まれ持つ能力の1つであり、他者の思考を誘導できる力の事だ。ただし性的な欲望に限るのだがな」
「性的な欲望にしか作用しないという事かい……? 何だかよく分からないね。それに、そんな能力なら悪用されそうなものだけど、我が国もそうだけど悪用されたなんて聞いた事が無いね。いったいどういう事だろう?」
「愛神様の加護を持つ私でもなければ、そこまで強力な力は使えぬよ。普通のサキュバスなら、多少自分の方へ性欲を向けさせる事が出来る程度だ。後は自分自身の手練手管で堕とす事になる。私もそこは変わらぬし、それがサキュバスというものだ」
「……という事はあまり危険は無いと考えて良さそうですね。兄上というか、陛下も男性ですから何が起こるか分かりませんし、何処かの国から派遣された者に溺れるなんて事があっても困りますから」
「先ほども言うたが、あくまでも誘導するだけだ。本人の持つ性的な欲望を自分に向けさせる力となる。言葉は悪いが、枯れている者に使っても何も効果が無い。【誘惑】を使う際には酒を飲ませると効果的なのだが、酔わせすぎると寝てしまうしで、なかなか大変なのだ」
「ああ、そうだろうな。酒で良い気分になる程度ならいいのだろうが、飲ませすぎると泥酔するし、その状態では【誘惑】も効き辛いと。性的な欲望を誘導すると聞けば強力だと思うが、使い勝手は悪いのだな。そうでなければ脅威と思われるか……」
「うむ。我がエイルアーダでは私が不老長寿のサキュバスとして、かつての国を【誘惑】の力を利用して打倒したからな。強力な力だと誤解している者が多かったのだろう。そのうえ打倒した時代、サキュバス族であるのは私だけだったからな。何故かは分からぬが」
「ならば、余計に分からないでしょうね。我が国にも身近にサキュバス族がいる事は多くないですが、それでも多少は居ます。ここを領地として持つ伯爵家の分家には、サキュバスの家がありますし」
「まあ、私ほどの力や地位になってしまわぬ限り不幸はあるまい。私の場合は義憤に駆られてしまったのが原因だしの。あの頃は不老長寿になって日も浅く、少々調子に乗っておった。その所為なのでな、何とも言えぬ」
「そう言えば、愛神様? の加護を持たれているのなら、アルドさんを【誘惑】しないのですか? いえ、お姉様方を不仲にしようとか、そういう事ではありません。ただ、純粋に気になっただけです。サキュバスの不老長寿ともなれば強力な力をお持ちの筈ですし……」
「そんな強力な力は持っておらぬし、旦那様には全く効かなかったの。それどころか、性的な事では異性を支配するのがサキュバスなのだが、私は逆に支配されたのだ。初めて旦那様に抱かれた時、一方的に蹂躙され征服され、そして私は心の底からの悦びを知った。2度と知らぬ頃には戻れぬ」
「「「「「「「「じ、蹂躙//////」」」」」」」」
「まあ、エイダの言う事はよく分かるよ。アタシ達だってそうだし、そこから抜け出す気にもならないしね。最初の頃はさ、1度は勝ちたいと思っていたけど、今はそんな事も思わなくなったね」
「話がズレにズレたから戻そうか? シャムニー狩王国だけど、後は王城に行ったくらいかい? 勘違いしたバカが調子に乗って潰されて終わったけど……いつも通りさ。その後、南の山を越えてヴィラノーア連合国に行ったんだよ」
「まだ国があるのかい? お客さん達も凄いねえ。いったい何処まで行くのやら。国が1つだよ? そんな簡単に移動出来るほど、小さい筈は無いと思うんだけど……。まあ、皆なら出来るんだろうね」
「ヴィラノーア連合国で最初に起きたのは、素性を隠した王女一行との出会いでしたね。向こうの1番強い騎士である巨人族の女とエリアが喧嘩して、一撃で勝ったんでしたっけ?」
「そうそう。あたしが鳩尾を突き上げたらそれで終わっちゃってね。相手はあたしより背の高い同族だからさ、気合い入れて殴ったらそうなっちゃったんだよ。ビックリしたけど、アルドが薬を飲ませてくれたから元通り以上に回復したね」
「その後、ゴブリンの森と言われる森に行く事になったんでしたね。あそこの伯爵は武闘派と言われていながら、碌に戦いを理解していない者でしたけど。結局は御主人様が知恵を身につけたゴブリンを全て始末して終わりましたよ」
「まさか知恵をつけたゴブリンが居たなんてね。おまけに、それを軍でどうにかしようなんて、そこの伯爵というのは何も知らないんだろう。森で知恵あるゴブリンじゃ、兵士が無駄死にするだけだろうに……」
「正にその通りになっていたな。そのうえ森まで遠征しているのに、野営の準備などを終えたら早々に森の探索。次の日は雨だったが、兵士を森に向かわせていた。その時にアルドが言っていたな、普通は野営の準備を終えたら1日は休養をとるのが当たり前だと」
「それはそうであろう。休養も無く強行させたとて、成果が上がる訳が無い。そのうえ兵は疲弊しているのだから、普段の実力も集中力も発揮できん。罠でも仕掛けられてみろ、それだけで瓦解しかねんぞ」
「実際に罠などで兵が殺されていたね。雨の日は兵の運用の仕方とかを喋っていたんだけど、その次の日に伯爵が王女を丸め込もうと声を掛けてきていたよ。王女は自分でも分かる事が何故分からないって言って、伯爵に言い返してたけど」
「それも想定出来ない程度だったという事さ。まあ、その後はさっきリューが言っていた通り、主様が知恵を持つゴブリンを殲滅して終了。残った唯のゴブリンを伯爵軍が掃討して、一応の戦果は与えてやった感じかな」
「成る程、無駄に大変だったんですね。とはいえ恨むと碌な事をしてきませんし、その程度が落とし所ですか。それにしても、我が国もそうですが、知恵あるゴブリンを見つければ素早く倒すという事は当たり前です。その国はどうなっているのでしょうね?」
「中途半端に領都から離れているのと、普段は狩人に任せているみたいだったね。ちなみに狩人ギルドはエイルアーダで生まれたものらしいよ。こっちでいう傭兵と同じなんだけど、何故かシャムニー狩王国では魔戦士なのに、山を隔てたヴィラノーアでは狩人なんだよね」
「エイルアーダで生まれたというのは正しくないな。元々はエイルアーダ王国の前身である、ゾルディアス王国の時に出来たものだ。私が子供の頃には既にあったし、私の両親も狩人だったからな。だからスタンピードが起きて滅びた町の出身なのだ、私は」
まあ、特異点の近くにあった町出身という事は、当然そこで生計を立てている人達が居る訳で……。エイダの両親が狩人だったとは知らなかったが、考えてみると普通の事とも言えるな。
おっと子供達がお腹を空かせてるし、大銅貨……いや、面倒だから銀貨3枚払って適当に持ってきて貰おう。そろそろ銀貨とかも減らしたいし、減らすなら下界に降りてすぐに世話になった、この宿だろう
女性従業員に銀貨3枚を渡した後、子供達の方を見るとトランプで遊んでいた。女性陣は話に夢中だし、すまない。俺しか知らない事もあるから話を振られるし、それに答える必要もある。ウチの女性陣も知りたがるから余計にだが。
皆はまだ喋っているし、そろそろ戻ろう。酒を取り出して飲み始めたんで、面倒な絡まれ方はしたくない。
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1626終了時点
大白金貨101枚
白金貨498枚
大金貨1795枚
金貨2906枚
大銀貨1713枚
銀貨2630枚
大銅貨1256枚
銅貨50枚
神銅の処刑剣
神銀の錫杖
神金のヴァジュラ
精霊木の浄化棍棒
精霊木石の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神金銀の勾玉
神銅の数珠2個
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




