1601
「朝っぱらから申し訳ないんだが、話しておかないといけない事がある。昨夜、この町の裏組織と神殿を掃除してきた。その後で宿の料理人も聖人化したんだが、それは横に置いておこう。まずは裏組織だ」
「といっても、いつも通り潰しただけじゃないのかい? それとも何か厄介な物でも見つかった?」
「いや、物じゃない。裏組織のアジト近くに行くと、警戒が非常に厳重だったんだ。いつも通りに隠れて奥に行き、ボスや幹部から先に気絶させ、最後に外で警戒していた連中も気絶。そこから聖人化の開始だ」
「いつも通りと言いますか、特に変わったところは無いと思いますけど……?」
「そこのボスは詳しい依頼者を知らなかったが、おそらくヴァルンドル侯爵家だと言っていた。何でも建国女王様の狂信者らしい。だから建国者と同じ角や目を持つのが許せないんだろうと、裏組織のボスは言っていたよ」
「「「「「「「「狂信者………」」」」」」」」
気持ちは分かる。何を信奉していようが狂信者は駄目だ。あいつらは全く人の話を聞かないし、ただ押し付けてくるだけだからな。相手をするだけ時間の無駄だ。そもそも会話が成立するのかすら怪しい。
「ヴァルンドル家か。今代の当主もよく国に尽くしてくれておる筈だが、まさか裏ではそんな家だったとはな。私と同じなのが気に入らぬとは……流石に永きに渡って女王をしていた私でも、想像も出来なかった。こんな事」
「まあ、仕方ないんじゃないかな? 建国者というのは、多かれ少なかれ信奉されるものさ。何たって自分達の正統性を担保してくれる人物なんだ。建国者である以上、それを崇めるのは当然とも言える事だよ」
「………たとえ、そうであったとしても許す訳にはいかぬ。法を守れぬ者は断罪せねば、民に示しがつかぬ故にな。今の王に私から言っておこう。その上でヴァルンドル侯爵には責任をとらせねばならん」
「話を次に進めるが、裏組織の連中に情報を与えて警戒させたのは、護衛の騎士の3人だったよ。ヴァルンドル侯爵の寄子の家だったらしく、逆らえなかったようだな。今回の襲撃にも加担しているだろう。聖人にして放っておいたから聞いてみればいい」
「アルドにしては珍しいな。いつもなら根掘り葉掘り聞いてから渡すのに、今回は聖人化して放置か。何かそうせねばならない理由があったのか?」
「いいや。面倒だったのと、聖人にしたんだから後で幾らでも聞けると思ってな。眠たかったので布団に寝転がって、さっさと寝たよ」
「昨夜も大変だったんだろうし、仕方ないね。この国は腐った神官が多くないとはいえ、それなりには居る訳だし。更に裏組織と宿の料理人に騎士。大変だったろうし、面倒臭いのも分かるよ」
そろそろメイドと子供が起きそうなので、【止音】を解除して会話を終える。布団を仕舞っていると、ベッドで寝ていた子供とメイドが起きた。俺達は朝の挨拶をした後、自分達の部屋に戻る。騎士達も起き出しそうだし、見られると面倒な事になるかもしれない。
部屋に戻る前に送風機と冷房を収納させ、部屋に戻ってダラダラと過ごす。ダリアと子供達が遊んでいるが、ダリアは子供達の手をスルリと抜けて捕まらないように避ける。そんな遊びをしているが、あまりドタドタ走らないようにな。下の階の迷惑になる。
多少過ごしていると、騎士が部屋のドアをノックし1階に下りる事を伝えてきた。忘れ物がないか確認したら俺達も部屋を出て1階に下りる。用心するに越した事はないのだが、裏組織の連中は聖人化したので、朝に襲撃される可能性は低いだろう。
店員に大銅貨13枚を支払い朝食を注文したら、席に座って周囲に気を付けながら待つ。運ばれてきた料理はいつも通り【浄化】するが、今日の朝は何かを【浄化】したような感覚は無かった。
朝食後、初代達は馬車に乗り、護衛は馬に乗って町を出る。御者をしているのも騎士だが、御者をしているくらいだから信頼はあるんだろう。昨夜も青く光っている人物だったし。
コリュトー町から南西に向かって移動する。日中は遅くて暇だが、こればっかりは仕方ない。俺達だけならとっくに皇都に着いているだろうが、遅い者に合わせるしかないからな。それにしても、敵が狂信者だと分かったからか皆のテンションも低いままだ。
誰だって異常者と関わりたくは無いだろうが、狂信者が襲撃の黒幕である以上は跳ね除け続けるしかない。気が重いものの、警戒しておかないと今度はこっちを執拗に狙って来かねない。それに初代に対しても手を出すおそれがある。
自分達の思い通りにならないと、神すら否定しかねないのが狂信者だからな。自分達を否定するのは神ではないとまで言う。まあ、だからこそ”狂”信者なんだが……。あー、やめやめ。考えても嫌になるだけだ。
ヘゲンダ村、ルソン村を越えてアソエヌ町への道を進んでいる。昨日も一昨日も、これぐらいの距離で襲撃を受けたんだが……今日は襲撃が無いな? もしかして裏切っていた騎士を聖人化したからか? 可能性はありそうだ。
そのまま進んで行き、子供達には青豆の袋を渡した。歩きながらボリボリ食べ、遅れたら走って追いつく。それを繰り返しながらも、美味しそうに食べている。やはりこの時間帯になると、お腹が空くみたいだ。
結局アソエヌ町の門前まできたが、襲撃は1度も無かった。そのまま貴族用の入り口を使って中に入り、真っ直ぐ大通りを行って広い部屋のある宿を探す。コリュトー町もそうだが、大きな宿って町には幾つかある。
俺達は値段の高そうなというか、ボッタクリのような宿には泊まらないが、貴族は見栄の為にも泊まらざるを得ない。それに馬車を預けておける宿でないと、泊まれないだろう。貴族の移動は基本的に馬車だし。
今回も2階を貸し切りにしたらしく、宿の1階でテーブル席に座ったようだ。周りを警戒していた騎士も座り、俺達も大銅貨13枚を支払って昼食を注文した。
席に座って待っていると、直ぐに運ばれてきたので【浄化】する。今回も特に異常は無し。俺達の分はまだ来てないが、もう少しすれば来るだろう。
運ばれてきた昼食を食べて、貸切になってる2階に上がる。既に部屋は決まっているらしく、女性陣と子供達は堂々と初代の部屋に行った。
俺は宛がわれた部屋に入り、送風機と冷房を設置して起動する。【冷風】で熱気を窓から出して閉めると、子供達が戻ってきた。インキュバスの子を連れてきたので、今日も一緒に遊ぶらしい。適当に玩具を出しておくか。
緑茶を水出しで淹れて飲んでいると、インキュバスの子は何故か猫じゃらしを持ってダリアと戦っていた。ダリアさんの高速猫パンチに猫じゃらしが切られていくが、それでも必死に応戦している。
しかし実力差がありすぎたのか、哀れ、猫じゃらしの皮は切り刻まれてしまった。気付いた後で慌てて謝罪されたが、切り裂いたのはダリアだし、それは元々そういう物だと言っておく。
ブラックリザードマンを取り出して皮を【分離】したんだが、ダリアさんが猛烈に騒ぎ出す。さっき昼食食べたばかりだから駄目だっての。ダリアを落ち着かせながら猫じゃらしの皮を交換し、インキュバスの子に渡しておく。
彼はブラックリザードマンの死体を見て固まったままだったが、猫じゃらしを持たされた事で再起動したようだ。今はダリアの目の前で振っている。ダリアは猫パンチを止めて皮に噛み付こうとしているが、上手くいっていない。
肉が食べられなかったのがそこまで悔しかったのだろうか? なんだか妙な成分が含まれていそうだが、【浄化】しているのでそれは無い。無い筈なんだが……。
そんな事もありながら、遊んだり眺めたりしていると外は夕日が出る時間だった。女性陣は戻ってこなかったが初代の部屋で何をやっているのやら。流石に理由も無く女性の部屋を覗いたりはしないが、酒を飲んでなきゃいいけど。
もし飲んだのなら、初代が面相な事を言い出しそうだ。護衛の最中に酒作りとか、絶対にやる訳が無いんだが、昨日の送風機や冷房へのハシャギっぷりを見ていると……言い出しかねないと思ってしまう。
そっちの用心もしとこう。
▽▽▽▽▽
1601終了時点
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大銅貨1652枚
銅貨50枚
神鉄の刀
神鉄の槍
神金のヴァジュラ
精霊木の浄化棍棒
精霊木石の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神金銀の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




