0158
近くに寄って来ていたギルドの職員が、どうするんだ? と顔を窺ってくる。先程のモヒカンの話を近くで聞いていたから、問う気持ちは分かるんだが……。俺は一介の傭兵なんだぞ?。
まぁ、仕方がない。俺がギルドに連れて行く事を伝えて、近くの蔓を切って手足を縛り引き摺って行く事にした。ギルド職員の顔が引き攣っていた気がするが、きっと気の所為だ。
ズルズルと引き摺りながら歩いていると、呻き声が聞こえてきて若干鬱陶しい。周りには傭兵がチラホラと居るが、誰も関わろうとはしない。そのまま村の入り口まで戻ってきた。
「前にもこんな事があった気がするけど、どうしたんだい?」
「こいつは侯爵から送られてきた奴らしい。さっき俺を殺そうと襲い掛かってきたから、返り討ちにしたんだよ」
「お隣の侯爵領からかい?」
「ああ。何でもコイツ等より強い傭兵を引き抜いて来いって、命令されていたらしい。俺を襲って来てこのザマだが、一応侯爵領じゃ1番強かったんだそうだ」
「へぇー。傭兵が貴族のいいなりか。そのうえ引き抜くって、完全に村への攻撃じゃないか」
「そうだろうな。元々帝国と繋がっているらしく、王に睨まれているらしいからな。ケツに火が着いているのか、ただのバカか」
「ただのバカな気がするけどね」
「とりあえず。俺はコイツをギルドに連れて行くよ」
「了解だ」
門番と話していたのは、周りに人が集まってきていたからだ。周りの人達にも分かるように、大きな声で会話をしていた。まぁ、その所為で途中から蹴られていたが、同情なんぞ誰もしない。
ズルズルと引き摺りギルド内に入る。ミュウさんに話を通しヴェルを呼んでもらい、ヴェルに事情を説明して丸投げした。と言っても、ヴェルも牢に入れて拷問するくらいだが。
俺はギルドを後にして宿へと戻る。すると、怒っている女性と怒られているメルが居た。他の3人は苦笑しているだけだ。一体何が起こっているんだろうか。
「メルさん! 一体何を考えておられるのですか!? 朝から爛れた生活を送るなど……」
「ただいまー。ところで、この状況はいったい?」
「あの子はヴィラっていって、今は村長をしてるんだよ」
「ん? という事はメルの玄孫か?」
「そうさ。あの子はメルと違って真面目でね。お堅い考え方なんだよ」
「あー、居るなそういう人。真面目なのは悪い事じゃないんだが、息が詰まる程やり過ぎるのも稀に居るんだよな」
「ヴィラはそこまでじゃないんだけど、流石に朝からだったから怒っててね」
「別に良いと思いますけどね? 朝からなんて、なかなか無いんですから」
「そうだね。今日は朝から幸せに浸ってたんだけども……」
「何かあったのか?」
「お客さんが居ない間、どういう風に愛してもらったのかを話してたのさ。……大きな声で」
「あー、大きな声でな。それで村長さんは怒ってるのか……」
「流石にちょっと悪ノリし過ぎたかね?」
「あの村長さんは、そもそも何をしに来たんだ?」
「アルドに農具を依頼しに来たそうですよ」
その後、浄水を飲みながら待っていると説教は終わったらしい。終始メルがニコニコしていて聞いていなかった気がするが、あれで良いんだろうか? 村長さんがこっちに来た。
「申し訳ありません、お待たせしました」
「いや、それはいいんだが……あれは、良いのか?」
「構いません。昔からああなんです。私の話を聞いているのか聞いていないのか分からず、ニコニコしているだけで……はぁ」
「あー……。とりあえず話を始めてもらっていいか?」
「はい。アルドさんには農具を作って頂きたいのです。ですが、アルドさんが色々な農具を作っていたので、どんな農具があるのかが分からず……」
農具の種類が分からないって事か。んー……色々あるからなぁ。普通の鋤や鍬、備中鍬にスコップや鎌に大鎌、一つ一つ説明していく。村長さんは悩みながらも決めた様だ。
「元々決まっていた鍬を40本、鎌を50本、スコップを30本。それに加えて備中鍬というのを30本作って下さい。報酬は金貨1枚でお願いします」
「まぁ……了解だ。思っていた以上に多いが、材料を取りに行けば作れるだろう」
「確かに多いね……何でこんなに多いんだい? ヴィラのトコで一括管理するのかい?」
「はい。あちらこちらから要望があったので、村長からの貸し出しという形になりました」
「そんなに、あっちこっちから要望があったんですか? 言葉は悪いですけど、ただの農具ですよね?」
「ご存知無いかもしれませんが、農具と言っても、傭兵の持つ武器のように鉄が沢山使われている訳ではないんです」
もしかして古い時代の日本みたいに、刃先だけが鉄の農具なのか? 昔から農民ってお金無いし、石と木の農具でも優秀なら欲しがって当然か。錆びないし、耐久性高いし。
「刃先だけ鉄の農具とか使ってるのか? 前に見たのは、ちゃんと刃全体が鉄で出来ていたけどな」
「持っている家もありますが、滅多にありません。どこの町や都市に行っても、刃先だけ鉄の農具が当たり前なんです」
「成る程なー。そりゃ、俺の作った農具が人気の筈だ。刃先だけのやつって、物凄く効率悪いんだよ。壊れそうだから力を込められないし、木の部分が割れたり折れたりするし」
「よくご存知ですね? 仰る通り刃先だけが鉄の物だと壊れやすく、使い勝手が悪いんです。アルドさんの農具だと掛かる時間も少なくて楽ですから、皆が欲しがったんですよ」
「まぁ、そうだろうな。依頼は請けるが、いつまでに作れば良いんだ? それと、作ったらどこに持って行けば良い?」
「期限は10日以内で、村長の家に持って来て下さい」
「了解だ」
早速、部屋に戻って農具作りを始める。まずは鍬からだ。柄の長さは130センチ、刃は長方形で湾曲した物。それを一体成型で作り、刃の部分全体に石を被覆する。
圧縮してあるので、相当硬い石と木だ。極めて強い耐久性を持つ為、これで十分過ぎる程の農具となる。鍬を半数ほど作った段階で昼食の時間となった。
食堂に下りて大銅貨7枚を支払い昼食をとる。皆は食堂で酒を飲みながら会話を楽しんでいたらしい。今日は休みなので、ゆっくりするのが1番だろう。俺は朝から大変だったが。
昼食後、部屋に戻って農具作りを再開する。……鍬作りが終わったので、一旦浄水を飲んで休憩だ。部屋に戻ってきていたダナがキスを求めてきたので、応えたらディープな奴だった。
たっぷりキスすると、ダナは嬉しそうに酒を持って食堂へと戻って行く。それを見送って農具作りを再び始める。
次は鎌だ。柄の長さは40センチで、刃の長さは15センチにする。鎌作りは楽で助かるな。短い物、素材の消費が少ない物は一体成型だと作りやすい。当然ながら大きい方が作り難い。
【変形】で作るのだが、大きい物や長い物の細部までキッチリ作るのはなかなか大変だ。余程細かい物でもない限り、短く小さい物の方が簡単なのは当たり前だろう。
鎌作りが終わったので次はスコップだ。柄は1メートルで刃の長さは20センチ。刃の幅は一番広い所で12センチとなる。これもせっせと作っていく。気付けば夕方になっていた。
丁度スコップ作りも終わったので、食堂に下りて大銅貨7枚を支払い夕食にする。皆は食堂でダラダラ飲み続けていたらしい。休日の過ごし方としては、どうなんだろうな?。
2匹は飲まずに、4人や他の客から食べ物を貰っていたそうだ。その割には夕食をガツガツ食べている。悪い事じゃないんだが……まぁ、魔物だから太ったりはしないか。
夕食後、部屋に戻って農具作りの続きをする。2匹と4人も部屋に戻って来た。この時間からは宿の邪魔になってしまうし、話す事も少なくなって暇なんだろう。
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0158終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨62枚
大銀貨81枚
銀貨50枚
大銅貨23枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
ヒヒイロカネの小太刀
真っ黒な金砕棒
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ