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0015




 ギルドに到着した。鉄の5キロインゴットが4本もバックパックに入れてあるので重い。肩と背中に重さを感じながらギルドの入り口のドアを開ける。


 カラン! カラーン!。


 中に入ると忙しい時間は過ぎていて、まばらに人がいるだけだった。受付のミュウさんの所へ行きダナを呼んでもらう。



 「すみません、ダナさんを呼んでもらえますか。準備が出来たと伝えてもらえば分かりますから」


 「はぁ……分かりました。少々お待ち下さい」



 ミュウさんは疑わしげな顔をしながらもダナを呼びに2階へ行った。それを見送りながら待っていると、他の受付嬢がこっちをニヤニヤしながら見てくるのが目に入った。


 ここもかよ! という思いが口から出そうになるが、かろうじて堪える。女性は本当に恋愛の話が好きだな、他人の事だから純粋に楽しめるのかね?。


 そうして5分ほど待っているとミュウさんが降りてきた。何故か首を傾げながら。



 「アルドさん、ギルドマスターがお呼びです。執務室まで来る様に、との事です」


 「分かりました」



 2階に上がりギルドマスターの部屋に行く。執務室をノックし許可を取り中に入ると、執務机で仕事をするダナの横に立っている人がいた。


 その人は緑髪の緑目で胸が大きく、身長は2メートルを超えていた。



 「アルド、アタシの横に居るのがサブマスのヴェルだ。ヴェル、コイツが新人のアルド。本名はアルドゥラムだ」


 「アルドゥラムと言います。よろしくお願いします」


 「はじめてまして、新人で有名なアルド。私はヴェリウシャルト、長いからヴェルと呼ばれています」


 「ヴェルは本名を言う事は殆ど無いのに、珍しくちゃんと本名を言うんだね。どういうワケだい?」


 「心配しなくても、ダナさんの”いい人”を取ったりしませんよ。いくら戦闘狂と言われる私でも、まだ死にたくありません」


 「別にそういう意味じゃないんだけど……。まぁいいや、アルドまずはアタシの武器を頼むよ」



 どうやら今日はサブマスもここで仕事をするらしい。俺はソファーに座り足元にバックパックを置く。今日は、防具は宿の部屋に置いてきている。


 バックパックから鉄のインゴットと薪と炭を取り出す。全ての薪の皮を【分離】して剥ぎ、【融合】し【圧縮】した後【変形】し、1つの丸太にする。


 鉄のインゴットの上に炭を乗せ、【抽出】で炭素を抽出し【合成】で鋼にする。短刀はすでに作っているので簡単だ。


 大脇差に関してはうろ覚えだが、確か刀身が55センチから60センチぐらいだったはず。やたら細かいな、と思った記憶がある。


 これも短刀と同じく皮鉄で心鉄をサンドイッチして作るのだが、なんちゃって日本刀なので刃紋は無い。そもそも刃紋は鍛冶師が付けている物で、付けなくとも問題は何も無い。


 とはいえ、付いていると格好いいし美術品に見えるんだよな。ただ、入れようと思えばどんな刃紋でも入れられるので、自分で刃紋を入れる気にはならない。


 俺の短刀もそうだが、白木拵えであるため装飾は付けない様にしている。自分で色々してほしい。


 出来上がった大脇差2本と短刀をダナに渡す。するとダナは大喜びで振り、大脇差の感触を確かめている。



 「いやー、コレいいね! 凄くいいねぇコレ!!」


 「ふむ……切れ味が良さそうですね。それを私にも作ってくれると?」


 「えぇ……ただ何を作るのか聞いてはいませんが」


 「私も、朝にダナさんから急に聞かされたので仕方ないですよ。そうですね……私が作ってほしいのは剣。今まで依頼して作って貰った事はありますが、切れ味が悪く脆い物が多かったので」


 「脆い? ……それは一体どういう事ですか?」


 「私が昔から使っているのは長剣で、私の力が強いのか直ぐに歪むんです。切れなくて何度も切りつけた場合は特に」


 「長剣……。矛や薙刀じゃ駄目なんですか?」


 「???」


 「あ~。アルド、ちゃんと説明してやらないと伝わらないよ? アルドの”故郷”の武器をいきなり言われてもね」



 少なくともこの辺りでは、薙刀はともかく矛が無いらしい。日本でも凄く古い時代は、槍じゃなくて矛を使っていたとネットで見た事がある。この世界では矛は生まれなかったんだろうか?。


 ちなみに矛と槍の大きな違いは、メインが斬撃か刺突かの違いぐらいだ。確か細かい違いはあったが覚えていない。


 ヴェルさんに矛や薙刀と、ついでに長巻の詳細な説明をする。……ちゃんとした知識が無いとボロが出そうだ。



 「私はさっきの説明にあった大薙刀でお願い! 幾らでも払うから!!」



 なんか別人の様になったんだが。コレかな? ダナがチョロいって言ってたのは。ダナの顔を見ると、頷いた後にニヤニヤしているので間違いない。


 ヴェルさんと色々と相談した結果、刃長が1メートルで柄が2メートルという大薙刀に決まった。雑貨屋で買った薪が足りず、大銅貨1枚分買い直しに行くハメになるとは。


 大きな刃を作る鉄は足りるのに、柄に使う木材が足りないなんて……。とにかく材料が揃ったので早速作ろう。鋼を反りが少なく身幅が狭い、いわゆる<静形薙刀>の刃にしていく。


 上手く刃を作り、断面が楕円形の柄を合わせ石突を付けて完成だ。南北朝時代に大きな物が好まれたのも分かる。大物特有の美しさが感じられる武器だ。


 作るのはいいんだが、ギルドから出せるのかコレ?。



 「素晴らしい!! 実に素晴らしい!!!」



 ヴェルさん、アンタはどこぞの舞台役者か? 今ここで料理バトルでもやってんのか? 鉄人はドコだ? そんな下らない事を考え、思い出していた。


 ダナが横に来て大銀貨6枚と木札を2枚渡してきたので受け取る。どうやら依頼扱いにしてくれるらしい。



 「ヴェル。嬉しいのは分かるけど、ちゃんと金を払いな」


 「あっ! そうだ、お金を払わないと。ダナさんは幾ら払いました?」


 「アタシは大銀貨6枚だね」


 「じゃあ私もソレで! お金取ってきます!」



 バタバタとヴェルさんは執務室を出て行った。なんか最初と今とで随分キャラが変わったな、こっちが素なんだろう。


 ダナが仕事をしているのを見ていると目があった。少しの間見つめあっているとヴェルさんが戻ってきたので目線を外す。



 「大銀貨6枚もってきました。これで”あの子”は私の物ですよね」


 「はぁ……いつ使えるか分からないよ? ちゃんと仕事しな」


 「うぇっ!? ちゃんと仕事を終わらせてから、試し斬りに行きますよ?」


 「また夜に狩りに行く気かい? 迷惑かけるんじゃないよ。アンタはラミアだから夜に狩りが出来るとはいえ、危険な事には変わりないんだ」


 「分かってます。でも、夜の方が強いのはダナさんも知ってるでしょう?」



 夜に強い……ラミア………? もしかしてピット器官の事か? あれ、蛇の器官だけどラミア族にもあるのか。体温を感知できるけど、そこまで便利じゃなかった様な……?。


 まぁ地球での知識だし、何よりラミア族っていうファンタジー種族の事だから、もっと優秀な能力なんだろう。


 【闘気術】には【気配察知】があり、【念術】にはよく使う【探知】や【空間把握】とかあるから、そっちの方がいいと思う。でも下界で使える人が居るのか分からなくて迂闊に口にできない。


 二人に挨拶し、バックパックに余った物を詰めて1階に下り、ミュウさんに手続きを済ませてもらいギルドを出た。雑貨屋で余った物を売り、大銅貨7枚と銅貨10枚を受け取る。


 大銀貨20枚を金貨1枚に、ちょっと無理を言って交換してもらって宿へ戻る。昼食を注文して大銅貨1枚を払い、一息吐いた。



 「今日は狩りに出てないのかい?」


 「今日は朝からダナとヴェルさんの依頼を熟してたんですよ」



 そんな話しをしながら昼食を食べ、午後はどうするか考える。朝は今日1日ずっと村の中だろうと思っていたのに半日で終わってしまった。


 どうするかと思案に暮れていると妙案を思いつく、新人が行く北か北東に行ってみよう。


 今更か! という声が聞こえてきそうだが、本当の新人がどういう感じなのかを知っておく事は悪い事じゃない。それに……ずっと森は飽きるんだよ。



 ▽▽▽▽▽


 0015終了時点


 金貨5枚

 大銀貨1枚

 銀貨10枚

 大銅貨18枚

 銅貨13枚


 鋼の短刀

 鋼の鉈

 鋼の槍

 オーク革の鎧

 革と鉄の肘防具

 革と鉄の膝防具

 革と鉄のブーツ


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