1598
「前方から敵意と悪意を複数感知した。相手は既に道の上で待ち構えているらしいので、姿を隠す気も無いようだ。左右などに伏兵は無いが、どうする?」
「もし本当に相手が前方にしか居ないのであれば、我等が前に出れば良いだけなんだが……。どういった布陣にすればいいのか、判断に困るな」
「すまん、手遅れだ。前方の奴等はこっちが気付いた事に気付いたらしい。こっちに向かって来てるぞ! 迎撃準備!」
俺がそう言うのと視界に敵が見えたのは同時だった。目の前の道は微妙に曲がっているのだが、右側には林がある。その林の向こう側に隠れていたんだ。道を真っ直ぐ進んでいると、林から急に出てきた敵に強襲されるところだった。
ただ、襲撃者はこちらが気付いた事にどうやって気付いたのか。その辺りに疑問はあるが、一部の奴を捕まえれば判明するだろう。騎士達は前に出て行ったが、俺達は馬車を囲む形になって護衛する。数人は護衛を残せよ。
前で騎士達が戦っているのを見ながら馬車を守っていると、敵の何人かが強引に突破して馬車に向かってきた。俺は皆に殺さないように言っておいたので、適当に相手をしつつ隙を見て殴りつけている。誰かさんは実に楽しそうだな。
ディルが隙を見て、シュラが殴るのに合わせて【衝気】を使い気絶させたのだが、シュラとしては不完全燃焼らしく文句を言っている。戦闘が長引いても困るし、そいつは後で尋問しなきゃいけないからさ。遊ばれても困るんだよ。
護衛の騎士達の方も戦いは終わりかけており、大した被害は受けていないようだ。今回の連中は毒などを使ってはいないらしい。標的を殺すのに毒を使ったりするのは暗殺者として当たり前だと思うのだが、こいつらは違うのだろうか?。
騎士達の方の戦闘も終わり、俺達が気絶させた3人以外は全員始末されたようだ。俺達は捕まえた奴から聞き出そうとするも喋る気は無いようなので、さっさと白い枷を2つ嵌めて聞き出していく。
どうやら襲撃してきたのはコリュトー町の裏組織らしく、金で雇われたらしい。内容はインキュバスの子を始末する事だった。誰から請けたか下っ端には知らされていないらしく、3人に聞いても駄目だった。
ちなみに襲撃のリーダーは騎士達に殺されていたので、情報を聞く事は出来ない。馬車を出てきた初代が聞き出しているが、どうやら黒幕に繋がる情報も何も知らないようでガッカリしていた。
尋問も終わったようなので、最後に俺が何故毒を使わなかったのか聞くと、初代女王を殺す訳にはいかないので毒の使用は禁止されていたらしい。つまり襲撃者は子供を殺したかったのであって、初代を傷付けるつもりはなかったと。
その所為で襲撃しても手加減しなきゃならなかった訳か。そう考えれば馬車に対する直接攻撃が無いのも理解できる。もし派手に魔法攻撃でもしたら、中に居る初代もろとも殺してしまうからな。
黒幕は不老長寿を理解してるのか、それとも初代を傷付ける事に何がしかの忌避感を持っている? ……まあ、ここで考えても結論は出ないな。尋問した3人も殺し、死体は穴を掘って放り込み【粉砕】して埋める。
全て終わったら出発だ。一部の騎士が死体の処理を見て吐きそうになっていたが、もしかしてこの国でも死体の処理はしないのか? そう言うと、死体の処理は普通はしないそうだ。首を落として、胴体から遠ざけておくだけだった。
こっちの奴等は何故適当に死体を処理する奴等ばっかりなんだ。移動しながら騎士に聞くと、どうせ魔物に食い荒らされるし無駄に疲れるだけだと言い出した。ヴィラノーアもそうだったが、本当に汚い連中だ。
呆れながらも馬車についていき、コリュトー町に辿り着いた。貴族用の出入り口から俺達も入り、騎士達が大きな宿に先導していく。俺達は護衛なので宿代は払わなくていいようだ。実際、タッテン町でも払ってないし。
ここも食堂付きの宿だったので大銅貨13枚を支払い、昼食を注文して席に座る。とっくに昼を過ぎているが、護衛対象に合わせるしかないので仕方ない。それに、早めに町に着いておきたいという気持ちは分かる。子供が辛そうだからな。
幾ら初代女王の馬車だと言っても、古い時代の馬車でしかない。大きく揺れるし振動も凄いのが外から見ていても分かるので、正直に言って苦行としか思えない程だ。9歳の子供がよく我慢してるよ、褒めてやるべきだと思う。
食事をしながらそんな事を話していると、騎士達にジト目で見られた。いや子供を見てみろよ、相当疲弊してるだろうに。それに比べてウチの子供達を見ろ、ピンピンしてるだろう? その言葉には騎士達も納得していた。
「そういえば、その子供達は随分足も早いし、襲撃してきた者達を見ても怯えてなかったの。5歳にして凄い子供達だが、やはり不老長寿だからか? それとも、そなた達が無茶をさせておるのか?」
「無茶はさせてないさ。この子達は不老長寿だ、場合によっては身柄や命を狙われかねない。言葉は悪いが実力が必要なんだよ。不老長寿だという事を隠していられるなら良い。でも不老長寿のアタシ達と居る以上は必ずバレる」
「己の身に危険が迫った時、最後に頼れるのは己の力だけです。何より、他人の力は当てにはなりません。人間種というのは簡単に裏切るのですから、他人の力を当てにするなど論外ですよ」
「まあ、厳しいけれど、言っている事は事実なのよね。私達はアルドを中心にしているから問題無いけれど、普通の関係なら他人を当てにするのは止めた方がいいわ。特に命の懸かっている事であれば尚更」
「言いたい事はよう分かる。私も永きに渡って家臣に裏切られたりなど、思い出したくもない事が様々あったからな。正直に申せば、許されるなら国を出たい程よ。良い事もあったが、悪い事が多すぎる」
この事に関しては誰も何も言えないし、俺達は聞くしか出来ない。初代としては口に出来なかった本音を喋っている気もするし、余計に大人しく聞くしかないな。せめて部屋に行ってから喋れと思うが、溢れ出してきて止まらないんだろう。
ウチの女性陣も理解できるのか、ウンウン頷いたりしているし。君ら本当に部屋に行ってからしてくれない? 流石に口に出して言ったら我に返ったらしく、咳払いをして会話を止めた。
遅い昼食後、騎士が2階の部屋を貸し切りにしたので、それぞれの部屋を決めて入っていく。俺は皆に初代の部屋に行くように言い、俺は食料店で買出しをしてくると伝えた。とにかく適当に食べられる物を買ってこよう。
後を女性陣に任せ、俺は宿を出て外を歩く。道行く人に声を掛けて食料店の場所を聞き、中に入って色々確認していく。主食系が欲しい訳じゃなく、手軽に食べられる物はないだろうか。色々売っているんだが、手軽な物はやっぱり限られるな。
ここエイルアーダでも珍しい果物とかは見当たらないので、もっと気候の違う所に行かないと植生が大きく変わる事はないんだろうな。仕方がない、諦めて帰るか。俺が持ってない物となると、後は干し肉ぐらいしかない。
しかし塩だらけの干し肉を買う気にはならないので、他に何かない物か……。結局、青豆を2袋。大銅貨2枚分だけ買って帰る事にした。店員が物凄く睨んでたが、それぐらいしか買う物がなかったんだから勘弁してほしい。
宿に戻り、2階へと上がって行く。誰からも止められる事がなかったが、俺の顔を覚えていたのだろうか? 初代や子供に護衛の騎士ならともかく、ただの狩人の俺達の顔まで覚えたとしたら、流石プロとしか言えないな。
そんな事を考えながら与えられている部屋に入ると、何やら奥の部屋から楽しそうな声が聞こえてくる。初代と子供の部屋から聞こえてきているのか……。何をしているのか知らないが、楽しそうにしているのは良い事だ。
送風機と冷房を設置し、起動してから部屋の熱気を外に出す。【冷風】を使って外に出したら、窓を閉めて緑茶を水出しする。ゆっくりと飲んでいると、何故かフヨウが部屋に来た。
相変わらず小さな隙間から入ってくるね、君は。
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大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
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海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




