1582
俺達は帰り道を歩いている。既に貴族街を抜け平民街まで戻ってきているのだが、皆は微妙な表情のままだ。何故その表情なのか、何に引っ掛かっているのか聞くと、どうも勝手をしていた公爵の事らしい。
「そこまで悪い王には見えなかったんだよ。アタシの【神眼】でも悪い奴じゃないと見えたしね。ただ、そういう奴でも身内と言うか、弟はなかなか疑わないんだなぁ……と思ったのさ。疑ってりゃ直ぐに分かった筈」
「ですね。私もあの王は愚鈍には見えませんでした。いえ、ある意味では愚鈍なのでしょう、弟に娘を殺されかけている訳ですから。ただ……あそこまで苦しむ前に、助ける事は出来た筈なんですよ」
「こうしていたら、もしくは、こうしていれば。そんな話をしても意味は無いけれど、私達が居なければ第2王女は死んでいたかもしれないのよ。それを考えると、どうしても思うところは出てくるわよね」
「とはいえ、仕方のない事でもあるさ。娘が苦しんでいる時に冷静に考えるのは難しいし、相手が王の弟じゃ簡単には手を出せない。下の者は疑問を呈する事すら難しいだろう。それだけで首を刎ねられかねない」
「だからこそアルドが白い枷を使うまで明るみに出なかったと……。まあ、白い枷の凄さとアルドの容赦の無さの前には、王とか公爵とかは関係無いからな。今回の結果も、当たり前の結果としか言えない」
「本当に容赦無いもんね。恐らくアルドは予想していた筈だよ? なのに関係無く薬を与えるし、下から垂れ流しているのを冷静に喋るし。あれって本人が寝ていたから良いけど、起きてたら心に一生ものの傷を負ってるよ」
「意識が無かったのか、寝ていたのかは分かりませんが、確かに下から垂れ流すって悪夢ですね。ムル国の王もそうですが、恥ずかしいというレベルを超えています。治療としては仕方がないのでしょうが……」
「あたしなら、いっそ殺してくれって言いたくなるだろうね。本人がどういう人物か知らないけど、起きていなくて良かったよ。命があるだけマシではあるけど、心に傷を負って生きるのは大変だからね」
「皆の言いたい事はよく分かるんだが、体の防衛反応として毒を排出しようとするのは当たり前の事だからなあ。ケツ以外の何処から出すんだ? と言われて答えられるか?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「だろう? 毒を飲んで直ぐなら吐き出すという事も考えられるが、毒を飲まされて2季節だぞ? 少なくとも体の中に有るというか吸収されているか、体の中を巡り続けているだろう。それを排出するにはケツから出すしかない」
「まあ、言いたい事はよく分かるよ。毒を外に出さない事には治らないんだろうし、毒が体の中にあるんじゃ出すしかない。とはいえ……ねえ。大勢の前でアレと一緒に出したって知ったら。アタシなら耐えられそうもないよ」
「皆の前で何度も噴いているダナがですか? それは無いと思いますけど……痛っ! 叩かなくてもいいでしょう! 余計な事って、唯の事実でしょうが!」
「この愚妹はどうして余計な事を言うんだろうね? 自分だってあまりに融かされ過ぎて、何度か緩みきって出した癖に。大して変わらないって思わないものかい? まったく」
何だか久しぶりではあるものの、何故かそっち方面の話になったな? いや、本当に久しぶりな気がする。別に聞きたいわけじゃないし、部屋でもそういう話はしているんだけど、ここまでアクロバティックなのは久々だ。
まだ夕方には早いので宿の部屋に戻り、送風機と冷房を設置して起動する。【冷風】で部屋の中の空気を外に出していると、子供達も遊んでやり始めた。魔法の練習になるからいいが、魔力をしっかり扱うようにな。適当は駄目だぞ。
ちょっとした指導をしながらも遊びの範疇でさせる。子供はこういう形で上達させるのが1番だろう。遊びの延長線上なら覚えるのも早そうだし、楽しく学べるなら嫌な感情も抱かない筈だ。
ダリアもフヨウも適当に寝転がって過ごしているが、2匹もそこまで暑がってはいない。今日はこんな時間だから、明日も休みにして情報収集をするか。この国にダンジョンが残っていても後1つぐらいだろうしな。
そろそろ別の国の情報も得ておかないといけない。南と西だったかな? とりあえず他国の情報もある程度は手に入れておかないと、ダンジョンの無い国には行く気もないし、行っても仕方がない。それともガイアルムに一旦戻るか?。
………それもなぁ。ここまで来ておいて戻るのか? って感じはする。せっかくこっちの大陸まで来たのに中途半端な状態で戻るのも面倒だし、出来る限りこっちを綺麗にしてから戻りたい。
そもそも邪気の浄化は必ずしなきゃならないし、その為にダンジョンを攻略するんだけどさ……神官どもを聖人にする為に、ダンジョンの無い国にも行った方が良いだろうか? でもなぁ、惑星規模だとそこまで邪気を減らせないんだよなー。
そういった話をしてるんだが、皆も明確な答えは出せないようだ。まあ、そんなものが在るなら神様連中が既に命じている筈だ。無いからこそ地道にやれと言われてるんだし、少しずつ浄化していっている訳だ。
夕日も出てきたみたいだし、そろそろ食堂に行くか。そう言って送風機と冷房を仕舞ったら、忘れ物が無いか確認して部屋を出る。食堂に入り、大銅貨13枚を支払ったら夕食を注文して席に座る。
適当に雑談をしながら周りの声に耳を傾け、大した情報も無いので聞き流していると食事が運ばれてきた。夕食後、宿に戻るのだが、尾行してくる連中が居る。もちろん全員分かっているが、知らないフリをしながら帰る。
宿の部屋に戻り、送風機と冷房を設置して起動。部屋の中の空気を【冷風】で強力に冷やしながら、【探知】と【空間把握】で尾行していた連中を逆に監視する。案の定、宿の外で此方を見張っている。
ただし俺達の泊まっている部屋まで分からないのか、適当に宿の入り口を監視しているようだ。スラムだから監視しやすいとも言えるが、逆にスラムの連中に襲われかねないんだが大丈夫かね、こいつら。
何処の手の者か知らないが、第2王女を治した段階で必ずこういう連中が出てくるだろう事は予想出来ていた。むしろ当たり前だとすら思っている。それだけ欲に塗れた連中が多いのがこの国だ。
王はまともだったが、貴族がまともとは限らない。自分が得するなら、誰が苦しもうが知った事じゃない。そういう連中が多い事は、今までの旅路で散々理解した。なので俺も遠慮無く聖人に変えていける。
連中を監視しながら子供達と遊び、眠たくなったら布団に寝かせて【昏睡】を使う。女性陣の相手をしながらも監視は続け、全員を満足させたら部屋と体を綺麗に【浄化】する。神水を飲みながら監視を続けるが、踏み込んでは来ないな。
さてどうするかと考えていると、相手に増員が来て3人増えた。その3人を残し、最初から居た6人は宿に侵入してくる。俺達の泊まっている部屋までは分からないようで、手分けして探している感じだ。
1人宿の玄関に待機しているし、残りの5人が部屋のドアを開けようとしている。客がいない部屋は施錠されていないので分かりやすいのだろう、空いた部屋をチラ見して直ぐに閉じている。
プロっぽい犯行と思わなくもないが、尾行といい今のガタガタといい素人臭も酷いな。もう少し音を立てないように出来ないもんかね? 幾らなんでも音を立てすぎだし、俺達以外にも泊まっている奴等は居るんだぞ。
呆れてものの言いたくなくなる程だが、この程度の連中でよかったとも思おう。俺が知覚できない程の凄腕が居るかもしれない。いつでもそうだが慢心が1番マズいからな。警戒し過ぎて悪い事もないだろう。
俺達の部屋の前に集まってきたな、やっと一塊になったか。バラバラに動かれると逃げられる可能性があったので良かった。まあ、俺達の部屋は1番奥なんで、塊になってくれるとは思っていたけど。
それじゃあ、始めますかね。
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1582終了時点
大白金貨101枚
白金貨498枚
大金貨1704枚
金貨2676枚
大銀貨1649枚
銀貨2425枚
大銅貨1072枚
銅貨50枚
神鉄の刀
神鉄の槍
神金のヴァジュラ
精霊木の浄化棍棒
精霊木石の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神金銀の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




