1595
朝食後、町の入口までのんびり歩く。門番に登録証を見せて外に出たら、南南西のセオジ村を目指して出発する。実は北西にも村や町はあるのだが、そっちは山や森などで行き止まりらしい。なので皇都に行くにはこっちに進む必要がある。
町から十分に離れたら走り出し、途中で馬車などを追い抜かす。馬や鹿が驚くかもしれないので、出来るだけ離れて追い越していく。驚いて暴れても責任とれないので、なるべく余計な事にならないように進んでいこう。
いつもと同じではあるものの、気を抜いていると余計な揉め事に巻き込まれたりするので、ここは気を引き締めたい。何より不老長寿の女性という不穏なワードを聞いてしまったからな。嫌な予感がする。
俺としては断りたいところだが、何がどうなるかは分からないからな。何と言っても、神様が介入してくると全くと言っていいほどに読めなくなる。正直に言って、それが1番怖い。
【念話】で色々話しながら皆と走って移動していく。先ほどコエト村を越えたので、次はヴェギンの町だ。ここで止まるか、それとも先へ進むか。1つ1つ止まって聖人化も、面倒臭いと言えば面倒臭いんだよなー。
……色々皆と話し合ったが、結局先へと進む事になった。まだ昼には早いのでヴェギンの町を通過して進みドン村へ。更に進んで行きモレ村を越え、ある程度の距離を進んだ場所で道の真ん中に馬車が止まっていた。
近くに倒れた護衛が見えるので、嫌な予感しかしない。襲われている馬車を救助するっていう異世界テンプレが、今になってやってくるとか冗談だろ……? 勘弁してほしいんだが、目の前で殺されているのを見るのも寝覚めが悪いしなぁ。
そう思っていたら、馬車を襲っている覆面の賊の一部がこちらに矢を射ってきた。面倒なので【念動】を使い、全て俺達の前で落ちるように操作して地面に落とす。すると何を思ったのか、更に矢を射ってきた。こいつら馬鹿か?。
普通はターゲットを先に殺すもんだろ? まだ馬車の護衛と戦っているのに、別の奴を敵に回してどうするよ。目撃者を処分したいのか、最初から敵だと思って攻撃してきているのかは知らないが、随分と迷惑な連中だ。
地面に矢を落としていると無くなったのか、二手に分かれてこちらに向かってきた。全部で13人居たのだが、こちらに7人向かってきている。さて、どうやって倒そうかと考えていると、子供達が前に出て角笛を吹いた。
あーあー、マジかー。<爆音の角笛>の1撃で7人があっと言う間に気絶したぞ。2人で吹いたから2撃か? どっちでもいいが、実にあっさり終わったなぁ。向こうで戦っている6人が慌てて逃げ出そうとするが、俺が【念動】で宙吊りにする。
こちらに近づけてきて、子供達に<爆音の角笛>を迷惑にならない方向に吹かせる。残りの6人も気絶させたので終了。賊の覆面を取り、持っている物を全て剥ぎ取って横に置く。個人が分かる様な物は無しか。
向こうの護衛をしている騎士は此方を相当警戒しているようだが、俺達は通りたいだけなので大声で伝えた。気絶させた奴等も好きにしてくれと言っておいたので、後は勝手にするだろう。
俺達は足早に馬車の横を通り過ぎようとしたのだが、やはり見逃してはくれないようで声を掛けられる。内心で盛大な溜息を吐きつつも、一応答えておこう。揉め事は皇都のダンジョンを攻略した後にしてもらいたい。
「すまぬが、少し待ってほしい。私の名はエイルアーダ・ユル・ディカストル。そなた達には申し訳無いが、身形から狩人だと思うので依頼を請けてはくれぬか? 内容は私とこの子の護衛だ」
そう言って馬車から出てきた女性は、小さな男の子を連れていた。名前的にこの女性が初代女王の可能性が高いが、それはつまり不老長寿という事だ。40代前半ぐらいの見た目だが、女王をしていた割には覇気が無いな。
ただ、見た目がアルエルそっくりだぞ。羊のような巻き角にピンク色の眼、完全に原初のサキュバスの特徴が出ている。こっちの方にも驚くが、小さな男の子の方も巻き角でピンクの眼をしている。これ、インキュバスか?。
「ふむ。そなた達は私やこの子が何か分かったのか。私は愛の神から加護を賜ったが、この子は先祖返りでな。私の血が強く出てしまった様なのだ。それで狙われている」
「この子は男だからインキュバスか。……もしかして子供だから誘惑の力を制御出来ない? ああ、成る程ね。危険視した連中が下らない事をしたって訳か」
「その通りだ。我が国にはサキュバスやインキュバスなどの種族は、私の血筋にしかもうおらぬ。ここでは私が始祖のようになってしまっているのでな。その所為で誘惑の力が制御出来るものだと知られておらぬ」
「成る程。言いたい事は分からなくもありませんが、それでも建国した者も含めて殺そうとしますかね? 不老長寿に手を出すという事は、すなわち神々に喧嘩を売るのと同じ事ですよ?」
「……おぬしら、我が国の者ではないな? 我が国でそれを知るのは私だけの筈だぞ。いったい何者だ」
「何者と言われてもね。君が初代の女王だというのなら、君と同じ不老長寿だよ。私達は全員が不老長寿だから、私達に喧嘩を売ると神の代理戦争になる。迂闊な事は慎むべきさ」
「………冗談であろう?」
その後、女王と女性陣が話しているので俺は離れた。護衛の騎士達が周りを囲んで賊から聞きだそうとしているので、俺は近付き白い枷を2つ嵌める。騎士達に白い枷の説明をすると、よく分からないという表情を浮かべたまま尋問を始めた。
賊が躊躇もせずにペラペラ喋る様子にドン引きしているが、俺の知った事ではない。どうやら裏組織の連中のうえに実行部隊の為、誰から依頼されたかは知らなかった。これに関してはそんなものだろうと思う。
護衛の騎士もそこまで期待はしていなかったのか、諦めているらしい。それでも組織の名前と構成、そして本拠地の場所が分かっただけ良かったと思っているようだ。白い枷は2つ目までしか説明していないので、賊は殺して埋めていく。
馬車を引く馬は大型で相当の筋肉量をしている馬だ。初めて見たが、ゾライトンという品種らしい。よく食うが、それだけパワーもスタミナもある優秀な馬だそうだ。温厚な馬ではあるが、キレると暴れ回る馬でもある……と。気をつけよう。
馬車に乗ったのを確認したら進んで行く。女性陣に聞くと、護衛の依頼は了承したようだ。理由は、あの子供の持つ誘惑の力は俺達には効かないという事。それと、あの若さで命を狙われるのは流石に許せないらしい。まあ、そうだよな。
どうもサキュバスやインキュバスの事を知らず、勝手な決めつけで殺そうとしている貴族家が複数あるみたいだ。ちなみに降嫁した娘の末裔がこの男の子のようで、それで初代女王が出張って助けたという話だった。
初代女王の年齢は350歳ほどで、ダナよりも若くて驚く。初めて会った時のダナよりも遥かに老けてるぞ、もちろん口にはしないが。口調は女王をしていたのでああなってしまったらしく、元々は町娘でしかなかったそうだ。
腐っていた前の国を倒す際に旗頭になってしまい、気付いたら初代女王になっており、その後は政治を叩き込まれて女王としての激務を果たした。よくもまあ、途中で挫けなかったもんだよ。俺なら王にさせられる前に逃げるね。
そう言うと皆が頷いているので、気持ちは同じらしい。誰しもそうだが、面倒事は嫌だよなぁ。そんな雑談をしながら進むものの、護衛の騎士は馬か馬車に乗っており、走っているのは俺達だけだ。
俺達が外で徒歩だと遅くて困ると思ったのか随分と悩んでいたが、今は悩むのではなく呆れた表情で騎士が見てくる。大型の馬で速い馬車に平然とついていく俺達。それを見て、流石に俺達が不老長寿だと理解したようだ。
理解の仕方が納得いかないが、疑われ続けるよりはマシか。そう思って心を切り替えていると、タッテン町が見えてきた。既に昼を過ぎているので、町に入ったら食堂を探そう。宿は後にしても大丈夫だし、子供達がお腹を空かせてる。
町の前の列に並ぶも、馬車は貴族用の入り口から入っていった。俺達は待たなきゃいけないが、そこまで列も長くない。凍らせて保存していたビレンとアルダがあるので、子供達に渡しておこう。
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1595終了時点
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大銅貨1746枚
銅貨50枚
神鉄の刀
神鉄の槍
神金のヴァジュラ
精霊木の浄化棍棒
精霊木石の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神金銀の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




